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不貞相手に対する不貞慰謝料請求に対する最高裁判例の紹介

2019-02-20

不貞行為を行った不貞相手に対する損害賠償請求に関して,本日(平成31年2月19日),第三小法廷にて最高裁判決が出ました(以下,本コラムでは,今回の判決を「不貞相手に対する不貞慰謝料に関する最高裁判例」といいます。)。

この判例については,不貞相手に対する不貞慰謝料というある意味では身近な問題ということもあり,ニュースにおいても取り上げられているようです。

それでは,今回の不貞相手に対する不貞慰謝料に関する最高裁判例は,不貞相手に対する不貞慰謝料についてどのようなことを判示したものであり,今後どのような影響があるのでしょうか。

まだ判決が出たばかりであり,判例解説等が出されていないことから暫定的な解説になりますが,中野区で無料相談対応の吉口総合法律事務所作成の本コラムでは,上記不貞相手に対する不貞慰謝料請求に関する判決について弁護士が解説を致します。

今回の不貞相手に対する不貞慰謝料に関する最高裁判例の事案と判示事項

最高裁判例の事案

今回判決がなされた不貞相手に対する不貞慰謝料請求に関する最高裁判例において問題となった事案の概略は以下の通りです。

※最高裁判例の事案のみを参考にしており,原判決の事実関係についてはまだ未確認になります。

  • 不倫を行った妻は,不倫相手と平成20年12月頃知り合い,平成21年6月以降不貞行為に及ぶようになった。
  • 夫は,平成22年5月頃,妻が不倫を行ったことを知り,妻と不倫相手との不貞は解消された。
  • 夫と妻は,平成27年2月に離婚をした。
  • 夫は,妻の不倫相手に対し慰謝料請求を行った。

最高裁判例の判示事項

上記事案について,不貞相手に対する不貞慰謝料に関する最高裁判例は,以下のように判示しています。

※太文字や文字の色等を,適宜修正しています。

「夫婦が離婚するに至るまでの経緯は当該夫婦の諸事情に応じて一様ではないが,協議上の離婚と裁判上の離婚のいずれであっても,離婚による婚姻の解消は,本来,当該夫婦の間で決められるべき事柄である。したがって,夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は,これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても,当該夫婦の他方に対し,不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして,直ちに,当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことは無いと解される。第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは,当該第三者が,単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず,当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。以上によれば,夫婦の一方は,他方と不貞行為に及んだ第三者に対して,上記特段の事情が無い限り,離婚に伴う慰謝料を請求することはできないものと解するのが相当である」

不貞相手に対する不貞慰謝料に関する最高裁判例を理解する上での前提知識

まず,不貞行為に基づく損害賠償請求を行うに当たって理解する必要がある事項があります。

それは,

①離婚が成立するに至ったことに対する慰謝料(離婚慰謝料)

②離婚の原因となった個々の行為に対する慰謝料(離婚原因慰謝料)

とそれぞれ種類があることです。

①については,何らかの有責行為によって離婚をするに至ってしまったことに対して発生する慰謝料になります。

他方で,後者の②については,離婚の原因となった不貞行為や暴力行為そのものに対して発生する慰謝料になります。

そして,本件の判例は,第三者に対して,①離婚が成立するに至ったことに対する慰謝料請求ができるか否かが問題となった事案において,この点について主として判断したものになります。

この点について,本件の判例は,不貞相手が離婚をさせたことについて責任を負うのは,不貞行為のみではなく,不貞相手が離婚をさせるのもやむを得ないと評価できる行為を行った等特段の事情がある場合に限定しています。

不貞相手に対する不貞慰謝料に関する最高裁判例に対する今後の影響

詳しくは判例評釈を待つ必要がありますが,本判決は,不貞行為を行った不貞相手に対し,①離婚が成立するに至ったことに対する慰謝料を求めることができる条件を絞ったものにすぎず,②の離婚の原因となった個々の行為に対する慰謝料について新たに判断しているわけではないと考えられます。

したがって,本判決によっても,不貞相手に対し,②離婚の原因となった個々の行為に対する慰謝料を請求することについては,従前どおり可能であると思われます。

この点について,一部のニュースではあたかも不貞相手に対する請求ができないように読み取れるものもありますが,不貞相手への慰謝料請求ができなくなったと判断することは早計でしょう。

ただ,今後不貞相手に対し慰謝料請求を行う場合は,消滅時効に気を付ける必要はあると思います。

原判決の事実関係を確認する必要がありますが,おそらく,本件は消滅時効の関係で,不貞相手に対し,①の離婚が成立するに至ったことに対する慰謝料を請求したものと思われます。

