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未婚で子供を出産した場合に強制執行を利用して養育費を回収する方法
前回の記事では,未婚で子供を出産した場合に子供の父親に養育費を支払わせるためには,養育費の合意を行う必要があることについて解説を行いました。
また,養育費の合意を行うに当たっての,その合意の書面化の必要性と書面化の具体的方法についても解説を行いました。
それでは,養育費の合意を行ったにもかかわらず,子供の父親が養育費を支払わない場合は,諦めなければいけないのでしょうか。
その答えとしては,養育費の回収をあきらめる必要はないというものになります。
中野区で無料相談対応の吉口総合法律事務所作成の本コラムでは,養育費の合意を行ったにもかかわらずこれを支払わない時に養育費を支払わせる方法を,今回の民事執行法の改正によりこれまで以上に養育費の回収をしやすくなった点も含めて,弁護士が解説を行います。
※なお,ここでも養育費を支払わない者を子の父親としておりますが,あくまで便宜上の設定にすぎませんのでご了承ください。
相手方が任意に支払わない場合は強制執行手続を行う
裁判所に対する強制執行申立手続の概要
まず,子供の父親が養育費の合意をしたにもかかわらず養育費の支払を行わない場合は,地方裁判所に対して強制執行の申立を行う必要があります。
この強制執行を行うことにより,養育費を任意に支払わない場合でも,子供の父親の同意なく財産を差し押さえた上で売却し,その売却代金から支払いを受けることができるようになります。
また,強制執行手続により預貯金や給料を差し押さえた場合は,預貯金や給料の全部または一部から支払いを受けることができるようになります。
この強制執行の申立てを行う裁判所ですが,子供の父親の住所地を管轄する(近くの)裁判所になります。
ですので,例えば,子供の父親が東京23区に居住している場合は,養育費の請求を行う未婚の母は,東京地方裁判所に強制執行の申立を行うことになります。
ただ,強制執行の対象を行うためには,差押えを行う財産を特定した上で,強制執行の申立書等の書面を用意しなければいけません。
強制執行を行うためには差押えの対象とする財産を特定する必要がある
前述の通り,強制執行の申立てを行うためには,養育費を請求する未婚の母の方で差押えの対象とする財産を特定する必要があります。
典型的な差押えができる財産としては,不動産,預金,給与,保険(解約返戻金であり,掛け捨ての保険ではダメです。)等があげられますので,養育費の請求を行う未婚の母は,子供の父親が有するこれらの財産のうち,どの財産を対象として強制執行を行うかを決めなければいけません。
なお,給料については,子供の父親が退職をした場合給与から回収を行うことはできなくなってしまいます。
ただ,その場合であっても退職金債権を差し押さえることできますので,子供の父親の勤務期間が長い職場であれば,退職される危険性は相対的に小さくなると言えるでしょう。
強制執行を行うためには差押えの対象とする財産の調査を,養育費を請求する側で行わなければならない
強制執行を行うためにはどこまで財産を特定する必要があるか
前述の通り,強制執行を行うためには,養育費を請求する未婚の母の側で,差押えの対象となる財産を特定するに足りる情報の調査を行う必要があります。
もっとも,これらの財産については,現在の法律では裁判所が探してくれるわけではないので,養育費を請求する未婚の母の方で差押えの準備を行う必要があります。
財産を特定できるだけの情報の具体例としては,不動産であれば対象不動産の所在,預金であれば金融機関名と支店,給料であれば勤務先,保険であれば保険会社になりますので,これらの情報を特定する必要があります。
差し押さえる財産がわからない場合の手段について
① 決め打ちでの強制執行の申立て
子供の父親の財産の特定が難しい場合において,まずできることの一つとしては,決め打ちで銀行口座等を狙って強制執行の申立てをする方法があげられます。
例えば,子供の父親の自宅近くの金融機関の預金口座宛に強制執行の申立てを行う方法です。
ただ当然のことながら,対象となる財産が存在しない可能性もありますので,賭けになってしまうといえるでしょう。
② 財産開示手続について
次の方法としては,財産開示手続を利用する方法があげられます。
財産開示手続とは,裁判所が子供の父親に対して呼び出しを行った上で,現在保有している財産を開示するよう求める手続になります。
