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【相続コラム】親の死後に障害ある子供の財産管理をする方法

2019-09-24
 障害のあるお子様がいるご両親から,「自分自身が元気のうちはいいが,自分が病気になったり死亡した後は,誰がどのように子供の面倒を看ればよいか。」とご質問をいただくことがあります。
 
 お子様に障害等が無い場合であれば,自身の死後に関しては,遺言書の作成をお勧めしております。
 
 他方で,障害のあるお子様がいる場合においては,遺言書の作成ではできることに限度があるといえるでしょう。
 
 それでは,障害のあるお子様がいる場合において,親の死後,障害のあるお子様のためにどのように財産管理を行えばよいのでしょうか。
 
 以下では,親の死後に障害ある子供の財産管理を行なうにはどうすればよいかについて解説を行います。
 

障害のある子供の財産管理のために成年後見を利用する方法

 まず,障害のあるお子様のための財産管理のために成年後見制度を利用する方法が考えられます。
 
 成年後見制度とは,裁判所から選任された成年後見人が,障害のある方のために財産管理を行なう制度のことをいいます。
 

成年後見制度のメリット

 この成年後見制度を利用して,親が,自分自身が死亡した場合等に備えて,障害のある子の財産管理をするために,障害のある子供を被後見人,自身を候補者,または,裁判所が選任した後見人が財産管理をするために後見の申立てをすることが考えられます。
 
 裁判所が選任した後見人が就任した場合は,親が死亡したからといって障害のある子供の財産管理に影響があるわけではありません。
 したがって,親が亡き後であっても障害のある子供の財産管理を継続することができます。
 
 また,親が後見人に就任した場合であっても,万が一親が障害のある子供より先に死亡したり,心身に支障を来したとしても,別の後見人が選任され,当該後見人が子の財産管理を行なうことができるというメリットがあります。
 

成年後見制度のデメリット

 他方で,成年後見制度のデメリットとしては,利用の可否や財産管理につき柔軟性を欠くという点があげられるでしょう。
 
 例えば,民法では後見開始の要件について,
 
民法第7条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については・・・・
 
と規定されており,後見の開始のために精神上の障害を念頭においているため,身体障害の場合は後見制度を使えない場合があります。
 
 また,後見制度を利用するに当たっては,障害のある子の財産管理を行なう後見人を,自分自身,または,信頼できる家族や知人にしたいと考えると思います。
 
 もっとも,後見制度を利用するに当たっては,自分自身や第三者を成年後見人候補者として推薦することはできるものの,被後見人が一定以上の財産を有する場合や親族間に紛争がある場合等一定の条件では,推薦した者が後見人にならないこともあります。
 
 更に,後見人が就任したとしても,被後見人の自宅の不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要となることに加え,財産管理をするに当たっては相続税対策や資産運用等の積極的な処理ができないというデメリットもあります。
 
 このように,法定後見制度については,もちろんメリットもありますが,財産管理方法等,やや柔軟性に欠ける制度であるともいえると思います。
 

任意後見契約を利用した障害のある子の財産管理を行なう他の方法

 なお,自身の指定した者を後見人としたいのであれば,法定後見ではなく後見人候補者との間で任意後見契約を締結する方法があります。
 
 この任意後見契約を利用した他の方法としては,親が遺言書を作成した上で将来障害のある子供に対して財産を承継させると共に,障害のある子供と任意後見人候補者との間で任意後見契約を締結する方法があります。
 
 もっとも,障害のあるお子様が任意後見契約を締結するためには,お子様に意思能力が必要になりますので,仮に障害のあるお子様に意思能力が無い場合は,任意後見契約を締結することは通常難しくなります。
 