というのも,損害賠償請求を行うためには,損害及び加害者を知ってから3年以内にこれを行う必要があります。

そして,本件では,妻との不貞行為を知ってから3年が経過していたが,離婚をしてからは3年が経過していなかった場合に不貞相手に対し慰謝料請求をしたという事案なのではないでしょうか。

今後,本判例と同様の場面では,消滅時効の関係で,不貞相手に対して不貞行為に基づく損害賠償請求を行うことが制限される傾向になるかもしれません。

終わりに

以上,不貞相手に対する不貞慰謝料に関する平成31年2月19日最高裁判決を紹介しました。

同判決がまだ出たばかりであり,また,その解釈も確定しているわけではないため,今後の判例解説や裁判例の集積が待たれるところです。

中野区で相続無料相談対応の吉口総合法律事務所では,不貞慰謝料請求を行う側,及び,不貞慰謝料の請求をされた側のいずれのご相談もお受けしておりますので,お気軽にお問い合わせください。

遺産預金の使い込みがある場合における相手方の反論と返還請求の可否

2019-02-03

中野区で相続無料法律相談対応の吉口総合法律事務所では,相続に関するご相談を多数受けております。

その中でもご相談内容として多いものは,”遺産である預金の無断引き出し・使い込み”の問題です。

被相続人である親や兄弟が亡くなったため,預金残高を確認したところ想定以上に預金が少なかったため,「遺産である預金が引き出されたのではないか・・・?」と考えるに至ることが多いようです。

今回のコラムでは,遺産である預金が無断で引き出された(使い込まれた)場合において,遺産である預金を使い込まれた相続人は使い込んだ者に対して返還請求をすることができるか,そして,返還請求をするためにはどのような準備をすればよいか等について弁護士が解説を行います。

▼遺産である預貯金の使い込みの問題の解決事例は,こちらをご参照ください。

▼ご親族が生存・存命中の使い込みの問題については,こちらをご参照ください。

引き出された預金の返還請求が認められるか否かの判断要素

まず,前提として,被相続人である親や兄弟の遺産である預金が多数引き出されている場合において,他の相続人は遺産である預金を引き出した者に対して返還請求をすることができるのでしょうか。

この点についての回答は,「遺産である預金が無断で引き出された(使い込まれた)場合は,他の相続人は引き出したものに対し返還請求ができる。」というものになります。

民法上,不当利得返還請求権及び不法行為に基づく損害賠償請求権という権利が存在するため,相続人は同請求権に基づいて,遺産である預金を無断で引き出した者に対し,無断で引き出された(使い込まれた)預金の返還を求めることができます。

それでは,どのような事情が存在すれば,他の相続人は無断で引き出された(使い込まれた)預金の返還請求を行うことができるのでしょうか。

この点については,以下の通りになります。

被相続人である親や兄弟死亡における預金の使い込み(使い込み)について

遺産である預金の無断引き出し・使い込みは,死亡前になされるパターン死亡後になされるパターンが存在します。

死亡前における引出が,無断引き出し・使い込みにあたるというためには,「預金の引き出しが,被相続人である親や兄弟の意思に反するものである」と言えなければいけません。

そして,これは,遺産である預金を引き出された側が主張・立証する必要があります。つまり,仮に遺産である預金の引き出しが,被相続人である親や兄弟の意思に反することを立証できなければ,いかに疑わしい事情が存在したとしても,遺産である預金を引き出された(使い込まれた)と主張する側の返還請求が認められないことになります。

ただ,通常は被相続人である親や兄弟の意思が明確にわかる資料は存在しないことが多いです。

そのため,預金の引出頻度や,引き出された金額・時期,被相続人と引き出した者との関係,被相続人である親や兄弟の当時の身体状態・認知状態,被相続人の生活状況,相手方の使途の説明内容等の要素から,被相続人である親や兄弟の意思を推認していくことになります。

例えば,父親が寝たきりの重度の認知症の状態であり,施設に入所していた中,遺産である預金から多額の金銭が引き出された場合,お父様は当該出金を認識できず,また,通常高額な金銭を支出する必要性が乏しいため,「被相続人である親や兄弟の意思に反していた」と認定される可能性が高いと言えるでしょう。

また,例えば,母親が死亡する直前に,遺産である預金から多額の金銭が引き出されていた場合,このような場合もお母様が金銭を必要とする事情は通常ないことから,「被相続人である親や兄弟の意思に反していた」と認定される可能性が高いと言えるでしょう。