仮に子供の父親が裁判所の求めに対し出頭を拒絶した場合は,裁判所の判断により過料の制裁が課されることになります。
ただ,財産開示手続を行ったにもかかわらず子供の父親が出頭をしなかったとしても,過料の制裁が課されないこともありますので,必ずしも実効性が高い手続とは言えません。
弁護士であれば,調停調書や審判がある場合メガバンクの預金は全店照会が可能
養育費の請求を行うためには請求を行う側で特定をする必要がありますが,その調査は容易ではありません。
もっとも,メガバンクの預金に限られますが,弁護士であれば弁護士会照会という手続を使うことにより,父親が持つ銀行口座の調査を行うことができます。
弁護士会照会を行うことにより,銀行側が子供の父親の有している口座を回答しますので,養育費の請求を行う母側は,回答された口座に対し差し押さえをすることが可能になります。
このように,養育費の確実な回収を狙うためにも,養育費(債権)回収に強い弁護士に依頼するメリットがあるといえます。
3.民事執行法の改正により子供の父親の財産調査が容易になった
既に述べた通り,強制執行を行うためには,子供の父親の財産調査を行う必要があるところ,父親の財産がわからない場合は,強制執行を行うことが難しいという問題がありました。
このような養育費の回収が難しいという現状を踏まえて,令和元年5月10日に,民事執行法が改正されました。
改正民事執行法では,以下の制度が新設され養育費の回収が容易になっています。
なお,改正法の施行はまだされていませんが,公布の日から政令で定める1年以内とされていることから,令和2年の4月頃までには,今後施行がなされる予定です。
金融機関に対し,預金口座や証券口座の有無を開示するよう求められるようになった
前述の通り,強制執行をするためには,銀行預金であれば支店まで特定する必要がありました。
しかし,今回の改正では,裁判所が金融機関(銀行,信用金庫,証券会社等)に対し預金口座や証券口座の有無を照会できるようになりました。
この制度の新設により,メガバンクに対する弁護士会照会によって従前なされていた口座の調査以上の調査が,裁判所を介してできるようになりました。
今回の法改正では,メガバンク以外の金融機関に対して照会ができるようになったということが大きな変更点と言えるでしょう。
市役所や年金機構に対し,給与支払者(勤務先)の情報を開示するよう求められるようになった
次に,今回の改正により,財産開示手続を経た後にはなりますが,裁判所が市区町村や年金機構に対し給与支払者(勤務先)の情報を確認できることになりました。
給与所得者の場合,住民税が特別徴収(給与から天引き)されることがあるため,市区町村は勤務先を把握していることがあります。
また,厚生年金に加入している場合は年金機構が勤務先を把握しています。
そのため,裁判所が市区町村等に対し照会を行うことにより,子の父親の現在の勤務先が判明し給料の差押えが可能になってくるのです。
今回の法改正によって,子供の父親がサラリーマンである場合は,今後は給料から養育費の回収をすることが容易になります。
登記所に対し,不動産の情報を開示するよう求められることになった
最後に,財産開示手続を経た後に,裁判所が登記所に対し対象者の不動産情報の照会をできるようになりました。
不動産の登記は誰でも閲覧・取得することができるため,法改正前も,子供の父親の住所地の登記等を調べることは可能でした。
もっとも,自宅以外の不動産に関しては,相手方がどこの不動産を保有しているかを知ることは困難でした。
今回の改正により,登記所に対して情報開示が可能になるため,例えば,子供の父親が不動産を隠し持っていた場合において,養育費の回収をすることがより容易になりました。
4.終わりに
以上,養育費の合意を行ったにもかかわらず,子供の父親が養育費を支払わない場合において回収する方法を解説しました。
従前は養育費を支払わないケースも多かったですが,法改正により,養育費を支払わない場合は強制的にこれを回収ができるようになりました。
東京都中野区所在の吉口総合法律事務所では,養育費の不払いを含む離婚・男女問題を重点分野としております。
養育費を含む離婚男女問題に関する問題でお悩みの方は,中野区で無料相談対応の吉口総合法律事務所までお気軽にお問い合わせください。
未婚で子供を出産した場合に父親に養育費を支払わせる方法
中野区で無料相談対応の吉口総合法律事務所では,
「妊娠をしたものの事情があり,未婚で子供を出産した。けれども,将来養育費が支払われることが心配。」
