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相続人が多すぎて遺産分割が進まない…そのお悩み、解決できます
「祖父の代から遺産分割が終わらないうちに、父も亡くなってしまった」「数次相続が重なり、相続人が10人、20人と増え、会ったこともない親戚まで関係者になってしまった」
このように、相続人が多数にのぼることで遺産分割協議がまったく進まず、途方に暮れてはいないでしょうか。
全員の予定を合わせるだけでも一苦労なうえ、一部の相続人が非協力的な態度をとるなど、心身ともに疲れ果ててしまうケースは決して珍しくありません。
しかし、そのような問題を解決するための法的な手段として、この記事で詳しく解説する「相続分譲渡」という手続があります。
この記事では、相続問題に注力する弁護士が、多数の相続人がいる場合の遺産分割を前に進めるための具体的な方法、特に「相続分譲渡」の活用法について、そのメリットや注意点、手続のコツまで分かりやすく解説します。
読み終えることで、次に検討すべき手続や相談時のポイントが分かる参考になります。

相続人が増える「数次相続」と「代襲相続」の仕組み
そもそも、なぜ相続人がこれほど多くなってしまうのでしょうか。
状況を客観的に理解するために、まずは典型的な2つのケースを見ていきましょう。
ケース1:代襲相続や再代襲相続が重なった
本来相続人となるはずだった子や兄弟姉妹が、被相続人(亡くなった方)よりも先に亡くなっている場合に、その方の子(被相続人から見れば孫や甥・姪)が代わりに相続人になることを「代襲相続」といいます。
さらに、その代襲相続人となる孫なども先に亡くなっている場合は、その子であるひ孫が相続人になる「再代襲相続」が起こります。このように、世代をまたいで相続が繰り返されることで、相続人の数が増えていくことがあります。
ケース2:遺産分割未了のまま数次相続が発生した
こちらが、相続人がネズミ算式に増えてしまう最も多い原因です。
「数次相続」とは、ある方の相続手続(遺産分割協議)が終わらないうちに、その相続人のうちの誰かが亡くなり、次の相続が開始されてしまう状態を指します。
例えば、祖父が亡くなった際の遺産分割をしないまま、長男である父が亡くなったとします。すると、父が持っていた「祖父の遺産を相続する権利」を、母と子供たちが相続することになります。これにより、祖父の遺産分割協議には、当初の相続人に加えて、母や子供たちも参加しなければならなくなります。
遺産分割を先送りにすればするほど、関係者はどんどん増え、話し合いはより困難になってしまうのです。

多数相続で遺産分割が困難になる3つの壁
相続人が多数になると、具体的にどのような問題が生じるのでしょうか。多くの方が直面する「3つの壁」について解説します。
① 相続人全員の特定と連絡の壁
遺産分割は、相続人全員の参加が絶対条件です。そのため、まず「誰が相続人なのか」を確定させる必要があります。
これには、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本や、先に亡くなった相続人全員の戸籍謄本などをすべて収集し、相続関係を正確に把握しなければなりません。
相続関係が複雑になっている場合、戸籍の収集は全国の市区町村に及ぶこともあり、面識のない親族が見つかることも珍しくありません。この相続人調査だけで数ヶ月を要することもあり、個人で行うには非常に大きな負担となります。
② 全員の合意形成と書類収集の壁
相続人全員を特定できたとしても、次はその全員と連絡を取り、遺産分割の内容について合意を形成するという高いハードルが待っています。
遠方に住んでいる方、海外にいる方がいることもあります。電話や手紙、メールなどで一人ひとりと連絡を取り、意見を調整していく作業は想像以上に大変です。
そして、ようやく全員が合意に至ったとしても、最終的に作成する「遺産分割協議書を不動産登記に用いる場合は、通常相続人全員の署名・実印押印および印鑑証明書の添付が求められます。
一人でも協力が得られなければ、手続はそこで止まってしまいます。
③ 相続人間の感情・関心の壁
手続の煩雑さ以上に、協議を停滞させるのが人間関係の問題です。
- 遺産への関心が薄く、話し合いに非協力的な相続人
- 他の相続人との関係が悪く、感情的に対立してしまう相続人
- 法定相続分以上の過度な要求を主張する相続人
相続人の数が多ければ多いほど、様々な考えや感情が交錯し、話し合いをまとめるのは困難を極めます。このような状況では、法的な手続によって関係者を整理し、話し合いのテーブルをシンプルにする必要があります。
特に、遺産分割に関心がない相続人がいる場合、協議を進めること自体が面倒だと感じ、話し合いに応じてくれないことがあります。しかし、法律上は相続人全員と遺産分割を行わなければならず、これが大きな障害となるのです。
解決策:相続分譲渡で協議の当事者を絞る
これらの困難な壁を乗り越えるための有効な手段が「相続分譲渡」です。これは、ご自身が持つ相続分(遺産を相続する権利)を、他の相続人や第三者に譲り渡す手続です。
相続分譲渡を活用することで、遺産分割協議に関心のない相続人や、早期に相続手続から抜けたい相続人が協議の当事者から外れることができます。その結果、話し合いに参加する人数を絞ることができ、協議をスムーズに進められる可能性が高まります。
例えば、相続人が15人いるケースで、10人が特定の1人(Aさん)に相続分を譲渡すれば、残りの当事者は5人+Aさん(10人分の権利を持つ)となり、格段に話し合いが進めやすくなります。