家族信託を利用して障害のある子供の財産管理を行なう方法

 次に,信託を利用して障害のある子供のために財産を信託するという方法があります。

 信託とは,大まかに言って,財産管理を依頼する委託者,財産管理を行なう受託者,財産管理の利益を受ける受益者が登場する制度になります。

 例えば,親が障害のある子供のために信頼できる親族に財産管理を委ねた場合,親が委託者,信頼できる親族が受託者,障害のある子供が受益者ということになります。

家族信託制度を利用することのメリット

 この信託のメリットとしては,将来財産管理を行なう者を指定できると共に,遺言書では難しい財産移転の順位付けもできるという点があります。
 
 例えば,妻及び子供2名がいる場合において,次男に障害があるとします。
 この場合において,長男を受託者として財産を取得させた上で,受益者を妻及び次男とし,妻が生きている間は妻及び次男のために財産を利用し,妻が亡き後は次男のために財産を使用するという設定が信託では可能です。
 
 その上で,妻及び次男が亡くなった場合には,最終的に長男が財産を取得するということも可能です。
 
 他の制度とは異なり,信託ではこのような柔軟な財産移転ということが可能になります。
 
 また,受託者に財産管理を委託する際には,受託者に財産を移転する必要がありますが,例えば受託者に多数の借金が存在したとしても,受託者の債権者がこれらの財産を差し押さえることはできないため(信託の倒産隔離機能),安心して財産を移転することができます。
 

家族信託制度を利用することのデメリット

 他方で,家族信託にもデメリットがあります。
 
 まず,当然のことながら,受託者に財産管理をしなければならない義務が生じるため,受託者にこのような負担が生じます。
 受託者の業務の中には税務申告等も含まれるため,これらの事務を行うことは負担があると言わざるを得ないでしょう。
 
 また,信託制度は,今まで多く使われていたとはいえないことから弁護士等の専門家が少ないことに加え,金融機関の対応もまだ不慣れということがいえます。
 
 もっとも,前者の受託者の負担については,任意後見契約等の場合であっても当然発生するものですし,後者の専門家が少ないという点については,信託を多く扱う弁護士等に相談をすれば解消ができることなのでさほど気にする必要はないかもしれません。
 

終わりに

 以上,親の死後に障害ある子供の財産管理をする方法について解説を行いました。

 通常の遺言書の作成時もそうですが,ご自身に元気がある時にはなかなか将来のための措置を採ることに消極的になってしまいます。

 もっとも,これらの将来のための措置は早く行うことにデメリットは無いといえますので,思いついたときに行動されることをお勧めしています。

 東京都中野区所在の吉口総合法律事務所では,今回ご紹介した親族に障害がある子がいる場合に限らず,信託,遺言書の作成,後見,任意後見を始めとした相続・将来の財産承継に関する知識・ノウハウを多数有しています。

 本記事をご覧になり,もしご不明な点がございましたら,東京都中野区所在の吉口総合法律事務所までお気軽にご相談ください。

 