「未婚で子供を出産し,出産当初は子の父親は養育費を支払っていたが,ある日を境に養育費が支払われなくなった」
というご相談をいただくことがございます。
未婚で出産をした場合であっても,子の父親から養育費を支払いやすくする方法,または,養育費を支払わせる方法は存在します。
養育費は子供のための権利ですので,子の父親にはしっかりと養育費を支払って欲しいところです。
それでは,子供の父親に対し養育費を支払ってもらうためにはどのような方法があるのでしょうか。
中野区で無料相談対応の吉口総合法律事務所作成の本コラムでは,未婚で子供を出産した場合に,子の父親に対し養育費を支払わせる方法について解説を行います。
なお,本ページでは養育費の合意ができていない場合の前提知識やまず行うべき方法を解説し,次回以降の記事では,養育費の合意ができているが支払わない場合の対処法について解説していきます。
▼養育費の合意ができているが支払わない場合の対処法はこちらをご参照ください。
※ここでは養育費を支払わない者を子の父親としておりますが,あくまで便宜上の設定にすぎませんのでご了承ください。
養育費の合意ができていない場合における前提知識とまずすべきことと
養育費発生の前提として父親と子供との間に法律上の親子関係が必要になる
まず,未婚であったとしても父親と子供との間に法律上の親子関係があれば,子の父親に対し養育費を請求することは可能です。
逆を言えば,生物学上の親子関係が生じていたとしても,法律上の親子関係が生じなければ養育費は発生しません。
この法律上の親子関係についてですが,法律上の親子関係が生じるためには,父と子の関係であれば,父が子を認知をすることが必要になります。
したがって,認知がなされている場合は,まずは子の父親との間で認知をするようにしましょう。
子の父親が認知をすることを認めている場合は,子の父親に認知届への記入を依頼し役所に届出を行うことになります。
他方で,子の父親の認知が見込めない場合であっても,認知をあきらめる必要はなく強制認知という手続による認知も可能です。
弁護士に依頼をした場合,認知から養育費の合意までベストな方法で解決をすることが可能ですので,お気軽にお問い合わせください。
養育費の合意は書面で行うことが大事
既に述べた通り,法律上の親子関係が生じていれば養育費の請求が可能です。
まず,養育費の具体的な金額は,基本は双方の収入,及び,子の年齢によって決まります。
養育費の金額は,養育費算定表という表がありますので,この表を参考に具体的な養育費がいくらかを計算しましょう。
具体的な金額が把握できた場合は,その内容を書面に残します。
仮に書面で合意内容の記録を残さないと,後に養育費の金額がいくらであるかについて争われてしまうからです。
次に,養育費の金額について相手方と合意をすることができたら,公正証書という書面で残すことをお勧めします。
なぜならば,この公正証書は,強制執行認諾文言という,仮に子の父親が養育費を支払わなかった場合であっても,直ちに強制執行ができる旨の条項を設けることにより,強制執行が直ちにできるからです。
ここで,強制執行とは,相手方が任意に履行をしない場合に回収をする手続です。
例えば,仮に子の父親が養育費を支払わない場合は,子の父親の給料や預金債権,不動産等の財産を差し押さえることによって養育費を回収することができます。
そして,仮に,給料債権を差し押さえた場合は,子の父親の勤務先に養育費を支払っていないことがばれてしまいます。
そのため,子の父親としては,養育費を支払わないとリスクが大きくなるため,公正証書を作成しない場合と比べて養育費を支払う可能性が上がると言えるでしょう。
子の父親が養育費の合意及び書面化に応じなくても解決策は存在する
養育費を定めるに当たっては合意内容を書面化することが大事といいましたが,子の父親が養育費の合意内容の書面化に応じない場合であっても,問題ありません。
その場合,家庭裁判所に対し養育費の調停を申立て,その結果調停が成立すれば調停調書という形で書面化がなされます。
更に,調停調書が存在する場合のメリットとしては,合意内容が書面化されるだけではなく,公正証書と同じく養育費が支払われなかった場合に,強制執行が可能という点もあります。
他方で,デメリットとしては,調停の成立のために時間を要するということや,手続のために法的知識が必要であること及び場合によっては交渉が必要になるということです。
