中野区で不動産無料相談対応の吉口総合法律事務所では,
「貸店舗において飲食店を営業していたところ,突然大家(オーナー)から期間満了を理由とする退去を求められたが退去しないといけないのか」
「ビルの一室において小売店舗を経営しているところ,管理業者を通じて,賃貸借契約を更新しないと言われて困っている。」
このような建物(店舗)退去に関するご相談をよくいただきます。
中野区で無料相談対応の吉口総合法律事務所作成の本コラムでは,店舗側(賃借人)が建物オーナーから賃貸借契約を更新しないと言われた等,退去を求められた場合に店舗側(賃借人)がとるべき対応について解説をしていきます。
建物(店舗)から退去を求められた場合,まずはオーナー側の建物退去を求める理由を確認する。
建物(店舗)から退去を求められている事案においては,オーナー側が何らかの理由を主張して店舗側(賃借人側)に建物(店舗)からの退去を求めてきます。
オーナー側が店舗側に退去を求める理由としては,①賃料滞納②期間満了・更新拒絶等が考えられます。
①はこちら側が賃料を支払っていないことを理由に契約を解除して退去を求めるパターンです。
②は賃貸借契約の契約期間が次回で満了するが契約の更新をしないことを理由に退去を求めるパターンです。
オーナー側が建物(店舗)からの退去を求める理由によって対応方法が変わってくるので,まずは建物(店舗)から退去を求める理由を確認しましょう。
なお,①の賃料滞納については,建物(店舗)の明渡・退去の請求は比較的認められやすいですが,②の期間満了・更新拒絶を理由とする退去請求については,オーナー側の退去請求は簡単には認められないため,店舗側(賃借人側)は退去の請求に対して比較的有利に交渉を進めることができます。
賃貸借契約の期間満了・更新拒絶を理由とする退去・立ち退きを求められた場合の店舗側の対処法
賃貸借契約の期間満了にもかかわらず,契約更新を拒絶したことを理由とする建物(店舗)からの退去請求は簡単には認められません。
それでは,どのような場合に建物(店舗)からの退去請求が認められるかというと,①契約終了1年前から6ヵ月前までの間における更新拒絶の通知②更新後における遅滞なき異議③立ち退きを認める正当事由が必要になってきます。
更新拒絶の通知を放置したり退去・立退きの交渉がまとまらない場合はどのように手続が進むか
前提として,仮に期間満了・更新拒絶を理由とする退去・立退きの請求を放置した場合,または,放置はしなかったもののオーナー側と交渉がまとまらない場合はその後の手続はどのように進むのでしょうか。
想定されるケースとしては,①オーナー側から建物明渡訴訟が提起される②そのままの状態が続くということが考えられます。
①の場合ですが,オーナー側がどうしても建物(店舗)から退去して欲しいと考えた場合は,店舗側を被告として建物明渡請求訴訟を提起することが予想できます。
そして,同訴訟において,オーナー側が後述の正当事由等を主張した上で裁判所に対し退去の請求を求めることになります。
次に,②の場合ですが,この場合は相応の立退料の支払うことが予想されるケースにおいて,オーナー側が,立退料を支払うくらいであればあえて退去を求めないという考えに基づきあきらめるパターンです。
但し,現在の店舗の賃料が相場より安い場合は,オーナー側が将来的に賃料増額請求等を行ってくるかもしれませんので,店舗側としては注意が必要です。
賃貸借契約の更新拒絶の通知及び更新後における遅滞なき異議の具体的内容
前述のとおり,期間満了・更新拒絶を理由とする退去の請求が認められるためには,①契約終了1年前から6ヵ月前までの間における更新拒絶の通知②更新後における遅滞なき異議が必要になります。
上記①及び②を怠った場合には,期間満了・更新拒絶を理由とする建物(店舗)からの退去請求は認められないのですが,通常,これらの手続はとられていることが多いです。
すなわち,通常,契約期間満了前の1年前から6ヵ月前までの期間において,オーナー側から配達証明付の内容証明郵便により更新拒絶の通知が届き,期間満了後に建物利用を続けている場合には,オーナー側から同郵便を利用して異議が述べられることが多いです。