【相続コラム】知らないうちに(勝手に)養子縁組がされた場合にどのように争えばよいか

2019-06-13

「親族が亡くなったので,遺産分割をするために戸籍を調べたら知らないうちに養子縁組がなされていた。」

このような事態が生じることは珍しくなく,相続のご相談に関連して弊所にご相談にいらっしゃる方も少なくありません。

それでは,このように知らないうち(勝手)に養子縁組がなされた場合,相続にどのように影響があるのでしょうか。

また,このように知らないうちに養子縁組がなされそれが納得できない場合,どのように争っていけばよいのでしょうか。

以下では,知らないうちに養子縁組がなされる背景や,養子縁組の効力の争い方について解説を行います。

相続対策のために養子縁組が利用される背景

養子縁組を行うことによって,養親と養子との間に法律上の親子関係が生じます。

そして,法律上の親子関係が生じると,以下のような効果が生じるため,相続にあたり養子縁組が利用されることがあります。

養子縁組によって法定相続人となるべき人が変わる

相続法では,配偶者の他に相続人となる親族の順番が決められています。

配偶者は必ず相続人になりますが,それ以外には

①子供

②親

③兄弟

の順番でこれらの者が相続人になります。

配偶者がいない場合は,これらの者のみが相続人になります。

例えば,独身で子供がおらず,また親がすでに亡くなっていた被相続人の場合は,被相続人の兄弟が相続人になります。

しかし,例えば上記被相続人と第三者が養子縁組をした場合,当該第三者は当該配偶者の子供になるため,被相続人の兄弟は相続人ではなくなります。

したがって,当該第三者が遺産をすべて取得することになります。

養子縁組によって法定相続割合が変わる

例えば,被相続人の配偶者が死亡して,子供が三人いる場合,子供は各3分の1の割合で相続分を有することになります。

しかし,例えば,被相続人が長男の子供(被相続人の孫)と養子縁組をした場合,被相続人には子が4人いることになります。

したがって,養子縁組をすることによって,長男とその子供は各4分の1(長男側は合計2分の1),その他の被相続人の子は各4分の1のみ相続できることになります。

養子縁組によって遺留分割合が変わる

養子縁組をすることによって法定相続割合が変わることは既に述べた通りです。

そして,養子縁組をした場合は遺留分割合も変わることもあります。

遺留分割合は,総体的遺留分に法定相続割合を乗じて算出されます。

例えば,子供が2人いる場合は,各子どもの遺留分割合は,遺産の4分の1(総体的遺留分割合×法定相続割合)になります。

このように,法定相続割合と遺留分が関連するため,法定相続割合が変わる結果,遺留分割合も変わってくるのです。

例えば,子供2人の相続の場合において,被相続人が養子縁組を行った場合,子供が3人になるので,各相続人の遺留分割合は各6分の1になります。

上記の通り,養子縁組によって遺留分割合を減らすことができるため,遺留分対策のために養子縁組を利用することがあります。

養子縁組によって相続税の基礎控除が変わる

相続税には基礎控除というものがあり,基礎控除の範囲内であれば相続税は発生しません。

基礎控除額は,3000万円+相続人の数×600万円になります。

また,生命保険についても非課税となる限度額が

500万円×相続人の数と決まっています。

養子縁組がなされた場合,法定相続人の数が増えることになりますので,この基礎控除額や非課税限度額が増えることになります。

但し,相続税法上,養子の数は,実子がいる場合は1名まで,実子がいない場合は2名までが決められていますので,この点に注意が必要です。

知らない間(勝手)に出された養子縁組の効力を争うためにはどうしたらよいか

知らない間(勝手)に養子縁組がなされる背景は以上の通りですが,それでは知らない間に出された養子縁組の効力を争うためにはどのようにすればよいのでしょうか。

まずは,その前提として,養子縁組が無効になるのはどのような場合でしょうか。

養子縁組が無効になるのはどのような場合か

民法では,養子縁組が無効になる場合について規定しています。民法802条によれば以下の通りです。

民法第802条

縁組は,次に掲げる場合に限り,無効とする。

一 人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき。

二 当事者が縁組の届出をしないとき。ただし,その届出が第789条において準用する第739条2項に定める方式を欠くだけであるときは,縁組は,そのためにその効力を妨げられない。

つまり,当事者間に養子縁組をする意思が無い場合,または,養子縁組の届出をする意思が無い場合に養子縁組が無効になります。

例えば,養子縁組をするつもりが無いのに勝手に出されてしまう場合や,養子縁組をする意思はあるものの,まだ届出をするつもりはなかったのに勝手に出されてしまう場合がこれらに該当します。

なお,勝手に養親組届が提出されるのかと疑問に思われる方もいらっしゃると思いますが,勝手に養子縁組届を出すことはありえます。

なぜならば,戸籍の窓口ではその養子縁組が真意に沿ってなされたかを審査することはできないからです。

養子縁組を争うためにはどのような手続をとるべきか

それでは,縁組意思または届出意思が欠けていることを理由に養子縁組を争う場合,どのような手続をとるのでしょうか。

養子縁組の効力を争う場合は,家庭裁判所に対し,調停の申立て,または,人事訴訟を提起する必要があります。

この調停と訴訟の関係ですが,家事事件手続法では,調停前置と呼ばれる訴訟よりも先に調停を行わないとならないという仕組みがあるので,人事訴訟に先立って調停を行わなければいけません。

