遺留分侵害額請求をされた場合どのように対応をすればよいか

 亡くなった親が自分に遺産を相続させる旨の遺言書を残してくれたが,他の親族から遺留分侵害額請求を受けた,このような場合に請求を受けた側はどのような対応をとればよいでしょうか。

 本ページでは,遺留分侵害額請求を受けた者がどのような事項を検討し,どのように対応をすべきかについて解説を行います。

遺留分侵害額請求を受けた場合に検討すべき事項

遺留分侵害額の請求権者が正しいかを計算する 

 まず,遺留分侵害額の請求権者からの請求かを確認します。

 遺留分の侵害額請求ができるのは,兄弟姉妹以外の相続人になります(民法1042条)。

 したがって,例えば,兄弟姉妹や甥や姪から遺留分侵害額の請求をされた場合は,当該請求に応じる必要はないことになります。

 また,無効と思われる養子縁組がなされている場合において,当該養子から遺留分の請求がなされているときは,養子縁組が無効であることを主張して遺留分の請求を退けることができる場合もあります。

遺留分侵害額請求額が適正であるか確認する

 次に,遺留分侵害額請求をされている際は,請求額が適正かどうかを確認する必要があります。

 遺留分の計算方法は,

 個別的遺留分割合×遺留分を算定するための基礎財産(相続開始時における遺産額+生前贈与-被相続人の債務)

 になります(民法1043条)。

 そして,遺留分の基礎となる生前贈与については,相続開始前の1年前にされたもの,または,相続開始前10年の間に生計の資本として受けた相続人の贈与が含まれる等(民法1044条),細かいルールがあります。

 これらの計算を行い,正しい請求を行っているかをまずは検討することになります。

遺留分侵害額請求が消滅時効となっていないかも確認する

 遺留分侵害額請求も無制限にできるものではありません。

 遺留分侵害額請求は,相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年以内または相続の開始から10年以内にこれを行う必要があります。

 1年の消滅時効は時効としては短いため,侵害額請求がされた時に1年経過しているということもあります。

 したがって,請求を受けた側は,遺留分侵害額請求の時効にかかっていないかを確認するとよいでしょう。

遺留分の請求を退けるまたは減額する方法がないか検討する

 他の相続人から遺留分侵害額の請求がなされた後,当該請求がある程度は理由があると思われた場合は,次に遺留分の請求を退けるまたは減額する方法がないかを検討します。

遺留分の請求を退ける方法(遺留分を渡さない方法)

 結論を先に述べると,遺留分は相続人に保障される最低額であるため,相続開始後に遺留分を渡さないという方法は極めて限られます

(なお,生前の遺留分対策についてはこちらのページをご参照ください。)。

 例外的に遺留分侵害額請求が認められないケースの一つは,遺留分請求が権利濫用に該当するような場合です。

 例えば,被相続人から対価をもらって遺留分を請求しない旨合意をしていたにもかかわらず,当該合意を反故にして遺留分の請求を行った事案等です。

 しかしながら,権利濫用は極めて例外的な場面においてのみ認められる主張ですので,当該主張を主要なものとするかは慎重に検討した方が良いでしょう。

遺留分の請求額を減額する方法

 遺産の評価額を減額する方法

 前述のとおり遺留分侵害額は,遺産額や生前贈与額から構成される遺留分の基礎財産に遺留分割合を乗じて計算されます。

 したがって,遺産を構成する不動産等の評価額次第で,遺留分侵害額は変わってくることになります。

 例えば,個別的遺留分割合が4分の1のときに,遺産の評価額が1000万円であるのか2000万円であるかによって遺留分侵害額が変わってきます。

 よって,遺産額等の評価額を下げられないか検討するとよいでしょう。

 具体的には,不動産や非上場株式等については,評価方法が複数あるため評価額が必ずしも一定とはいえません。

 また,債権についてもその内容によっては額面額通りの評価額にならないこともあります。

 よって,不動産等の評価額について減額をすることができないか検討するとよいでしょう。

 遺留分侵害額請求権者の特別受益額が無いかを検討する

 遺留分侵害額は遺留分侵害額請求者が特別受益を受けた場合,当該金額も控除されることになります。

 したがって,遺留分侵害額請求権者が特別受益を受けていないかを検討した方が良いでしょう。

 そして,特別受益の典型例は生前贈与ですが,必ずしも一見して生前贈与に該当する場面に限定されるわけではありません。

 ここでは詳しくは論じませんが,例えば,次のようなケースがあげられます。

  • 遺産に比較して遺留分侵害額請求権者が受領した生命保険の割合が極めて大きい場合
  • 被相続人が借地権者である場合で遺留分請求権者が底地を購入したが,その後被相続人が地代を支払っていない場合

 このように,請求権者が生前贈与の有無のみならず上記のような特別受益を受けていないか確認するようにしましょう。

 なお,改正相続法では,遺留分の基礎となる生前贈与は10年以内の者に限定されるようになりました。

 もっとも,遺留分侵害額から控除される請求権者の特別受益に関しては,10年以内のものに限定されませんので,この点を誤らないようにしましょう。

終わりに

 以上,遺留分侵害額請求がされた場合に対応すべき方法について解説を行いました。

 解説では請求された側が検討すべき事項を列挙しましたが,すべてを網羅しているわけでもなく,事案に応じて使えるものとそうではないものもあります。

 したがって,遺留分侵害額請求がなされた場合は,相続問題に詳しい弁護士に相談されることをお勧めいたします。

 東京都中野区所在の吉口総合法律事務所では,遺留分侵害額の請求をする側またはされる側のいずれの事案においてもノウハウがございます。

 遺留分侵害額請求を含む相続問題にお困りの方は東京都中野区所在の吉口総合法律事務所までお問い合わせください。

 

無料相談ご予約・お問い合わせ

 

ページの上部へ戻る

トップへ戻る

電話番号リンク 問い合わせバナー