上記のような事例であれば比較的判断がつきやすいですが,判断が難しい事案は多数ありますので,早期に弁護士にご相談をいただけますと今後の見通しを説明しやすくなります。

被相続人である親や兄弟死亡における預金の使い込み(使い込み)について

上記とは異なり,遺産である預金の無断引き出し・使い込みが死亡後になされるパターンも存在します。

このようなケースでは,既に被相続人である親や兄弟が亡くなっていることから,預金の無断引き出し・使い込みにあたるといえるためには,「預金の引き出しが相続人の意思に反するものである」と言えなければなりません。

この場合は,死亡前の引き出しとは異なり,被相続人ではなく,相続人の意思に反する引出か否かが基準になりますので争い方の構成が変わることになります。

遺産である預金が,無断で引き出されているか(使い込まれているか)否かを調べる(立証する)方法

既に述べた通り,遺産である預金が引き出された場合において,預金を引きだした者に対する返還請求が認められるためには,遺産である預金を引き出された側が,無断引き出し・使い込みにあたることを主張・立証する必要があります。

それでは,預金の無断引き出し・使い込みにあたると立証するためには,どのような資料が必要になるのでしょうか。

遺産である預金の使い込み(無断引き出し)額に関する資料について

まずは,前提として,引き出された預金額がいくらであるかを把握・立証する必要があります。

この点を立証するためには,預金通帳が残っているのであれば,預金通帳が資料になります。

また,預金通帳が残っていない場合もありますが,そのような場合であっても,相続人であれば,金融機関に対して取引履歴の照会を行うことができます。

金融機関にもよりますが,被相続人が死亡したことがわかる戸籍謄本や被相続人との関係がわかる戸籍を用意すれば,概ね10年分の預金の取引履歴を出してくれることが多いです。

被相続人が保有していた預金の口座番号等がわからない場合もありますが,その場合であっても金融機関に確認をするとデータが残っている範囲で預金口座の有無を教えてくれます。

なお,金融機関によっては,他の相続人の同意が無いこと等を理由として預金取引履歴の開示を拒否することが稀にありますが,以下の平成21年1月22日最高裁判決の通り,基本的には金融機関は取引履歴の開示を拒否することはできません。

融機関は,預金契約に基づき,預金者の求めに応じて預金口座の取引経過を開示すべき義務を負うと解するのが相当である。そして,預金者が死亡した場合,その共同相続人の一人は,預金債権の一部を相続により取得するにとどまるが,これとは別に,共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき,被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができる(同法264条,252条ただし書)というべきであり,他の共同相続人全員の同意がないことは上記権利行使を妨げる理由となるものではない。」

弊所では取引履歴の取得からご依頼をいただくことも可能ですので,もし資料を取得できないとお悩みの場合はお気軽にお問い合わせください。

被相続人の身体状態・認知状態に関する資料について

次に,遺産である預金が無断で引き出された(使い込まれた)時点において,被相続人である親や兄弟の身体状態・認知状態が悪ければ悪いほど,遺産である預金の引き出しが被相続人の意思に反していたといいやすくなります。

というのも,一般的には,被相続人が元気な状態であれば,被相続人本人が預金を引き出したと言いやすくなり,また,被相続人本人が引き出した預金を使用していたと言える可能性が高まるからです。

したがって,遺産である預金を無断で引き出した(使い込んだ)者に対して返還請求をするためには,被相続人の状態を立証する資料を取得することが重要になってきます。

この被相続人の状態を立証するための資料としては,医師のカルテや看護記録,介護施設の日報,介護認定の際に作成される主治医意見書や認定調査票等があげられます。

これらの資料は,病院や介護施設,介護認定を受けていた市区町村等から取得できますが,病院等によっては開示を拒否する場合があります。

このような場合であっても,弁護士が介入することによって資料が開示されることもありますので,お困りの際はお問い合わせください。

遺産である預金の無断引き出し・使い込みが疑われる側が良く行う反論と対策

遺産である預金の無断引き出し・使い込みに関する資料を取得・確認した結果,遺産である預金を使い込んだと疑われるのであれば,不当利得返還請求権または不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき,無断で引き出された(使い込まれた)金銭の返還請求を行うことになります。