もっとも,養親または養子が死亡している場合は,調停後になされる合意に相当する審判ができないため(家事事件手続法277条第1項),調停を行う実益がありません。

そのため,養親又は養子が死亡している場合は,調停の申立てをせずに訴訟提起を行うことになります。

養子縁組無効確認裁判手続後の流れ及び注意点

家庭裁判所に対し訴訟提起を行った後,当事者間で,養子縁組が無効であったか否かについて争っていくことになります。

この場合の注意点としては,離婚等の裁判であれば和解が可能になりますが,養子縁組の無効を前提とする場合,裁判を通じた和解による解決ができないという点です。

訴訟手続をするにあたっては,上記の点を踏まえて手続を進めていく必要があります。

養子縁組の効力を争うための証拠収集の方法

最後に,養子縁組の無効を争っていくためには,どのような証拠を収集すべきでしょうか。

この点について,まずは,戸籍届書の記載事項証明書を取得する必要があります。戸籍謄本とは異なり,記載事項証明書には養親の署名や押印欄がありますので,まずは資料を取り寄せて,本人の署名・押印であるかを確認します。

その上で,養親のカルテ,介護記録,介護認定資料等の医療情報を収集します。カルテ等を確認した上で,養親が養子縁組の内容を理解できる状態であったかという点の分析を行います。

更に,養親と養子の関係がわかる資料を取得します。養子縁組を行うにあたっては,養親と養子の関係が重要になりますので,当事者の関係の親疎も確認しなければいけません。

これらの資料を基に,養親縁組の効力を争っていくことになります。

終わりに

以上,知らない間(勝手)に,養子縁組がなされた場合の対処方法について解説を行いました。

養子縁組の無効を争うケースにおいては,どのような手続をとるかという点や,縁組の無効を争うためのノウハウが重要になってきます。

東京都中野区所在の吉口総合法律事務所では,養子縁組の無効を含む相続分野を重点分野としております。

養子縁組の効力についてご不明点等ございましたら吉口総合法律事務所までお気軽にご連絡ください。

【相続コラム】遺産である預金が無断で引き出された(使い込まれた)場合の対処法

2019-02-03

弊所では相続に関するご相談を多数受けておりますが,その中でもご相談内容として多いものは,”遺産である預金の無断引き出し・使い込み”の問題です。

被相続人である親や兄弟が亡くなったため,預金残高を確認したところ想定以上に預金が少なかったため,「遺産である預金が引き出されたのではないか・・・?」と考えるに至ることが多いようです。

今回のコラムでは,遺産である預金が無断で引き出された(使い込まれた)場合において,遺産である預金を使い込まれた相続人は使い込んだ者に対して返還請求をすることができるか,そして,返還請求をするためにはどのような準備をすればよいか等についてまとめました。

引き出された預金の返還請求が認められるか否かの判断要素

まず,前提として,被相続人である親や兄弟の遺産である預金が多数引き出されている場合において,他の相続人は遺産である預金を引き出した者に対して返還請求をすることができるのでしょうか。

この点についての回答は,「遺産である預金が無断で引き出された(使い込まれた)場合は,他の相続人は引き出したものに対し返還請求ができる。」というものになります。

民法上,不当利得返還請求権及び不法行為に基づく損害賠償請求権という権利が存在するため,相続人は同請求権に基づいて,遺産である預金を無断で引き出した者に対し,無断で引き出された(使い込まれた)預金の返還を求めることができます。

それでは,どのような事情が存在すれば,他の相続人は無断で引き出された(使い込まれた)預金の返還請求を行うことができるのでしょうか。

この点については,以下の通りになります。

被相続人である親や兄弟死亡における預金の使い込み(使い込み)について

遺産である預金の無断引き出し・使い込みは,死亡前になされるパターン死亡後になされるパターンが存在します。

死亡前における引出が,無断引き出し・使い込みにあたるというためには,「預金の引き出しが,被相続人である親や兄弟の意思に反するものである」と言えなければいけません。

そして,これは,遺産である預金を引き出された側が主張・立証する必要があります。つまり,仮に遺産である預金の引き出しが,被相続人である親や兄弟の意思に反することを立証できなければ,いかに疑わしい事情が存在したとしても,遺産である預金を引き出された(使い込まれた)と主張する側の返還請求が認められないことになります。