調停の手続についてはご自身で進めることも不可能ではありませんが,経験を有する弁護士に依頼をすることがより確実であると言えます。
養育費の獲得に不安な方は弁護士にご相談ください。
終わりに
以上,まずは本ページでは,未婚で子供を出産したが,子の父親と養育費の合意ができていない場合において,まずどのような手続を行うべきであるかについて解説を行いました。
記事の冒頭でも言及したとおり,養育費は子供のための権利ですので十分にこれが支払われるべきですが,そのためには手続及び法の内容について十分な知識を取得し準備を行う事が必要不可欠になってきます。
子供の養育費を含めた離婚・子供・男女関係については,東京都中野区所在の吉口総合法律事務所では重点分野としてこれを取り扱っております。
子供の養育費に関してご不明な点がありましたら,中野区で無料相談対応の吉口総合法律事務所までお問い合わせください。
不貞相手に対する不貞慰謝料請求に対する最高裁判例の紹介
不貞行為を行った不貞相手に対する損害賠償請求に関して,本日(平成31年2月19日),第三小法廷にて最高裁判決が出ました(以下,本コラムでは,今回の判決を「不貞相手に対する不貞慰謝料に関する最高裁判例」といいます。)。
この判例については,不貞相手に対する不貞慰謝料というある意味では身近な問題ということもあり,ニュースにおいても取り上げられているようです。
それでは,今回の不貞相手に対する不貞慰謝料に関する最高裁判例は,不貞相手に対する不貞慰謝料についてどのようなことを判示したものであり,今後どのような影響があるのでしょうか。
まだ判決が出たばかりであり,判例解説等が出されていないことから暫定的な解説になりますが,中野区で無料相談対応の吉口総合法律事務所作成の本コラムでは,上記不貞相手に対する不貞慰謝料請求に関する判決について弁護士が解説を致します。
今回の不貞相手に対する不貞慰謝料に関する最高裁判例の事案と判示事項
最高裁判例の事案
今回判決がなされた不貞相手に対する不貞慰謝料請求に関する最高裁判例において問題となった事案の概略は以下の通りです。
※最高裁判例の事案のみを参考にしており,原判決の事実関係についてはまだ未確認になります。
- 不倫を行った妻は,不倫相手と平成20年12月頃知り合い,平成21年6月以降不貞行為に及ぶようになった。
- 夫は,平成22年5月頃,妻が不倫を行ったことを知り,妻と不倫相手との不貞は解消された。
- 夫と妻は,平成27年2月に離婚をした。
- 夫は,妻の不倫相手に対し慰謝料請求を行った。
最高裁判例の判示事項
上記事案について,不貞相手に対する不貞慰謝料に関する最高裁判例は,以下のように判示しています。
※太文字や文字の色等を,適宜修正しています。
「夫婦が離婚するに至るまでの経緯は当該夫婦の諸事情に応じて一様ではないが,協議上の離婚と裁判上の離婚のいずれであっても,離婚による婚姻の解消は,本来,当該夫婦の間で決められるべき事柄である。したがって,夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は,これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても,当該夫婦の他方に対し,不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして,直ちに,当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことは無いと解される。第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは,当該第三者が,単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず,当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。以上によれば,夫婦の一方は,他方と不貞行為に及んだ第三者に対して,上記特段の事情が無い限り,離婚に伴う慰謝料を請求することはできないものと解するのが相当である」
不貞相手に対する不貞慰謝料に関する最高裁判例を理解する上での前提知識
まず,不貞行為に基づく損害賠償請求を行うに当たって理解する必要がある事項があります。
それは,
①離婚が成立するに至ったことに対する慰謝料(離婚慰謝料)
②離婚の原因となった個々の行為に対する慰謝料(離婚原因慰謝料)
とそれぞれ種類があることです。
①については,何らかの有責行為によって離婚をするに至ってしまったことに対して発生する慰謝料になります。