そして,オーナー側からは,賃貸借契約が期間満了により終了していること及び賃貸借契約書記載の違約金条項があることを理由に月額の賃料の倍額の違約金が発生する旨連絡を受けることも多いです。
期間満了・更新拒絶を理由とする建物(店舗)からの退去・立ち退きを求めるには正当事由が必要
しかしながら,これらの請求に素直に従わなければいけないということはありません。
なぜならば,期間満了・更新拒絶を理由とする建物(店舗)からの退去・立退きの請求が認められるためには正当事由が必要だからです。
それでは,どのような場合に正当事由が認められるのでしょうか。
それは,平たく言えば,オーナー側(賃貸人側)と店舗側(賃借人)の双方の建物利用の必要性を比較考慮して,オーナー側の必要性が大きいが,賃借人側には必要性が小さい,または,同程度であるが立退料で補完できる場合に正当事由が認められるといえます。
この建物利用の必要性については,各事由による必要性の強弱があるため,建物(店舗)からの退去を求められている店舗側は,オーナー側の建物利用の必要性がどの程度強いか,また,店舗側の建物利用の必要性がどの程度強いかを整理した上で交渉を進める必要があります。
例えば,オーナー側が,不動産を高く売却するために建物(店舗)からの退去・立ち退きを求めている場合は,建物利用の必要性が全くないわけではありませんが,老朽化に伴う建替え等よりは建物利用の必要性は小さくなります。
また,退去を求められる店舗側が営んでいる事業が飲食店であれば場所的利益が大きいのに対し,事務所等であれば相対的には場所的利益が小さくなります。
このように,オーナー側の建物利用の必要性の有無及び大小並びに賃借人側の建物利用の必要性の有無及び大小から正当事由の有無が変わってきます。
そして,退去の請求を退けることを希望する場合は当然として,退去を前提に高額な立退料を取得することを望む場合であっても,立退料が建物利用の必要性を補完する性質であることからすれば,高額の立退料を取得するためには建物利用の必要性を整理した上で交渉を行うことが重要になってきます。
期間満了・更新拒絶を理由とする建物退去・立ち退きを求められた場合の立退料の相場と算出方法
先に述べた通り,オーナー側及び店舗側の建物利用の必要性を比較考慮した上で,双方に同程度の必要性が存在する場合において立退料の問題が生じます。
それでは,立退料の算定及び相場はどのように決まるのでしょうか。
しかしながら,これに対する回答は明確には存在しないと言わざるを得ません。
立退料の算定方式には,①借家権価格②移転に伴う実費・損失価格③併用方式等が存在しますが,どの方式をとるべきかということは確定していません。
これらの各方式ですが,平たく言えば,①の借家権価格は,更地価格に対して借地権割合や借家権割合を乗じて算出する価格であり,②の移転に伴う実費・損失価格は,内装や造作に対して発生する費用や休業補償が含まれます。
これらの算出方式を基に立退料の計算がなされますが,これらの立退料の交渉も,建物利用の必要性が基礎になるため,まずは先に述べた建物利用の必要性の整理と主張・立証が必要になります。
終わりに
以上,建物(店舗)から賃貸借契約を更新しない等の理由により退去を求められた店舗はどのように対応したらよいかについて,期間満了・更新拒絶を理由とする退去にを中心に解説を行いました。
期間満了・更新拒絶を理由とする建物(店舗)から退去を求められた場合は,現在の場所で営業を続けたい場合または退去を前提とした立退料の交渉をすることが考えられますが,いずれの場合であっても,正当事由の検討を踏まえた交渉が必要になります。
したがって,期間満了・更新拒絶を理由とする立退き・退去を求められた場合は,立退き・退去案件を重点的に扱う弁護士に依頼をすることが大事です。
東京都中野区所在の吉口総合法律事務所は,期間満了・更新拒絶を理由とする退去・立退き案件を重点的に扱っており,5000万円を超える立退料を取得した実績もございます。
期間満了・更新拒絶を理由とする退去・立退き案件についてご不明な点がございましたら,当ホームページのお問い合わせフォームよりお問い合わせください。