ただ,通常は被相続人である親や兄弟の意思が明確にわかる資料は存在しないことが多いです。

そのため,預金の引出頻度や,引き出された金額・時期,被相続人と引き出した者との関係,被相続人である親や兄弟の当時の身体状態・認知状態,被相続人の生活状況,相手方の使途の説明内容等の要素から,被相続人である親や兄弟の意思を推認していくことになります。

例えば,父親が寝たきりの重度の認知症の状態であり,施設に入所していた中,遺産である預金から多額の金銭が引き出された場合,お父様は当該出金を認識できず,また,通常高額な金銭を支出する必要性が乏しいため,「被相続人である親や兄弟の意思に反していた」と認定される可能性が高いと言えるでしょう。

また,例えば,母親が死亡する直前に,遺産である預金から多額の金銭が引き出されていた場合,このような場合もお母様が金銭を必要とする事情は通常ないことから,「被相続人である親や兄弟の意思に反していた」と認定される可能性が高いと言えるでしょう。

上記のような事例であれば比較的判断がつきやすいですが,判断が難しい事案は多数ありますので,早期に弁護士にご相談をいただけますと今後の見通しを説明しやすくなります。

被相続人である親や兄弟死亡における預金の使い込み(使い込み)について

上記とは異なり,遺産である預金の無断引き出し・使い込みが死亡後になされるパターンも存在します。

このようなケースでは,既に被相続人である親や兄弟が亡くなっていることから,預金の無断引き出し・使い込みにあたるといえるためには,「預金の引き出しが相続人の意思に反するものである」と言えなければなりません。

この場合は,死亡前の引き出しとは異なり,被相続人ではなく,相続人の意思に反する引出か否かが基準になりますので争い方の構成が変わることになります。

遺産である預金が,無断で引き出されているか(使い込まれているか)否かを調べる(立証する)方法

既に述べた通り,遺産である預金が引き出された場合において,預金を引きだした者に対する返還請求が認められるためには,遺産である預金を引き出された側が,無断引き出し・使い込みにあたることを主張・立証する必要があります。

それでは,預金の無断引き出し・使い込みにあたると立証するためには,どのような資料が必要になるのでしょうか。

遺産である預金の使い込み(無断引き出し)額に関する資料について

まずは,前提として,引き出された預金額がいくらであるかを把握・立証する必要があります。

この点を立証するためには,預金通帳が残っているのであれば,預金通帳が資料になります。

また,預金通帳が残っていない場合もありますが,そのような場合であっても,相続人であれば,金融機関に対して取引履歴の照会を行うことができます。

金融機関にもよりますが,被相続人が死亡したことがわかる戸籍謄本や被相続人との関係がわかる戸籍を用意すれば,概ね10年分の預金の取引履歴を出してくれることが多いです。

被相続人が保有していた預金の口座番号等がわからない場合もありますが,その場合であっても金融機関に確認をするとデータが残っている範囲で預金口座の有無を教えてくれます。

なお,金融機関によっては,他の相続人の同意が無いこと等を理由として預金取引履歴の開示を拒否することが稀にありますが,以下の平成21年1月22日最高裁判決の通り,基本的には金融機関は取引履歴の開示を拒否することはできません。

融機関は,預金契約に基づき,預金者の求めに応じて預金口座の取引経過を開示すべき義務を負うと解するのが相当である。そして,預金者が死亡した場合,その共同相続人の一人は,預金債権の一部を相続により取得するにとどまるが,これとは別に,共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき,被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができる(同法264条,252条ただし書)というべきであり,他の共同相続人全員の同意がないことは上記権利行使を妨げる理由となるものではない。」

弊所では取引履歴の取得からご依頼をいただくことも可能ですので,もし資料を取得できないとお悩みの場合はお気軽にお問い合わせください。

被相続人の身体状態・認知状態に関する資料について

次に,遺産である預金が無断で引き出された(使い込まれた)時点において,被相続人である親や兄弟の身体状態・認知状態が悪ければ悪いほど,遺産である預金の引き出しが被相続人の意思に反していたといいやすくなります。

