債権回収の時効と注意を要する業務

【短期消滅時効にかかる注意があること】

企業間の取引によって発生した権利は5年で消滅時効により消滅しますが,例外として,民法は各債権に応じて短期の消滅時効を設定しています。そのため,債権回収にあたってはこの点に注意が必要です。具体的には,以下の通り短期消滅時効が定められています。

3年:不法行為に基づく債権(例:上の階の住民の漏水によって,下の階にある事務所に損害が発生した。),請負代金請求権(例:工事を完了した場合における報酬債権),医師・薬剤師の診療報酬債権(例:医療法人,医師が患者に対して有する診療報酬)

2年:生産者,卸売商人または小売商人が売却した産物または商品の代価に係る債権残業代請求権

1年:飲食店の飲食債権,運送費

このような債権が時効にかかることを防ぐためには,原則とは異なる短期消滅時効が存在するということを認識した上で,会社側の方で債権が時効にかかる時期を把握することが大切です。特に,上記短期消滅時効にかかる債権に関連する業務,例えば,建築業,医療機関であれば3年,小売業であれば2年,飲食店,運送業であれば1年が経過すると消滅時効が成立する可能性があるため,未回収の債権を有している場合は,時効の完了時期に注意が必要になります。

仮に,時効期間満了が近くなった場合は,まず相手方に対し,配達証明付の内容証明郵便を発送して支払を求めます。そして,内容証明郵便が到達すると6カ月間の間は,時効が完成しなくなりますので,その間に訴訟提起をすることにより,時効完成前の債権回収が可能になります。

なお,以上は現行民法の話ですが,民法改正によって時効期間が変わりますので,この点にも注意が必要です。

改正後の民法では,消滅時効の満了期間は,権利を行使することができると知った時から5年以内,権利を行使することができるときから10年に変更されます。

改正民法は,平成32年4月1日施行ですので,それ以降は,時効期間は統一されますが,それまでは上記の短期消滅時効が存在しますので,しばらくは注意が必要です。

 

【消滅時効になった場合に債権を回収する方法】

仮に時効期間が満了してしまった場合は,債権の回収をすることは全くできなくなるのでしょうか。

この点についてですが,時効期間が満了したとしても,債権回収が全くできないというわけではありません。時効期間が満了したとしても,期間が満了した場合に即時に権利が消滅するのではなく,相手方からの時効の援用の意思表示があって初めて消滅時効が成立します。

そして,仮に,時効の援用の意思表示の前において,相手方が債務の存在を認めた場合は,具体的事情にもよりますが,相手方は消滅時効を主張することができなくなってしまいます。

そのため,時効期間が満了したからといって,あきらめる必要はなく,場合によっては,債権を回収できる可能性もありますので,この点も理解しておく必要があります。

時効期間が満了しているけれども回収できるか疑問にお考えの方は,弁護士の方までご相談ください。

 

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