他方で,後者の②については,離婚の原因となった不貞行為や暴力行為そのものに対して発生する慰謝料になります。
そして,本件の判例は,第三者に対して,①離婚が成立するに至ったことに対する慰謝料請求ができるか否かが問題となった事案において,この点について主として判断したものになります。
この点について,本件の判例は,不貞相手が離婚をさせたことについて責任を負うのは,不貞行為のみではなく,不貞相手が離婚をさせるのもやむを得ないと評価できる行為を行った等特段の事情がある場合に限定しています。
不貞相手に対する不貞慰謝料に関する最高裁判例に対する今後の影響
詳しくは判例評釈を待つ必要がありますが,本判決は,不貞行為を行った不貞相手に対し,①離婚が成立するに至ったことに対する慰謝料を求めることができる条件を絞ったものにすぎず,②の離婚の原因となった個々の行為に対する慰謝料について新たに判断しているわけではないと考えられます。
したがって,本判決によっても,不貞相手に対し,②離婚の原因となった個々の行為に対する慰謝料を請求することについては,従前どおり可能であると思われます。
この点について,一部のニュースではあたかも不貞相手に対する請求ができないように読み取れるものもありますが,不貞相手への慰謝料請求ができなくなったと判断することは早計でしょう。
ただ,今後不貞相手に対し慰謝料請求を行う場合は,消滅時効に気を付ける必要はあると思います。
原判決の事実関係を確認する必要がありますが,おそらく,本件は消滅時効の関係で,不貞相手に対し,①の離婚が成立するに至ったことに対する慰謝料を請求したものと思われます。
というのも,損害賠償請求を行うためには,損害及び加害者を知ってから3年以内にこれを行う必要があります。
そして,本件では,妻との不貞行為を知ってから3年が経過していたが,離婚をしてからは3年が経過していなかった場合に不貞相手に対し慰謝料請求をしたという事案なのではないでしょうか。
今後,本判例と同様の場面では,消滅時効の関係で,不貞相手に対して不貞行為に基づく損害賠償請求を行うことが制限される傾向になるかもしれません。
終わりに
以上,不貞相手に対する不貞慰謝料に関する平成31年2月19日最高裁判決を紹介しました。
同判決がまだ出たばかりであり,また,その解釈も確定しているわけではないため,今後の判例解説や裁判例の集積が待たれるところです。
中野区で相続無料相談対応の吉口総合法律事務所では,不貞慰謝料請求を行う側,及び,不貞慰謝料の請求をされた側のいずれのご相談もお受けしておりますので,お気軽にお問い合わせください。
婚約破棄をされた場合に損害賠償請求できるのはどのようなケースか
例えば,夫婦間の一方の不貞や暴力等により,他方配偶者が離婚をせざるを得ない状況に至った場合には,他方の配偶者は損害賠償請求を行うことができます。
では,これらの行為が夫婦でなく,婚約者間でなされたとしたら,婚約をした他方当事者は損害賠償請求を行うことができるでしょうか。
また,仮にそのような損害賠償請求が認められるとすれば,損害賠償請求額はどの程度認められるものなのでしょうか。
中野区で無料法律相談対応の吉口総合法律事務所では,次の3点について順に解説を行うことで,この種の紛争における典型的な争点を整理してみたいと思います。
すなわち,
①どのような事情が存在する場合に婚約の成立が認められるか
②婚約の成立が認められるとして,どのような事情が存在する場合に婚約の解消が不当となるか
③婚約破棄が認められるとして,認容されうる損害賠償請求の金額はどのようなものか
という3点について弁護士が解説をしたいと思います。
第1 どのような事情が存在する場合に婚約の成立が認められるか
婚約破棄といえるためには,その前提として婚約が成立していることが必要になります。
ここで,婚約とは,婚姻の予約,つまり,男女の間で将来婚姻することを約することをいいます。
もっとも,婚姻届の提出の有無によって判断できる婚姻とは異なり,婚約には様々なバリエーションがありえます。
そこで,どのような事情があれば婚約の成立が認められるかが問題となります。
法律の規定では,どのような事情があれば婚約が成立するかということは定められていません。
そのため,婚約の成立の有無は個別具体的にきまりますが,
儀礼的行為(結納,婚約指輪の授受等)の有無,交際期間の長短,同棲関係ないし肉体関係の有無,周囲に婚姻を前提とした関係であることを打ち明けていたかどうか,婚姻の準備行為(結婚式場の手配,新居の内覧等)の有無及びその進捗状況