その場合であっても,相手方からどのような反論がなされるかを予想したうえで対策を事前に練っておくことが有益です。

それでは,遺産である預金の無断引き出し・使い込みが疑われる相手方からは通常どのような反論がなされるのでしょうか。

被相続人死亡前の無断引き出し・使い込みに対する反論

【被相続人本人が預金を引き出したものであるという反論】

まず,相手方から,「被相続人本人が預金の引き出しを行ったのであって,自分は預金の引き出しを行っていない」という反論が想定されます。

このような反論がなされた場合,預金の引出場所や被相続人の状態から当該反論が不合理であることを主張・立証することが考えられます。

例えば,被相続人と無断引き出しが疑われる相続人の自宅が遠く離れているにもかかわらず,預金の引出場所の大半が,当該相続人の自宅の支店であった場合,当該相続人の主張は不合理であると言いやすくなるでしょう。

また,被相続人の足の状態が悪かった,認知症で引き出される状態ではなかった等の事情があった場合も,被相続人本人が預金を引き出していないことの一つの根拠になると言えます。

なお,預金が引き出された支店は,取引履歴に記載されている番号等から判明することがよくありますので,取引履歴を取得した場合は事前に確認をするとよいでしょう。

【引き出した預金は被相続人から贈与を受けたものであるという反論】

次に,「預金を引き出したのは被相続人本人ではなく自分であるが,引き出した預金は被相続人から贈与を受けた」という反論がありえます。

このような反論がなされた場合,被相続人の状態,贈与がなされた時点における被相続人と引出を行った相続人との関係や,贈与に関する経緯,引出しの態様・金額・頻度,贈与を裏付ける資料の有無から,贈与が存在しなかったことを主張立証することが考えられます。

例えば,被相続人と引出を行った相続人との関係が悪化しており,贈与がなされるような状況ではなかったにもかかわらず,高額な金銭が引き出されていた場合,贈与が不自然であり贈与が不合理であると言いやすくなります。

また,例えば,贈与がなされた時期において,被相続人の認知症が重く,贈与について理解ができるような状態ではなかった場合も,贈与が不自然・不合理であると判断される可能性が高いと言えます。

【引き出した預金は被相続人の生活費として使用したものであるという反論】

更に,「引き出した預金は,被相続人本人の生活費のために支出した。」という反論がありえます。

このような反論がなされた場合も,引き出された金額や頻度,被相続人の状態や,生活状態,使い込みが疑われる者が預金を管理するようになった時期における引出金と従前の引出金とから,生活費として過剰な支出であることを主張することが考えられます。

例えば,従前,被相続人の生活費が20万円程度であったにもかかわらず,特段の事由が存在しないのに,使い込みが疑われる者が管理をしてから毎月100万円に近い金額が引き出されている等の事情がある場合,生活費として支出した旨の主張は不自然・不合理であると言いやすくなります。

被相続人死亡後の無断引き出しに対する反論

被相続人死亡後の引出に対しては,「葬儀費用として支出した」旨の反論がよくなされます。

もっとも,葬儀費用は喪主が負担すべきであると考えることが比較的多いといえるため(名古屋高裁平成24年3月29日判決),引き出した者が喪主であった場合,自ら負担すべき金銭を遺産から充てたことになります。

したがって,遺産である預金を引き出した者からこのような反論がなされた場合は,他の相続人が葬儀費用として使用することを承諾していたという事情が無い限り,預金を引き出した者の反論は認められない可能性が高いと言えます。

被相続人死亡前後に共通する反論

その他,被相続人死亡前後に共通する反論としては,

①「消滅時効が成立している」

②「遺産分割協議書を作成しているためもはや預金の引き出しの問題は解決済みである」

というものがあげられます。

まず,①の「消滅時効が成立している」という反論ですが,預金の無断引き出し・使い込みに対する返還請求の時効は,不当利得返還請求権に基づく請求の場合は,遺産である預金から引き出されてから10年(改正後の民法では,遺産である預金が引き出されたことを知った時から5年または権利を行使できるときから10年)になります。

他方で,不法行為に基づく損害賠償請求権に基づいて請求を行う場合は,遺産である預金が引き出されたことを知った時から3年または引出から20年(改正後の民法も基本的には同様になります。)になります。

不当利得返還請求権に消滅時効が成立していたとしても,不法行為に基づく損害賠償請求権に消滅時効が成立していなければ返還請求をすることができますので,時効について心配する必要はあまりないことが多いです。

もっとも,10年以上前の引出の場合は,時効にかからないとしても当時の資料が残っていないことがよくあります。したがって,別途立証の問題が残るということに留意する必要があるでしょう。