相続分譲渡とは?相続放棄との違い
相続分譲渡とよく似た制度に「相続放棄」があります。どちらも遺産相続に関わらなくなる点は共通していますが、その性質は全く異なります。
| 相続分譲渡 | 相続放棄 | |
|---|---|---|
| 手続の相手方 | 他の相続人や第三者との契約 | 家庭裁判所への申立て |
| 権利の行方 | 譲渡された相手(譲受人)に権利が移る | 初めから相続人でなかったことになる |
| 債務の扱い | 債務(借金など)を承継する義務は残る | 債務を承継する義務がなくなる |
| 期限 | 遺産分割協議が成立するまで(期限なし) | 原則、相続開始を知った時から3ヶ月以内 |
最も重要な違いは「債務の扱い」です。相続放棄をすれば借金などのマイナスの財産を引き継ぐ義務もなくなりますが、相続分譲渡ではプラスの財産を譲渡しても、債権者(お金を貸した側)に対して借金を支払う義務は残ってしまいます。この点は十分に注意が必要です。
ただし、被相続人の従前の生活状況を見れば債務が存在しない可能性が高いような場合は、上記デメリットのリスクは小さくなります。
相続分譲渡のメリットと注意点
メリット
- 遺産分割協議から離脱できる: 煩雑な話し合いや手続から解放されます。
- 手続が比較的簡単: 家庭裁判所を通す必要がなく、当事者間の合意で成立します。
- 協議の迅速化: 話し合いの当事者が減ることで、合意形成がしやすくなります。
- 対価を得られる可能性がある: 無償だけでなく、有償で相続分を譲渡することも可能です。
注意点
- 債務の支払義務は残る: 前述の通り、被相続人に借金があった場合、債権者から支払いを求められれば応じなければなりません。
- 他の相続人の取戻権: 相続人以外の第三者に相続分を譲渡した場合、他の相続人は一定期間内であれば、その相続分を時価で買い戻すことができます(相続分の取戻し)。
相続分譲渡は有効な手段ですが、債務や税金の問題も絡むため、安易な自己判断は危険です。実行する前に、一度弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
【弁護士解説】相続分譲渡を円滑に進める手続のコツ
将来の調停を見据え、実務上は相続分譲渡証書や譲渡人の印鑑証明書、必要に応じて即時抗告権放棄の意思を示す書面を揃えておくと実務上の手続が円滑になる場合が多いです。
ただし、どのような書類が必要かは家庭裁判所や事案によって異なるため、事前に当該家庭裁判所や専門家に確認してください。
遺産分割調停中に相続分譲渡は可能?影響は?
すでに話し合いがこじれ、遺産分割調停を行っている最中という方もいらっしゃるかもしれません。「調停中に相続分譲渡なんてできるのだろうか?」と疑問に思われるかもしれませんが、調停中の相続分譲渡も可能です。
調停中に相続人AさんがBさんに相続分を譲渡した場合、その旨を裁判所に届け出ます。裁判所が相続分譲渡の事実を認めると、裁判所の判断により当該相続人を調停の当事者から除く(排除決定)ことがあり、その結果として参加不要となる場合があります。
ただし、排除の可否や手続の運用は家庭裁判所や事案により異なるため、必ずしも排除決定が出るとは限りません。
泥沼化した調停から抜け出したい、あるいは当事者を絞って議論をシンプルにしたいという場合、調停中の相続分譲渡も有効な選択肢となり得ます。
行方不明の相続人がいる場合の対処法
多数の相続人がいるケースでは、中には連絡が取れず、どこに住んでいるかも分からない行方不明の方が含まれていることがあります。
遺産分割は相続人全員で行う必要があるため、行方不明者がいると、その時点で手続がストップしてしまいます。
このような場合は、家庭裁判所に申し立てて「不在者財産管理人」を選任してもらう必要があります。不在者財産管理人は、行方不明者に代わって遺産分割協議に参加し、財産を管理する役割を担います。
この手続は専門的な知識を要しますので、お困りの方は弁護士にご相談ください。詳しくは、こちらの記事「相続人に失踪者や行方が分からない者がいるときに遺産分割を行う方法」でも解説しています。
多数の相続人がいる遺産分割は弁護士にご相談ください

相続人が多数にのぼる遺産分割は、法律知識だけでなく、複雑な人間関係を調整する交渉力や、煩雑な手続を正確に進める実務能力が求められます。ご自身だけで解決しようとすると、多大な時間と労力、そして精神的な負担を強いられることになりかねません。
私たち弁護士にご相談いただければ、以下のようなサポートが可能です。
- 相続人調査(戸籍収集)の代行
- 他の相続人との交渉代理
- 相続分譲渡に関する書類作成と手続のサポート
- 遺産分割協議書の作成
- 遺産分割調停・審判への対応
ご相談者様の事情を丁寧に伺い、法的に考え得る選択肢を一緒に検討します。問題解決に向けた手続や交渉を当事務所がサポートします。
多数の相続人がいる遺産分割でお悩みの方は、一人で抱え込まず、ぜひ一度当事務所の初回30分無料相談をご利用ください。