といった事実から婚約の成立を検討することになります。
第2 どのような事情が存在する場合に婚約の解消が不当となるか
仮に婚約が成立していた場合には,婚約破棄による損害賠償請求が認められるかが問題になります。
婚約が破棄された場合であっても,それが正当な理由によるものであれば,損害賠償請求をすることができません。
では,どのような場合に正当な理由がない婚約破棄といえるのでしょうか。
この点についても,個別具体的な事情によって判断されることになりますが,例えば,
婚約中における他の異性との交際や肉体関係の存在,妊娠中絶の存在,暴力等の事情
がある場合は,正当な理由のない婚約破棄と認定されやすいといえるでしょう。
第3 婚約破棄が認められるとして,認容されうる損害賠償請求の金額はどのようなものか
婚約破棄による損害賠償請求が認められるとしても,具体的にいくらの損害賠償請求が認められるのでしょうか。
事案の特徴によりますが,概ね婚約破棄による損害賠償請求としては,25万円~300万円程度の範囲が多いと思われます。
それでは,慰謝料額に大きく影響する事情とは,どのようなものでしょうか。
この点については,慰謝料額を増額する方向に作用する事情としては,ここでも
交際期間の長短,婚約の公表,婚約破棄にあたり暴力・不貞行為・妊娠中絶を伴っていないか,婚約破棄によって婚約者に精神的障害が生じたか否か,及び,婚約破棄当時の婚約者の年齢
等の事情があげられます。
他方で,慰謝料額を減額する方向に働く事情は,
婚約者に対し解決金その他の名目で金員が支払われた事情や,婚約者側にも婚約破棄の原因の一端があること
等を挙げることができます。
第4 具体的な裁判例
婚約破棄の有無が争われた事案において,裁判例では婚約破棄をされた原告が婚約破棄をした被告に対して損害賠償請求をした事案において,以下のように原告の請求を認めています。
①約2年間の交際期間の後(肉体関係も存在した),原告が結婚を前提に新居用不動産を購入し,また,両親や友人に婚約者として互いを紹介済みであった。
このような状況で被告から婚約破棄がなされ,その際に被告の暴力がなされ,その結果原告はうつ状態との診断を受けた事案では,300万円の慰謝料が認定されています(神戸地裁平成14年10月22日判決)。
②原告と被告に約5年間の交際期間がありその際にウェディングフェアに行ったこと,原告が被告の家族に紹介済みであったこと,また,被告が婚姻届に署名・押印をした(提出はしていない)という事情がある中で,被告が原告との婚約中に他の女性と同棲し,婚約破棄後その女性と結婚した事案では,100万円の慰謝料が認定されています。(東京地裁平成15年7月9日判決)。
③約5カ月の交際期間において,被告からプロポーズをされ,その後,原告及び被告の各親族に紹介した上で,婚約の承諾を得た事案において,婚約破棄により原告が妊娠中絶したのみならず,被告は原告が妊娠した子が自身の子であることを争い,DNA鑑定により証明されない限り中絶の同意書を作成しないと主張した事実等から120万円の慰謝料が認定されています(東京地裁平成21年6月22日判決)。
第5 終わりに
以上が婚約不履行による損害賠償請求に関する記事になります。
婚約不履行に基づく損害賠償請求は,婚約の成立自体が個別具体的な事情によって異なってくるので,早期に弁護士に相談することが重要だと言えます。
婚約不履行に基づく損害賠償請求にお悩みの方は,中野区で無料法律相談対応の吉口総合法律事務所までお気軽にご相談ください。
弁護士に離婚問題を依頼するメリットがある具体的事例
このコラムでは,離婚問題で弁護士に相談するメリットがある具体例を示します。
架空の事例ですが,Aさんは,事情があり離婚をすることを決意しました。
しかし,ご自身のみで離婚手続を進めるべきか,弁護士に相談しつつ進めるべきか悩んでいます。
それでは,Aさんがご自身の離婚問題について,弁護士に相談するメリットがあるのはどのような場合でしょうか。
夫婦間で離婚意思が一致しない場合に弁護士に相談するメリットがあります。
第1は,夫婦間で離婚の意思が一致していない時に弁護士に相談をするメリットがあります。
例えば,Aさんは夫と離婚をすることを希望しているが,夫は離婚を希望していない場合,当事者で話し合いを続けても話が平行線になってしまい問題の解決になりません。
このような場合,一方当事者が離婚を希望していなかったとしても,法律上の離婚事由を充たせば離婚が認められることになります。