次に,②の「遺産分割協議書を作成しているためもはや預金の無断引き出しの問題は解決済みである」という反論ですが,遺産分割協議書において,いわゆる「清算条項」と呼ばれる条項が存在しない場合は,遺産分割は今ある遺産を分ける手続であって,預金の無断引き出し(使い込み)の問題とは別であるため,あ熊で遺産分割協議書と預金の無断引き出しは別問題と言えます。

したがって,当該反論が認められない場合が多いと言えそうです。

遺産である預金の無断引き出し(使い込み)がなされた場合の具体的な解決手続

これまで遺産である預金の無断引き出し(使い込み)がなされた場合にどのような資料を集めるべきか,また,どのような反論がなされるかを解説致しました。

それでは,資料収集の結果,遺産である預金の無断引き出し(使い込み)が強く疑われる場合,どのような手続を経て解決まで進むことになるのでしょうか。

まず,預金を引き出した相手方が相続人であり,預金の無断引き出し(使い込み)を認めた場合は,遺産分割協議の中でまとめて解決をすることも可能です。

もっとも,預金を引き出した相手方が無断引き出しをしたことを認めるということは多くありません。多くの場合は,預金を引き出した者は,上で述べたような反論を行い返還をすることを拒みます。

その場合の解決方法ですが,民事訴訟を提起して不当利得返還請求権または不法行為に基づく損害賠償請求権に基づいて返還請求を行うことがオーソドックスな手続と言えるでしょう。

民事訴訟を提起した場合,裁判期日が複数回開かれることになります。その後,双方で主張・立証の応酬を行い,その中で折り合いがつけば,和解による解決になることもあります。折り合いがつかない場合は判決ということになります。

終わりに

以上,遺産である預金の無断引き出し(使い込み)がなされた場合の対処法について解説を致しました。

遺産である預金の無断引き出し(使い込み)がなされた場合は,資料の収集・確認,相手方の反論の検討・対策等,手続の選択等,専門的知識が必要になります。

このような問題を解決するためには,預金の無断引き出し(使い込み)の問題を多く扱っている弁護士に依頼をすることがベストであると言えます。

東京都中野区に所在する吉口総合法律事務所では,預金の無断引き出し(使い込み)の問題を多数扱った経験があり,多数のノウハウや解決事例を有しています。

預金の無断引き出し(使い込み)に関し,ご相談がございましたら,中野区で相続無料法律相談対応の吉口総合法律事務所までお気軽にお問い合わせください。

婚約破棄をされた場合に損害賠償請求できるのはどのようなケースか

2019-01-20

例えば,夫婦間の一方の不貞や暴力等により,他方配偶者が離婚をせざるを得ない状況に至った場合には,他方の配偶者は損害賠償請求を行うことができます。

では,これらの行為が夫婦でなく,婚約者間でなされたとしたら,婚約をした他方当事者は損害賠償請求を行うことができるでしょうか。

また,仮にそのような損害賠償請求が認められるとすれば,損害賠償請求額はどの程度認められるものなのでしょうか。

中野区で無料法律相談対応の吉口総合法律事務所では,次の3点について順に解説を行うことで,この種の紛争における典型的な争点を整理してみたいと思います。

すなわち,

①どのような事情が存在する場合に婚約の成立が認められるか

②婚約の成立が認められるとして,どのような事情が存在する場合に婚約の解消が不当となるか

③婚約破棄が認められるとして,認容されうる損害賠償請求の金額はどのようなものか

という3点について弁護士が解説をしたいと思います。

第1 どのような事情が存在する場合に婚約の成立が認められるか

婚約破棄といえるためには,その前提として婚約が成立していることが必要になります。

ここで,婚約とは,婚姻の予約,つまり,男女の間で将来婚姻することを約することをいいます。

もっとも,婚姻届の提出の有無によって判断できる婚姻とは異なり,婚約には様々なバリエーションがありえます。

そこで,どのような事情があれば婚約の成立が認められるかが問題となります。

法律の規定では,どのような事情があれば婚約が成立するかということは定められていません。

そのため,婚約の成立の有無は個別具体的にきまりますが,

儀礼的行為(結納,婚約指輪の授受等)の有無,交際期間の長短,同棲関係ないし肉体関係の有無,周囲に婚姻を前提とした関係であることを打ち明けていたかどうか,婚姻の準備行為(結婚式場の手配,新居の内覧等)の有無及びその進捗状況

