海外・外国に相続人や亡くなった親や兄弟が居住している場合の遺産分割

 海外・外国に亡くなった親や兄弟(被相続人)が居住していたケースの相続のご相談や,海外・外国に相続人の一部が居住している相続のご相談も,昨今の国際化の影響により珍しくありません。

 海外・外国相続人の一人が居住している場合,日本に帰国した上で相続手続を行えれば良いですが,昨今の新型コロナウイルスの関係で,日本への入国が簡単ではないケースもあるようです。

 また,仮に日本に帰国できたとしても,帰国するための費用が発生することや,相続手続を完了できるだけの時間的余裕がないこともあり,海外・外国居住の相続人の方が手続を完了させることが簡単ではないことも多いです。

 もっとも,このような相続人または亡くなった親や兄弟が海外・外国に居住している場合の相続であっても,通常の遺産分割とは異なった点があることを意識する必要はあるものの,遺産分割そのものをあきらめる必要まではありません。

 本コラムでは,海外・外国に相続人または亡くなった親や兄弟が居住している場合における遺産分割方法について解説を行います。

海外・外国に相続人または亡くなった親や兄弟のいずれかが居住している場合であっても日本法が適用される

 海外・外国に居住している関係者が存する場合や外国人が含まれる等,日本以外の国がかかわる場合,どの国の法律が適用されるか問題となります。

 もっとも,適用すべき法律に関し規定をしている「法の適用に関する通則法」36条では,海外や外国にかかわる相続については以下のとおり規定しております。

第36条 相続は、被相続人の本国法による。

 つまり,亡くなった親や兄弟が日本人である場合は,海外・外国に亡くなった親や兄弟または相続人が居住している場合であっても,日本法が適用されることになります。

海外・外国に亡くなった親や兄弟が居住していた場合は外国に遺産があるか否かで対応が異なる

亡くなった親や兄弟の遺産が国内のみに存在する場合は通常と同様に分割を行う。

 前述のとおり,海外・外国亡くなった親や兄弟が居住していた場合であっても,日本の相続法が適用されます。

 したがって,海外や外国に亡くなった親や兄弟が居住していたとしても,亡くなった親や兄弟の遺産が国内のみにある場合は,通常の遺産分割と同様に行えばよいことになります。

海外・外国に遺産が存在する場合は海外の専門家を利用することを検討する

 海外・外国亡くなった親や兄弟の遺産が存在する場合は,海外・外国の遺産を取得または現金化するために特段の配慮が必要になります。

 海外・外国の資産の取得や現金化の方法についても本来であれば日本法が適用されますが,外国の金融機関等の担当者は必ずしも日本法が適用されることを理解しているわけではありません。

 このような前提があることや,言語の問題があるため,現地の法律に詳しい専門家(日本法の理解及び日本語による意思疎通ができることが望ましいです。)と協力することにより,遺産の調査やその現金化を行うことになります。

 もっとも,遺産が存在する国の運用によっては,日本とは異なり相続財産の現金化自体が容易ではないこともあるため,遺産の現金化等のための費用が発生する場合もあります。

 その場合は,存在する遺産の価格等を踏まえて現金化等を行うか検討することになります。

海外・外国に相続人が居住している場合は日本の弁護士を依頼して相続手続を進める

海外・外国に相続人である自分自身が居住している場合は日本の弁護士に依頼を行う

 海外・外国に相続人が居住している場合は,日本の弁護士に依頼を行い,相続手続を依頼することによって日本の相続問題を解決することができます。

 例えば,海外・外国にご依頼者が居住している場合であっても,メールやZOOM等を利用し日本国内の弁護士に依頼することは可能です弊所でも海外・外国居住の相続人の方からのご依頼やご相談をいただいております。)

 海外・外国相続人が居住している場合,通常の相続手続との違いはあまりありませんが,不動産登記や預貯金の解約,残高証明書等の取得のための必要書類である印鑑証明書や,住民票が取得できないこともあります。

 そのような場合は,海外・外国の公証役場や在外公館を利用して,住民票の代わりに在留証明書を,印鑑証明書の代わりにサイン証明書を取得するなどして対処することになります。

海外・外国に居住している相続人が相手方である場合も弁護士の依頼を検討する。

 海外・外国に居住している相続人が相手方である場合であっても,住所地や連絡先が分かっている場合は,当該相続人に連絡を行い,日本の弁護士に依頼をしてもらうまたは本人に協力をしてもらうことが一番シンプルです。

 他方で,海外・外国に居住している相続人の住所地や連絡先が分からない場合は,遺産分割協議がまとまらないことになります。

 このように海外・外国に居住しるが行方がわからない相続人が相手の場合は,遺産分割調停と共に不在者財産管理人の選任申立てを行うことを検討します。

終わりに

 以上,海外・外国に相続人または被相続人が居住している場合の遺産分割方法について解説を行いました。

 仮に海外・外国相続人が居住しているときは,国内で相続手続を行うことが難しくなるため,弁護士を代理人として依頼するメリットが大きいと言えますので,弁護士を依頼することを検討することをお勧め致します。

 東京都中野区所在の吉口総合法律事務所では,海外・外国居住の方を相続人とする遺産分割または海外・外国居住の被相続人の遺産分割のいずれの案件の対応実績がございます。

 海外・外国居住の相続人または被相続人の遺産分割でお困りの方はお問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。

 

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