しかし,離婚事由の有無の判断をするためには,法的知識を要するため,ご自身のケースにおいて離婚ができるか否かを判断することは簡単ではありません。
このような場合において,弁護士に相談することによって,離婚ができるのかそれともできないのか見通しを得ることができます。
そして,仮に離婚ができる見込みであれば,今後どのような交渉を進めるべきであるのかがわかります。逆に,すぐには離婚ができない見込みであっても,今後離婚をするためにはどのような準備をすればよいかということも知ることができます。
したがって,夫婦間で離婚の意思が一致していない時には弁護士に相談をすることをお勧めいたします。
財産分与において争いがある場合に弁護士に相談するメリットがあります。
第2は,離婚に伴う財産分与で争いがある場合に弁護士に相談をするメリットがあります。
例えば,Aさんは夫と共同でマンションを購入したところ,購入代金の4分の1をAさんの親から援助してもらいました(マンションの持分は夫婦で各半分とします。)。
購入代金の残額は,夫が住宅ローンを組みローンの返済を続けた結果,完済しました。
このような事情のもと,Aさんは夫と離婚の合意ができましたが,夫は自分がローンを払っていたのでマンションは自分がもらうと言い張っています。
このような事案では財産分与が問題となります。財産分与とは,夫婦の財産(名義が夫であるのか,妻であることは関係なく,婚姻中に形成した財産であれば夫婦の財産にあたります。)を離婚に伴って夫婦間で分割する手続です。
この財産分与にあたっては,基本的には,夫婦が婚姻中に形成した財産を各半分の割合で分割することになります。
しかし,この夫婦の財産が何であるかということで揉めることがあり,例えば,結婚中に相続した財産がある場合や,親からマンションの頭金の贈与を受けた等の場合には,財産分与が争点になることが比較的多いです。
上記Aさんの事例では,Aさんが夫から適切な額の財産分与を受けるためには,夫の主張が本当に正しいものであるのか,また,Aさんが財産分与として受け取ることができる金額がいくらであるのかを正確に把握する必要があります。
もっとも,正確な財産分与額の計算は複雑であるため,財産分与として受け取ることができる見込み額がいくらであるかを把握することは簡単ではありません。
そこで,このような場合に弁護士に相談・依頼することによって,受け取ることができる財産分与額を把握した上で,証拠関係を踏まえて,財産分与に関し,自己に有利な交渉をすることができます。
このようなメリットがあることから,財産分与において争いがある時には,弁護士に相談をすることをお勧めいたします。
離婚原因が浮気の場合に弁護士に相談するメリットがあります。
第3は,離婚原因が浮気の場合に弁護士に相談をするメリットがあります。
例えば,Aさんは夫が浮気をしていると確信したため,夫と離婚をすることを決意しました。このような場合,Aさんは次にどのようなことをすべきなのでしょうか。
Aさんが,夫が浮気をしていることの確信をもったとしても,夫が浮気をしていることの証拠が無ければ離婚原因である不貞行為があったとは認定されません。
離婚原因である不貞行為の認定がなされないということは,夫が離婚を拒否した場合にすぐに離婚ができず,また,不貞を理由とした慰謝料の請求も難しくなることを意味します。
そのため,浮気をしていると考えた場合には,夫が浮気をしている証拠を集める必要があります。
そして,仮に,Aさんの夫の立場からすれば,Aさんが浮気に気付いていると感じたならば,すぐに証拠隠滅をする可能性があるといえます。
したがって,具体的な事案にもよりますが,Aさんとしては,すぐに夫に対し浮気の事実を問い詰めるのではなく,まずは証拠確保を行うことが適切であるといえます。
ただ,この証拠確保の方法の適否や,その証拠が持つ価値の判断というのは,事実認定の技術が必要になるため,できる限り早い段階で専門家である弁護士に相談をするのが一番です。
したがって,離婚原因が浮気の場合は,できる限り早期に弁護士に相談をすることをお勧めいたします。
終わりに
以上の事例は具体的事例の一部であり,その他の離婚事例であっても弁護士に相談することによって得られるメリットは多数あるといえます。
したがって,離婚について悩まれた場合は,東京都中野区所在の吉口総合法律事務所(最寄り駅は,東京メトロ丸の内線「新中野駅」になります。)までお気軽にご相談ください。
※ お問い合わせフォームはこちらです。