被相続人に相続人がいない場合に遺産を取得するにはどうすべきか

 相続人がいないことを理由に国庫に帰属した2021年度の遺産額が過去最高額の647億円にのぼったというニュースが流れてきました。

 昨今、結婚をしないか、または、結婚をしても子どもがいない世帯も増えているようであるため、これらが相続人不存在による遺産の国庫帰属の背景になっていると思われます。

 本コラムでは、相続人がいない場合の相続について説明をすると共に、被相続人に相続人がいない場合に遺産を取得する方法について解説を行います。

相続人がいない場合における相続財産・遺産は相続財産管理人が管理する

どのような場合に相続人がいないケースになるか

 法律上定められた相続人の範囲は定められており、被相続人の配偶者は固定として、子供、親、兄弟姉妹の順位で決まることになります。

 仮に、相続発生前に相続人となる予定であった子供や兄弟姉妹が亡くなっている場合は、被相続人の孫や甥姪も相続人になります。

 他方で、例えば、既に親が亡くなっており独身の一人っ子の子供の場合は、子供、親、兄弟姉妹が存在しないため相続人が存在しないことになります。

 また、子供がいない夫婦で、親・兄弟・配偶者が既に亡くなっており甥や姪もいない場合や、珍しいケースですが、再婚して連れ子と一緒に仲良く生活していたものの、連れ子との養子縁組をしていなかったので相続人が不存在ということもあります。

相続人がいない場合は相続財産管理人の選任の申立てを行う必要がある。

 亡くなった被相続人に相続人がいない場合は、相続財産法人と呼ばれる一種の法人の扱いになります。

 これは、会社でいうと代表者がいないような状態であり、そのままでは被相続人の遺産の処分や負債の支払をすることは難しいことになります。

 そこで、相続財産管理人と呼ばれる、前述の相続財産法人の財産を管理する者を選任する必要があります。

 この相続財産管理人の申立ては、亡くなった方の最後の住所地の事件を扱う家庭裁判所に対して行うことになります。

相続財産管理人が公告等を行い財産や相続人の調査を行う。

 相続財産管理人の選任の申立ての結果、相続財産管理人が選任された場合は、相続財産管理人は自らが選任されたことや他に相続人が存在しないか等を官報に公告することになります。

 これらの公告期間は法律で定められており、全ての公告期間が満了するまで1年弱の時間を要することになります。

相続財産管理人が遺産・負債の換価等を行い最終的には国に帰属する

 前述の公告期間が満了する頃には、被相続人の遺産や負債関係が明らかになるため、相続財産管理人は財産の処分や債務の支払を行うことになります。

 遺産から債務の支払後、残された財産については、特段手続がなされなければ、通常国に帰属することになります。

 その結果、国に帰属する資産が600億円以上にのぼることを報道したのが上記ニュースになります。

遺産を国に帰属させず遺産を取得するためには特別縁故者の申立てを行う

 それでは、遺産を国に帰属させず、被相続人に関係する者が取得するためにはどのようにすればよいでしょうか。

 この問いに対する答えは、相続財産管理人が最後に公告を行ってから3カ月以内に特別縁故者の申立てを行う、というものになります。

特別縁故者とはどのようなものか。

 特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養監護に務めていた者、その他被相続人と特別の縁故があった者をいうとされています(民法958条の3)。

 例えば、被相続人の内縁の妻や夫、事実上の養子や直接の血縁関係にないおじ・おば等があげられます。

 問題は、親族関係が無い場合において被相続人とつながりがあった方が特別縁故者に該当するかという点です。

 この点については、被相続人と血縁関係がなかったとしても、一概に特別縁故者に該当することを否定するわけではなく、生前の関係性や被相続人の意思等を踏まえて検討されることになります。

特別縁故者に該当するとしてどの程度の遺産を取得することができるか。

 仮に特別縁故者に該当する場合であっても、遺産を必ず全て取得できるわけではなく、一部ということもあり得ます。

 具体的には、被相続人との縁故関係や申立人の状況等を踏まえて、最終的には家庭裁判所が判断することになります。

終わりに

 以上、亡くなった方に相続人がいない場合に遺産を取得するためにはどうしたらよいかについて解説を行いました。

 前述のとおり、亡くなった方に相続人がいない場合には、特別な手続が必要となります。

 特にご自身が被相続人の関係者である場合や、相手方に相続人がいない場合等には、相続財産管理人の選任申立手続を行うか否かを検討する必要が生じます。

 東京都中野区所在の吉口総合法律事務所では,相続財産管理人の選任申立てや特別縁故者の申立てを始めとする相続問題を多数扱っております。

 相続人がいない相続が発生した場合等でお困りの方は,相続問題を重点的に扱う東京都中野区所在の吉口総合法律事務所までお気軽にご相談ください。

 

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