立退料を支払わないで明渡しができるのはどのような場合か

 中野区で不動産無料相談対応の吉口総合法律事務所では,建物のオーナー様(賃貸人側)側からいただくご相談の中で,「建物の立退きを行いたいが立退料を支払いたくない。立退料は必ず支払わなければいけないか。」という不動産に関するご質問をいただきます。

 立退きを求める場合は基本的には立退料を支払わなければならないことが多いです。

 しかし,同じ建物の明渡を求める場合であっても,立退料を支払わなければならないケースと支払わなくてよいケースもあります。

 また,そのままでは立退料を支払う必要性が高い場合であっても,事前の対策によって立退料を支払わずに立退きが可能になる場合もあります。

 中野区で不動産無料相談対応の吉口総合法律事務所の本コラムでは,立退きを求めるにあたって立退料を支払わなければいけないケースを解説した上で,立退料を支払いたくないオーナー様側が立退料を支払わずに明渡を求めるための方法について解説をしていきます。

▼立退料の計算方法等についてはこちらのコラムの下部をご参照ください。

立退料を支払わないといけない場合はどのような場合か

 まず,前提として,立退きを求めるにあたり立退料を支払わなければいけないケースとしてはどのような場合があるでしょうか。

 立退料を支払わなければいけない主たるケースとしては,

 ①賃貸借契約の契約期間満了後の更新拒絶

 ②賃貸借契約の中途解約及び期間の定めのない賃貸借契約の解約

 があげられます。

 上記の場合において,例えば,建物利用の必要性等が賃貸人と賃借人の双方ともに認められる場合には,立退料が問題になってきます。

 逆を言えば,①及び②の場合であっても,例えば,賃借人側が建物を全く利用していない場合等,賃借人側に建物利用の必要性が全くない場合等には,立退料を支払うことなく立退きが認められる場合もあります。

 他方で,①,②とは別に,

 ③賃料滞納による解除

 ④用法遵守義務違反に基づく解除

 等の債務不履行解除の場合は,賃貸借契約を解除することによって明渡を求めることが可能であるため,立退料の支払の必要はありません。

 ご相談者の中には,賃料滞納が生じている場合等にも立退料の支払をしなければいけないと誤解している方もいらっしゃいますので,この点に注意が必要です。

 したがって,基本的に,①賃貸借契約の契約期間満了後の更新拒絶②中途解約または期間の定めのない賃貸借契約の解約の場合に立退料の支払が必要になることをまずおさえましょう。

定期建物賃貸借に切り替えることができれば更新拒絶の際に立退料を支払う必要はない

 賃借人との賃貸借契約が定期建物賃貸借契約であれば,賃貸借契約の更新拒絶をしたとしても立退料の支払の必要はありません。

 定期建物賃貸借契約とは,賃貸借契約のうち契約の更新が無い条項を定めることができる契約になります。

 現在締結している契約が普通賃貸借契約であっても,普通賃貸借契約を合意解約した上で定期建物賃貸借契約を新たに締結すれば,定期建物賃貸借契約に切り替えることができます。

 もっとも,定期建物賃貸借契約は,更新が無い点で借家人の利益を害することになるため,同契約が成立するためには,通常の賃貸借契約よりも厳しい要件が課せられています。

定期建物賃貸借の要件

 定期建物賃貸借契約が成立するためには,

 ①賃貸借期間の定め

 ②更新否定条項の存在

 ③書面による契約

 ④事前説明及び説明書面の交付

 が必要になります。

 これらの要件を充たさない賃貸借契約の場合は,定期建物賃貸借契約であることが否定され,通常の建物賃貸借になります。

 したがって,同契約を締結するにあたっては要件を意識することが必要になります。

 しばしば定期建物賃貸借契約という題名になっているものの定期建物賃貸借契約の要件を充たしていない契約書もありますので,締結しようとしている契約が定期建物賃貸借契約の要件を充たしているかご注意ください。

定期建物賃貸借契約の注意点

 定期建物賃貸借契約の注意点の一つとしては,繰り返しになりますが,定期建物賃貸借契約の締結にあたり,要件を充たしているかどうかを確認することが必要ということです。

 例えば,要件②の更新否定条項について,契約条項の定め方はどのようにしなければいけないか,④の事前説明について,事前説明の程度はどの程度か,また,交付すべき説明書面と契約書は別にしなければならない等,各要件がどのような意味を持つかを意識しながら要件検討をする必要があります。

 また,もう一つの注意点としては,普通建物賃貸借契約から定期建物賃貸借契約への切り替えにあたっては,賃借人にとって不利益な内容になることから,賃借人の真の同意を得ることが必要ということです。

 具体的には,賃借人から切り替えの同意を得るにあたっては,強制を伴わないことは当然として,賃借人に対して更新が無い点で不利益になること等を承知させることが必要になります。

賃料増額請求を行って賃借人が賃借し続けるメリットを無くす

 定期建物賃貸借契約への切り替えよりも間接的な方法になりますが,賃借人の立退きを促す方法としては,賃借人に対し賃料増額請求をすることが考えられます。

 賃借人が現在の不動産を使い続けたい理由が,現在の不動産の賃料が低額であることもありますので,この点に対応することが立退きをする上での一つの事前対策になります。

 賃料増額請求とは,直近合意から事情の変更があった場合において,賃貸人の一方的な意思表示によって賃料の増額を求める請求になります。

 賃料増額請求が認められた場合は,賃借人の承諾がなくとも賃料の増額が可能になるとともに,賃借人は,賃料増額請求後賃借人が支払った相当賃料額との差額及び差額に対する10%の利息を支払う必要があります。

 この方法により立退きの準備を行う事も検討してよいと思います。

終わりに

 以上,立退料を支払わずに明渡ができるのはどのような場合かについて解説を行いました。

 立退きを含む不動産問題は,法律知識が必要になるため,弁護士にご相談されることが不動産投資や不動産管理等をする上で極めて重要だといえます。

 東京都中野区の吉口総合法律事務所では,不動産オーナー様側からの立退き交渉等の不動産問題について重点的に扱っております。

 また,不動産オーナー様側や管理会社向けの顧問契約(月額2万円~)についても常時承っております。

 立退き交渉を含む不動産問題についてお悩みの方は中野区で無料相談対応の吉口総合法律事務所までお気軽にお問い合わせください。

 

 

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