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【企業法務・労働コラム】新たに外国人を雇用するために知っておく知識(外国人技能実習制度・特定技能制度について)

2019-03-28

日本の労働者人口減少による外国人労働力の確保が問題となっています。

このような課題から,入管法が改正され,平成31年4月より改正入管法が施行されます。そこでは新たな在留資格として「特定技能」が設けられています。

この「特定技能」とは別に,平成29年11月に施行された技能実習法に基づき外国人技能実習制度が存在するのですが,上記「特定技能」との違いはどのような点にあるのでしょうか。

本コラムでは,上記制度の違いについて,東京都中野区所在の企業法務を扱う弁護士が解説を行いたいと思います。

なお,特定技能制度については,まだ改正入管法が未施行であるため,法務省で交付されている資料に基づく解説になることにご留意ください。

外国人技能実習制度と特定技能制度の目的の違い

外国人技能実習制度の目的

外国人技能実習制度とは,「人材育成を通じた開発途上地域等への技能,技術又は知識の移転による国際協力をすること」(外国人技能実習法第1条)を目的とする制度になります。

要は,外国人技能実習制度は,外国人に対する技能移転を目的とする制度になります。

この目的からもわかる通り,外国人技能実習制度は労働力の確保を目的とするものはありません。

むしろ,外国人技能実習法では,技能実習が,労働力の需給の調整の手段として行われてはならないことが定められています(法第3条2項)。

「特定技能」制度の目的

これに対し,特定技能制度の目的は,正に外国人労働者の確保による労働力不足の解消のために制定されたものになります。

したがって,外国人技能実習法と特定技能制度では,労働力の確保を目的とするか否かという点で目的が大きく異なると言えます。

このような目的の違いから,外国人技能実習制度では転籍・転職等が原則として認められていないのに対し,「特定技能」では,転籍・転職等が可能になっています。

外国人技能実習制度と特定技能制度のそれぞれの仕組み

外国人技能実習制度の仕組みについて

外国人技能実習制度においては,

①企業単独型

②監理団体型

の2種類があります。①の企業単独型については,例えば,外国企業と親子関係にある会社間において,当該会社に対し技能移転を行うため外国人労働者の受け入れを行う場合がこれにあたります。

もっとも,外国企業と親子関係にあるという例からもわかる通り,この類型はある程度の規模の会社であることが想定されます。

そのため,外国人技能実習においては,次の監理団体型を利用する場合の方が多いのではないでしょうか。

②の監理団体型ですが,これは,実際に外国人の受け入れを行う「実習実施者」の他に,「監理団体」という,外国人技能実施制度が目的に沿って行われているかを確認する団体が存在する類型になります。

外国人技能実習において,多くはこの類型を利用するのではないでしょうか。

この類型では,外国人労働者の受け入れに当たり,概ね以下の流れで手続が進んでいきます。

①監理団体による指導・助言の下実習実施者が実習計画を提出した後,

②外国人技能実習機構が実習計画の審査・認定を行った後,実習実施者に認定通知書を交付し,

③監理団体が認定通知書を添付して入管に対し在留資格認定の申請を行い

④入管から監理団体が在留資格認定書の交付を受け,技能実習生が送付を受けた当該認定書と査証を取得し入国する。

⑤入国後は,技能実習計画に従って技能実習を行う。

外国人技能実習制度の場合,概ね上記流れで手続が進んでいくことになります。

特定技能制度の仕組みについて

新たに創設された特定技能制度の場合,

①特定技能1号

②特定技能2号

という在留資格がそれぞれ設けられています。

前者の特定技能1号というのは,介護やビルクリーニング,建設等の14分野の産業について,外国人がこれらの就労を目的として日本に在留することができる資格になります。

在留期間としては,最長5年になり,在留資格の取得に当たり生活や業務に必要な日本語能力が必要になります。

後者の特定技能2号というのは,同1号を発展させたものであり,同1号よりも更に熟練した技能を有する者が取得できる在留資格になります。

特定技能制度の場合は,外国人の他,外国人の雇用先となる「受入れ機関」,「受入れ機関」が行う外国人の支援計画に基づく支援の援助を行う「登録支援機関」が存在します。

そして,「受入れ機関」である企業が外国人労働者の受け入れを行うに当たっては,外国から受け入れるのか,国内から受け入れるのかにもよって多少異なりますが,

①当該外国人との特定技能雇用契約の締結

②(受入れ機関である企業が外国人の支援ができない場合)登録支援機関との委託契約の締結

③受入れ機関による特定技能外国人支援計画の作成

④在留資格認定・在留資格変更許可の申請

という流れで進んでいくことになります。

外国人技能実習制度及び特定技能制度の注意点

外国人技能実習制度の注意点について

外国人技能実習制度のうち,特に利用されるのが監理団体型であるため,監理団体型における注意について論述します。

【監理団体における注意点】

監理団体が監理事業を行うためには,主務官庁の許可が必要であり,許可のための要件がそれぞれ定められています。

例えば,許可要件の一つとして「監理団体の業務の実施の基準に従って事業を適正に行うに足りる能力を有すること」が必要です。

上記要件を具体化するために,外国人技能実習規則では監理業務の実施の基準を設けているのですが,監理団体を運営するためには,前期基準を守らなければなりません。

このような基準を守らない場合,許可の取消等がなされてしまうため,注意が必要です。

【実習実施者の注意点】

外国人技能実習制度において,技能実習生との間で雇用契約を締結するのは,実習実施者になります。

したがって,技能実習生との間の雇用契約の締結においては,労働基準法等労働法規に従う必要があります。

また,実習実施者は,技能実習計画に従った技能実習を行う必要があります。

技能実習計画に従わない技能実習を行った場合,技能実習計画が取り消され,技能実習ができなくなってしまうこともありますので,技能実習計画に従った技能実習を行うよう注意しましょう。