といった事実から婚約の成立を検討することになります。

第2 どのような事情が存在する場合に婚約の解消が不当となるか

仮に婚約が成立していた場合には,婚約破棄による損害賠償請求が認められるかが問題になります。

婚約が破棄された場合であっても,それが正当な理由によるものであれば,損害賠償請求をすることができません。

では,どのような場合に正当な理由がない婚約破棄といえるのでしょうか。

この点についても,個別具体的な事情によって判断されることになりますが,例えば,

婚約中における他の異性との交際や肉体関係の存在,妊娠中絶の存在,暴力等の事情

がある場合は,正当な理由のない婚約破棄と認定されやすいといえるでしょう。

第3 婚約破棄が認められるとして,認容されうる損害賠償請求の金額はどのようなものか

婚約破棄による損害賠償請求が認められるとしても,具体的にいくらの損害賠償請求が認められるのでしょうか。

事案の特徴によりますが,概ね婚約破棄による損害賠償請求としては,25万円~300万円程度の範囲が多いと思われます。

それでは,慰謝料額に大きく影響する事情とは,どのようなものでしょうか。

この点については,慰謝料額を増額する方向に作用する事情としては,ここでも

交際期間の長短,婚約の公表,婚約破棄にあたり暴力・不貞行為・妊娠中絶を伴っていないか,婚約破棄によって婚約者に精神的障害が生じたか否か,及び,婚約破棄当時の婚約者の年齢

等の事情があげられます。

他方で,慰謝料額を減額する方向に働く事情は,

婚約者に対し解決金その他の名目で金員が支払われた事情や,婚約者側にも婚約破棄の原因の一端があること

等を挙げることができます。

第4 具体的な裁判例

婚約破棄の有無が争われた事案において,裁判例では婚約破棄をされた原告が婚約破棄をした被告に対して損害賠償請求をした事案において,以下のように原告の請求を認めています。

①約2年間の交際期間の後(肉体関係も存在した),原告が結婚を前提に新居用不動産を購入し,また,両親や友人に婚約者として互いを紹介済みであった。

このような状況で被告から婚約破棄がなされ,その際に被告の暴力がなされ,その結果原告はうつ状態との診断を受けた事案では,300万円の慰謝料が認定されています(神戸地裁平成14年10月22日判決)。

②原告と被告に約5年間の交際期間がありその際にウェディングフェアに行ったこと,原告が被告の家族に紹介済みであったこと,また,被告が婚姻届に署名・押印をした(提出はしていない)という事情がある中で,被告が原告との婚約中に他の女性と同棲し,婚約破棄後その女性と結婚した事案では,100万円の慰謝料が認定されています。(東京地裁平成15年7月9日判決)。

③約5カ月の交際期間において,被告からプロポーズをされ,その後,原告及び被告の各親族に紹介した上で,婚約の承諾を得た事案において,婚約破棄により原告が妊娠中絶したのみならず,被告は原告が妊娠した子が自身の子であることを争い,DNA鑑定により証明されない限り中絶の同意書を作成しないと主張した事実等から120万円の慰謝料が認定されています(東京地裁平成21年6月22日判決)。

第5 終わりに

以上が婚約不履行による損害賠償請求に関する記事になります。

婚約不履行に基づく損害賠償請求は,婚約の成立自体が個別具体的な事情によって異なってくるので,早期に弁護士に相談することが重要だと言えます。

婚約不履行に基づく損害賠償請求にお悩みの方は,中野区で無料法律相談対応の吉口総合法律事務所までお気軽にご相談ください。

【お知らせ】吉口弁護士が多摩市長等政治倫理審査会委員に就任しました

2019-01-12

 吉口弁護士が,平成30年9月30日から平成32年9月30日の任期において,学識経験者として多摩市長等政治倫理審査会の委員に就任いたしました。

 弁護士としての経験を同委員の職務に活かすとともに,同委員としての経験を弁護士業務に活かせるよう職務に邁進して参ります。

弁護士に離婚問題を依頼するメリットがある具体的事例

2018-11-01

このコラムでは,離婚問題で弁護士に相談するメリットがある具体例を示します。

架空の事例ですが,Aさんは,事情があり離婚をすることを決意しました。

しかし,ご自身のみで離婚手続を進めるべきか,弁護士に相談しつつ進めるべきか悩んでいます。

それでは,Aさんがご自身の離婚問題について,弁護士に相談するメリットがあるのはどのような場合でしょうか。

夫婦間で離婚意思が一致しない場合に弁護士に相談するメリットがあります。

第1は,夫婦間で離婚の意思が一致していない時に弁護士に相談をするメリットがあります。

例えば,Aさんは夫と離婚をすることを希望しているが,夫は離婚を希望していない場合,当事者で話し合いを続けても話が平行線になってしまい問題の解決になりません。

このような場合,一方当事者が離婚を希望していなかったとしても,法律上の離婚事由を充たせば離婚が認められることになります。

しかし,離婚事由の有無の判断をするためには,法的知識を要するため,ご自身のケースにおいて離婚ができるか否かを判断することは簡単ではありません。

このような場合において,弁護士に相談することによって,離婚ができるのかそれともできないのか見通しを得ることができます。

そして,仮に離婚ができる見込みであれば,今後どのような交渉を進めるべきであるのかがわかります。逆に,すぐには離婚ができない見込みであっても,今後離婚をするためにはどのような準備をすればよいかということも知ることができます。

