【相続コラム】親の死後に障害ある子供の財産管理をする方法

 障害のあるお子様がいるご両親から,「自分自身が元気のうちはいいが,自分が病気になったり死亡した後は,誰がどのように子供の面倒を看ればよいか。」とご質問をいただくことがあります。
 
 お子様に障害等が無い場合であれば,自身の死後に関しては,遺言書の作成をお勧めしております。
 
 他方で,障害のあるお子様がいる場合においては,遺言書の作成ではできることに限度があるといえるでしょう。
 
 それでは,障害のあるお子様がいる場合において,親の死後,障害のあるお子様のためにどのように財産管理を行えばよいのでしょうか。
 
 以下では,親の死後に障害ある子供の財産管理を行なうにはどうすればよいかについて解説を行います。
 

障害のある子供の財産管理のために成年後見を利用する方法

 まず,障害のあるお子様のための財産管理のために成年後見制度を利用する方法が考えられます。
 
 成年後見制度とは,裁判所から選任された成年後見人が,障害のある方のために財産管理を行なう制度のことをいいます。
 

成年後見制度のメリット

 この成年後見制度を利用して,親が,自分自身が死亡した場合等に備えて,障害のある子の財産管理をするために,障害のある子供を被後見人,自身を候補者,または,裁判所が選任した後見人が財産管理をするために後見の申立てをすることが考えられます。
 
 裁判所が選任した後見人が就任した場合は,親が死亡したからといって障害のある子供の財産管理に影響があるわけではありません。
 したがって,親が亡き後であっても障害のある子供の財産管理を継続することができます。
 
 また,親が後見人に就任した場合であっても,万が一親が障害のある子供より先に死亡したり,心身に支障を来したとしても,別の後見人が選任され,当該後見人が子の財産管理を行なうことができるというメリットがあります。
 

成年後見制度のデメリット

 他方で,成年後見制度のデメリットとしては,利用の可否や財産管理につき柔軟性を欠くという点があげられるでしょう。
 
 例えば,民法では後見開始の要件について,
 
民法第7条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については・・・・
 
と規定されており,後見の開始のために精神上の障害を念頭においているため,身体障害の場合は後見制度を使えない場合があります。
 
 また,後見制度を利用するに当たっては,障害のある子の財産管理を行なう後見人を,自分自身,または,信頼できる家族や知人にしたいと考えると思います。
 
 もっとも,後見制度を利用するに当たっては,自分自身や第三者を成年後見人候補者として推薦することはできるものの,被後見人が一定以上の財産を有する場合や親族間に紛争がある場合等一定の条件では,推薦した者が後見人にならないこともあります。
 
 更に,後見人が就任したとしても,被後見人の自宅の不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要となることに加え,財産管理をするに当たっては相続税対策や資産運用等の積極的な処理ができないというデメリットもあります。
 
 このように,法定後見制度については,もちろんメリットもありますが,財産管理方法等,やや柔軟性に欠ける制度であるともいえると思います。
 

任意後見契約を利用した障害のある子の財産管理を行なう他の方法

 なお,自身の指定した者を後見人としたいのであれば,法定後見ではなく後見人候補者との間で任意後見契約を締結する方法があります。
 
 この任意後見契約を利用した他の方法としては,親が遺言書を作成した上で将来障害のある子供に対して財産を承継させると共に,障害のある子供と任意後見人候補者との間で任意後見契約を締結する方法があります。
 
 もっとも,障害のあるお子様が任意後見契約を締結するためには,お子様に意思能力が必要になりますので,仮に障害のあるお子様に意思能力が無い場合は,任意後見契約を締結することは通常難しくなります。
 

家族信託を利用して障害のある子供の財産管理を行なう方法

 次に,信託を利用して障害のある子供のために財産を信託するという方法があります。

 信託とは,大まかに言って,財産管理を依頼する委託者,財産管理を行なう受託者,財産管理の利益を受ける受益者が登場する制度になります。

 例えば,親が障害のある子供のために信頼できる親族に財産管理を委ねた場合,親が委託者,信頼できる親族が受託者,障害のある子供が受益者ということになります。

家族信託制度を利用することのメリット

 この信託のメリットとしては,将来財産管理を行なう者を指定できると共に,遺言書では難しい財産移転の順位付けもできるという点があります。
 
 例えば,妻及び子供2名がいる場合において,次男に障害があるとします。
 この場合において,長男を受託者として財産を取得させた上で,受益者を妻及び次男とし,妻が生きている間は妻及び次男のために財産を利用し,妻が亡き後は次男のために財産を使用するという設定が信託では可能です。
 
 その上で,妻及び次男が亡くなった場合には,最終的に長男が財産を取得するということも可能です。
 
 他の制度とは異なり,信託ではこのような柔軟な財産移転ということが可能になります。
 
 また,受託者に財産管理を委託する際には,受託者に財産を移転する必要がありますが,例えば受託者に多数の借金が存在したとしても,受託者の債権者がこれらの財産を差し押さえることはできないため(信託の倒産隔離機能),安心して財産を移転することができます。
 

家族信託制度を利用することのデメリット

 他方で,家族信託にもデメリットがあります。
 
 まず,当然のことながら,受託者に財産管理をしなければならない義務が生じるため,受託者にこのような負担が生じます。
 受託者の業務の中には税務申告等も含まれるため,これらの事務を行うことは負担があると言わざるを得ないでしょう。
 
 また,信託制度は,今まで多く使われていたとはいえないことから弁護士等の専門家が少ないことに加え,金融機関の対応もまだ不慣れということがいえます。
 
 もっとも,前者の受託者の負担については,任意後見契約等の場合であっても当然発生するものですし,後者の専門家が少ないという点については,信託を多く扱う弁護士等に相談をすれば解消ができることなのでさほど気にする必要はないかもしれません。
 

終わりに

 以上,親の死後に障害ある子供の財産管理をする方法について解説を行いました。

 通常の遺言書の作成時もそうですが,ご自身に元気がある時にはなかなか将来のための措置を採ることに消極的になってしまいます。

 もっとも,これらの将来のための措置は早く行うことにデメリットは無いといえますので,思いついたときに行動されることをお勧めしています。

 東京都中野区所在の吉口総合法律事務所では,今回ご紹介した親族に障害がある子がいる場合に限らず,信託,遺言書の作成,後見,任意後見を始めとした相続・将来の財産承継に関する知識・ノウハウを多数有しています。

 本記事をご覧になり,もしご不明な点がございましたら,東京都中野区所在の吉口総合法律事務所までお気軽にご相談ください。

 

 

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