というのも,一般的には,被相続人が元気な状態であれば,被相続人本人が預金を引き出したと言いやすくなり,また,被相続人本人が引き出した預金を使用していたと言える可能性が高まるからです。

したがって,遺産である預金を無断で引き出した(使い込んだ)者に対して返還請求をするためには,被相続人の状態を立証する資料を取得することが重要になってきます。

この被相続人の状態を立証するための資料としては,医師のカルテや看護記録,介護施設の日報,介護認定の際に作成される主治医意見書や認定調査票等があげられます。

これらの資料は,病院や介護施設,介護認定を受けていた市区町村等から取得できますが,病院等によっては開示を拒否する場合があります。

このような場合であっても,弁護士が介入することによって資料が開示されることもありますので,お困りの際はお問い合わせください。

遺産である預金の無断引き出し・使い込みが疑われる側が良く行う反論と対策

遺産である預金の無断引き出し・使い込みに関する資料を取得・確認した結果,遺産である預金を使い込んだと疑われるのであれば,不当利得返還請求権または不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき,無断で引き出された(使い込まれた)金銭の返還請求を行うことになります。

その場合であっても,相手方からどのような反論がなされるかを予想したうえで対策を事前に練っておくことが有益です。

それでは,遺産である預金の無断引き出し・使い込みが疑われる相手方からは通常どのような反論がなされるのでしょうか。

被相続人死亡前の無断引き出し・使い込みに対する反論

【被相続人本人が預金を引き出したものであるという反論】

まず,相手方から,「被相続人本人が預金の引き出しを行ったのであって,自分は預金の引き出しを行っていない」という反論が想定されます。

このような反論がなされた場合,預金の引出場所や被相続人の状態から当該反論が不合理であることを主張・立証することが考えられます。

例えば,被相続人と無断引き出しが疑われる相続人の自宅が遠く離れているにもかかわらず,預金の引出場所の大半が,当該相続人の自宅の支店であった場合,当該相続人の主張は不合理であると言いやすくなるでしょう。

また,被相続人の足の状態が悪かった,認知症で引き出される状態ではなかった等の事情があった場合も,被相続人本人が預金を引き出していないことの一つの根拠になると言えます。

なお,預金が引き出された支店は,取引履歴に記載されている番号等から判明することがよくありますので,取引履歴を取得した場合は事前に確認をするとよいでしょう。

【引き出した預金は被相続人から贈与を受けたものであるという反論】

次に,「預金を引き出したのは被相続人本人ではなく自分であるが,引き出した預金は被相続人から贈与を受けた」という反論がありえます。

このような反論がなされた場合,被相続人の状態,贈与がなされた時点における被相続人と引出を行った相続人との関係や,贈与に関する経緯,引出しの態様・金額・頻度,贈与を裏付ける資料の有無から,贈与が存在しなかったことを主張立証することが考えられます。

例えば,被相続人と引出を行った相続人との関係が悪化しており,贈与がなされるような状況ではなかったにもかかわらず,高額な金銭が引き出されていた場合,贈与が不自然であり贈与が不合理であると言いやすくなります。

また,例えば,贈与がなされた時期において,被相続人の認知症が重く,贈与について理解ができるような状態ではなかった場合も,贈与が不自然・不合理であると判断される可能性が高いと言えます。

【引き出した預金は被相続人の生活費として使用したものであるという反論】

更に,「引き出した預金は,被相続人本人の生活費のために支出した。」という反論がありえます。

このような反論がなされた場合も,引き出された金額や頻度,被相続人の状態や,生活状態,使い込みが疑われる者が預金を管理するようになった時期における引出金と従前の引出金とから,生活費として過剰な支出であることを主張することが考えられます。

例えば,従前,被相続人の生活費が20万円程度であったにもかかわらず,特段の事由が存在しないのに,使い込みが疑われる者が管理をしてから毎月100万円に近い金額が引き出されている等の事情がある場合,生活費として支出した旨の主張は不自然・不合理であると言いやすくなります。