したがって,夫婦間で離婚の意思が一致していない時には弁護士に相談をすることをお勧めいたします。

財産分与において争いがある場合に弁護士に相談するメリットがあります。

第2は,離婚に伴う財産分与で争いがある場合に弁護士に相談をするメリットがあります。

例えば,Aさんは夫と共同でマンションを購入したところ,購入代金の4分の1をAさんの親から援助してもらいました(マンションの持分は夫婦で各半分とします。)。

購入代金の残額は,夫が住宅ローンを組みローンの返済を続けた結果,完済しました。

このような事情のもと,Aさんは夫と離婚の合意ができましたが,夫は自分がローンを払っていたのでマンションは自分がもらうと言い張っています。

このような事案では財産分与が問題となります。財産分与とは,夫婦の財産(名義が夫であるのか,妻であることは関係なく,婚姻中に形成した財産であれば夫婦の財産にあたります。)を離婚に伴って夫婦間で分割する手続です。

この財産分与にあたっては,基本的には,夫婦が婚姻中に形成した財産を各半分の割合で分割することになります。

しかし,この夫婦の財産が何であるかということで揉めることがあり,例えば,結婚中に相続した財産がある場合や,親からマンションの頭金の贈与を受けた等の場合には,財産分与が争点になることが比較的多いです。

上記Aさんの事例では,Aさんが夫から適切な額の財産分与を受けるためには,夫の主張が本当に正しいものであるのか,また,Aさんが財産分与として受け取ることができる金額がいくらであるのかを正確に把握する必要があります。

もっとも,正確な財産分与額の計算は複雑であるため,財産分与として受け取ることができる見込み額がいくらであるかを把握することは簡単ではありません。

そこで,このような場合に弁護士に相談・依頼することによって,受け取ることができる財産分与額を把握した上で,証拠関係を踏まえて,財産分与に関し,自己に有利な交渉をすることができます。

このようなメリットがあることから,財産分与において争いがある時には,弁護士に相談をすることをお勧めいたします。

離婚原因が浮気の場合に弁護士に相談するメリットがあります。

第3は,離婚原因が浮気の場合に弁護士に相談をするメリットがあります。

例えば,Aさんは夫が浮気をしていると確信したため,夫と離婚をすることを決意しました。このような場合,Aさんは次にどのようなことをすべきなのでしょうか。

Aさんが,夫が浮気をしていることの確信をもったとしても,夫が浮気をしていることの証拠が無ければ離婚原因である不貞行為があったとは認定されません。

離婚原因である不貞行為の認定がなされないということは,夫が離婚を拒否した場合にすぐに離婚ができず,また,不貞を理由とした慰謝料の請求も難しくなることを意味します。

そのため,浮気をしていると考えた場合には,夫が浮気をしている証拠を集める必要があります。

そして,仮に,Aさんの夫の立場からすれば,Aさんが浮気に気付いていると感じたならば,すぐに証拠隠滅をする可能性があるといえます。

したがって,具体的な事案にもよりますが,Aさんとしては,すぐに夫に対し浮気の事実を問い詰めるのではなく,まずは証拠確保を行うことが適切であるといえます。

ただ,この証拠確保の方法の適否や,その証拠が持つ価値の判断というのは,事実認定の技術が必要になるため,できる限り早い段階で専門家である弁護士に相談をするのが一番です。

したがって,離婚原因が浮気の場合は,できる限り早期に弁護士に相談をすることをお勧めいたします。

終わりに

以上の事例は具体的事例の一部であり,その他の離婚事例であっても弁護士に相談することによって得られるメリットは多数あるといえます。

したがって,離婚について悩まれた場合は,東京都中野区所在の吉口総合法律事務所(最寄り駅は,東京メトロ丸の内線「新中野駅」になります。)までお気軽にご相談ください。