特定技能制度の注意点について

特定技能制度を利用して外国人と雇用契約を締結しますが,この雇用契約は,外国人であるからと言って報酬額を不当に安くすることはできません。

雇用契約についても労働基準法の適用がありますので,これらの法令を遵守することが必要になります。

終わりに

以上,外国人技能実習制度及び特定技能制度について解説を致しました。

人手不足のために外国人を労働者として雇い入れる場合は,まずは制度を理解するとともに,これらに対する法規制について理解を深める必要があります。

東京都中野区所在の吉口総合法律事務所では,外国人技能実習制度や特定技能制度を含めた労働問題・企業法務問題についてご相談を随時受け付けております。

外国人技能実習制度や特定技能制度についてご不明な点がおありの方は,当ホームページのお問い合わせフォームまたは事務所までお気軽にお電話ください。

 

【労働コラム】従業員から残業代請求をされた場合はどうしたらよいか

2018-10-25

突然従業員から残業代請求を受けた場合,企業側としてはどのような対応を行えばよいでしょうか。

昨今,企業側が従業員から残業代請求をされることが珍しくなく,弊所でも経営者様から多くいただくご相談の一つが残業代請求の対応になっております。

従業員が行う残業代の請求自体は,法律上従業員側に認められた権利になります。そのため,それが法律に基づく正しい計算方法であるのならば,企業側としてもこれを支払わなければなりません。

他方で,従業員から残業代請求を受けたが,その残業代請求が過剰な請求であることもあります。

したがって,従業員から残業代請求を受けた場合は,従業員が請求する残業代が適切なものであるのか,また,金額は妥当であるかを把握する必要があります。

以下では,残業代請求がなされた場合に,企業側がどのような点を確認し,どのような反論をする必要があるかについて解説をしたいと思います。

第1 時効にかかっている部分についても残業代請求がされていないかを確認する

残業代請求には2年の消滅時効が存在し,2年の消滅時効を超えている場合は,超えている部分について残業代請求ができなくなります。

したがって,残業代請求がなされた場合には,消滅時効にかかっていないかを確認する必要があります。

仮に,2年を超えた残業代の請求がなされている場合,企業側は従業員に対し,消滅時効が成立している旨反論することを検討しましょう。

なお,残業代請求が2年で消滅時効が成立するとしても,消滅時効の期間が満了することによって自然に時効となるわけではありません。

企業側は時効が成立している旨の意思表示をして初めて時効が成立するため,この点に注意が必要です。

そして,従業員に対して消滅時効の主張をするときは,記録に残るように,書面等で消滅時効の意思表示を行うのが良いでしょう。

また,消滅時効が完成したとしても,時効の意思表示をする前に消滅時効にかかっている部分の支払義務を認めてしまうと,時効の主張が認められなくなってしまいます。したがって,この点についても注意が必要です。

第2 従業員側が主張する労働時間の計算が正しいかを確認する

従業員から残業代請求がなされた場合は,従業員側が主張する労働時間が正しいものであるかを把握する必要があります。

例えば,従業員側から始業・終業時刻が具体的に示され,それを基に残業代の請求がなされているとします。しかし,会社は残業を行うことを禁止しており,当該従業員が残業禁止の指示に反してされていたというような場合,残業時間が労働時間に含まれるかということが問題になります。

企業から残業が禁止されていたという事情のみでは,当然に残業代が発生しないものではないですが,従業員側の労務内容等から,労働時間には該当しないと判断される可能性もあります。

したがって,個別具体的な事情にもよりますが,残業が禁止されている状態で労働をしていた場合は,その労働時間は労働時間に該当しない旨反論することが考えられます。

第3 固定残業代として支払済みでないか,適用除外に該当しないかを確認する

従業員から残業代請求がされた場合,従業員に対して,既に固定残業代手当を支払っていないか確認しましょう。

従業員に給与を支給するにあたって定額の時間外手当を支給している場合があります。このような場合において,一定の要件を充たす場合は,請求をされている残業代額から控除することができます。

ただ,定額の時間外手当が支払われているからといって当然に請求されている残業代から当該手当を控除できるわけではありません。この点については,要件がありますので,弁護士に相談をされることをお勧めします。

また,当該従業員が,管理監督者,または,労基法上の適用除外に該当する宿直勤務を行っていないかを確認しましょう。

当該従業員が労基法上の管理監督者に当たる場合や労基法上の要件を充たす宿直勤務を行っている場合は,残業代が発生しないことになります。

したがって,この点について確認することも必要です。

ただ,管理監督者の主張は簡単には認められるものではないため,労働時間や賃金額等を把握したうえで,こちらについても弁護士に相談されることをお勧めいたします。

第4 終わりに

以上,従業員から残業代請求をされた場合に,企業側としてはどのような対応を行えばよいかについて解説を行いました。

対応方法の具体例は上記の通りですが,上記反論が法律上有効適切かは個別具体的な事案によって異なるため,どのような反論が有効であるかの判断は容易ではありません。

弁護士にご相談・ご依頼をいただけた場合,上記点を踏まえて企業側の代理人として従業員と交渉することが可能です。それによって,企業側は本来の業務に集中ができるとともに,請求額の減額の交渉をすることもできます。

従業員から残業代請求をされた場合は,早期に対応をすることが企業側としても得策です。したがって,従業員から残業代請求をされた場合は,お気軽に弊所までお問い合わせください。

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