被相続人死亡後の無断引き出しに対する反論

被相続人死亡後の引出に対しては,「葬儀費用として支出した」旨の反論がよくなされます。

もっとも,葬儀費用は喪主が負担すべきであると考えることが比較的多いといえるため(名古屋高裁平成24年3月29日判決),引き出した者が喪主であった場合,自ら負担すべき金銭を遺産から充てたことになります。

したがって,遺産である預金を引き出した者からこのような反論がなされた場合は,他の相続人が葬儀費用として使用することを承諾していたという事情が無い限り,預金を引き出した者の反論は認められない可能性が高いと言えます。

被相続人死亡前後に共通する反論

その他,被相続人死亡前後に共通する反論としては,

①「消滅時効が成立している」

②「遺産分割協議書を作成しているためもはや預金の引き出しの問題は解決済みである」

というものがあげられます。

まず,①の「消滅時効が成立している」という反論ですが,預金の無断引き出し・使い込みに対する返還請求の時効は,不当利得返還請求権に基づく請求の場合は,遺産である預金から引き出されてから10年(改正後の民法では,遺産である預金が引き出されたことを知った時から5年または権利を行使できるときから10年)になります。

他方で,不法行為に基づく損害賠償請求権に基づいて請求を行う場合は,遺産である預金が引き出されたことを知った時から3年または引出から20年(改正後の民法も基本的には同様になります。)になります。

不当利得返還請求権に消滅時効が成立していたとしても,不法行為に基づく損害賠償請求権に消滅時効が成立していなければ返還請求をすることができますので,時効について心配する必要はあまりないことが多いです。

もっとも,10年以上前の引出の場合は,時効にかからないとしても当時の資料が残っていないことがよくあります。したがって,別途立証の問題が残るということに留意する必要があるでしょう。

次に,②の「遺産分割協議書を作成しているためもはや預金の無断引き出しの問題は解決済みである」という反論ですが,遺産分割協議書において,いわゆる「清算条項」と呼ばれる条項が存在しない場合は,遺産分割は今ある遺産を分ける手続であって,預金の無断引き出し(使い込み)の問題とは別であるため,あ熊で遺産分割協議書と預金の無断引き出しは別問題と言えます。

したがって,当該反論が認められない場合が多いと言えそうです。

遺産である預金の無断引き出し(使い込み)がなされた場合の具体的な解決手続

これまで遺産である預金の無断引き出し(使い込み)がなされた場合にどのような資料を集めるべきか,また,どのような反論がなされるかを解説致しました。

それでは,資料収集の結果,遺産である預金の無断引き出し(使い込み)が強く疑われる場合,どのような手続を経て解決まで進むことになるのでしょうか。

まず,預金を引き出した相手方が相続人であり,預金の無断引き出し(使い込み)を認めた場合は,遺産分割協議の中でまとめて解決をすることも可能です。

もっとも,預金を引き出した相手方が無断引き出しをしたことを認めるということは多くありません。多くの場合は,預金を引き出した者は,上で述べたような反論を行い返還をすることを拒みます。

その場合の解決方法ですが,民事訴訟を提起して不当利得返還請求権または不法行為に基づく損害賠償請求権に基づいて返還請求を行うことがオーソドックスな手続と言えるでしょう。

民事訴訟を提起した場合,裁判期日が複数回開かれることになります。その後,双方で主張・立証の応酬を行い,その中で折り合いがつけば,和解による解決になることもあります。折り合いがつかない場合は判決ということになります。

終わりに

以上,遺産である預金の無断引き出し(使い込み)がなされた場合の対処法について解説を致しました。

遺産である預金の無断引き出し(使い込み)がなされた場合は,資料の収集・確認,相手方の反論の検討・対策等,手続の選択等,専門的知識が必要になります。

このような問題を解決するためには,預金の無断引き出し(使い込み)の問題を多く扱っている弁護士に依頼をすることがベストであると言えます。

東京都中野区に所在する吉口総合法律事務所では,預金の無断引き出し(使い込み)の問題を多数扱った経験があり,多数のノウハウや解決事例を有しています。

預金の無断引き出し(使い込み)に関し,ご相談がございましたら,弊所までお気軽にお問い合わせください。

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