※ お問い合わせフォームはこちらです。

社員から残業代請求をされた場合は会社はどうしたらよいか

2018-10-25

突然社員から残業代請求を受けた場合,会社側としてはどのような対応を行えばよいでしょうか。

昨今,会社側が社員から残業代請求をされることが珍しくなく,弊所でも経営者様から多くいただくご相談の一つが残業代請求の対応になっております。

社員が行う残業代の請求自体は,法律上社員側に認められた権利になります。そのため,それが法律に基づく正しい計算方法であるのならば,会社側としてもこれを支払わなければなりません。

他方で,社員から残業代請求を受けたが,その残業代請求が過剰な請求であることもあります。

したがって,社員から残業代請求を受けた場合は,社員が請求する残業代が適切なものであるのか,また,金額は妥当であるかを把握する必要があります。

中野区所在の吉口総合法律事務所作成の本コラムでは,残業代請求がなされた場合に,会社側がどのような点を確認し,どのような反論をする必要があるかについて弁護士が解説をしたいと思います。

第1 時効にかかっている部分についても残業代請求がされていないかを確認する

残業代請求には2年の消滅時効が存在し,2年の消滅時効を超えている場合は,超えている部分について残業代請求ができなくなります。

したがって,残業代請求がなされた場合には,消滅時効にかかっていないかを確認する必要があります。

仮に,2年を超えた残業代の請求がなされている場合,会社側は社員に対し,消滅時効が成立している旨反論することを検討しましょう。

なお,残業代請求が2年で消滅時効が成立するとしても,消滅時効の期間が満了することによって自然に時効となるわけではありません。

会社側は時効が成立している旨の意思表示をして初めて時効が成立するため,この点に注意が必要です。

そして,社員に対して消滅時効の主張をするときは,記録に残るように,書面等で消滅時効の意思表示を行うのが良いでしょう。

また,消滅時効が完成したとしても,時効の意思表示をする前に消滅時効にかかっている部分の支払義務を認めてしまうと,時効の主張が認められなくなってしまいます。したがって,この点についても注意が必要です。

第2 社員側が主張する労働時間の計算が正しいかを確認する

社員から残業代請求がなされた場合は,社員側が主張する労働時間が正しいものであるかを把握する必要があります。

例えば,社員側から始業・終業時刻が具体的に示され,それを基に残業代の請求がなされているとします。しかし,会社は残業を行うことを禁止しており,当該社員が残業禁止の指示に反してされていたというような場合,残業時間が労働時間に含まれるかということが問題になります。

会社から残業が禁止されていたという事情のみでは,当然に残業代が発生しないものではないですが,社員側の労務内容等から,労働時間には該当しないと判断される可能性もあります。

したがって,個別具体的な事情にもよりますが,残業が禁止されている状態で労働をしていた場合は,その労働時間は労働時間に該当しない旨反論することが考えられます。

第3 固定残業代として支払済みでないか,適用除外に該当しないかを確認する

社員から残業代請求がされた場合,社員に対して,既に固定残業代手当を支払っていないか確認しましょう。

社員に給与を支給するにあたって定額の時間外手当を支給している場合があります。このような場合において,一定の要件を充たす場合は,請求をされている残業代額から控除することができます。

ただ,定額の時間外手当が支払われているからといって当然に請求されている残業代から当該手当を控除できるわけではありません。この点については,要件がありますので,弁護士に相談をされることをお勧めします。

また,当該社員が,管理監督者,または,労基法上の適用除外に該当する宿直勤務を行っていないかを確認しましょう。

当該社員が労基法上の管理監督者に当たる場合や労基法上の要件を充たす宿直勤務を行っている場合は,残業代が発生しないことになります。

したがって,この点について確認することも必要です。

ただ,管理監督者の主張は簡単には認められるものではないため,労働時間や賃金額等を把握したうえで,こちらについても弁護士に相談されることをお勧めいたします。

第4 終わりに

以上,社員から残業代請求をされた場合に,会社側としてはどのような対応を行えばよいかについて解説を行いました。

対応方法の具体例は上記の通りですが,上記反論が法律上有効適切かは個別具体的な事案によって異なるため,どのような反論が有効であるかの判断は容易ではありません。

弁護士にご相談・ご依頼をいただけた場合,上記点を踏まえて会社側の代理人として社員と交渉することが可能です。それによって,会社側は本来の業務に集中ができるとともに,請求額の減額の交渉をすることもできます。

社員から残業代請求をされた場合は,早期に対応をすることが会社側としても得策です。したがって,社員から残業代請求をされた場合は,お気軽に中野区で無料法律相談対応の吉口総合法律事務所までお問い合わせください。

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