Author Archive
【弁護士の解決事例】相続人多数・行方不明…複雑な遺産分割
相続人が多数、中には行方不明者も…遺産分割を諦めていませんか?
「父が亡くなってから、もう何年も経ってしまった」
「相続人が多すぎて、誰が誰だか分からない。話し合いなんてとてもできそうにない」
「相続人の中に、どこに住んでいるか分からない人がいて、手続きが完全に止まってしまった」
相続が発生したものの、このように複雑な事情を抱え、遺産分割協議を始めることすらできずに途方に暮れていらっしゃる方は少なくありません。時間が経てば経つほど、相続関係はさらに複雑化し(数次相続)、問題は雪だるま式に大きくなっていきます。不動産が塩漬け状態になったり、他の相続人との関係が悪化したりと、精神的なご負担も生じるところです。
しかし、どれほど問題が複雑であったとしても解決の道筋は存在します。
この記事では、当事務所が実際に取り扱った「相続人が多数おり、中には行方不明者も含まれる」という極めて困難な事案を例に、どのように問題を解決していったのか、その具体的な道のりをご紹介します。
この記事をお読みいただくことで、ご自身の状況と重ね合わせながら、複雑な相続問題を解決するための具体的な法的アプローチと、そこから得られる希望を感じていただけることと思います。

【解決事例】相続人8名(行方不明者含む)・不動産の不法占有問題を解決
ここでは、当事務所で実際に取り扱ったご相談内容を、一部内容を変更・抽象化した上でご紹介します。
ご相談の概要:数次相続や代襲相続により相続人が8人に
ご依頼者は、約15年前に亡くなられたお父様(被相続人)の相続手続について、ご相談に来られました。
長年、遺産分割が行われないまま放置されていたため、その間に相続人であったご兄弟の一部も亡くなられ、そのお子さんやお連れ合いが新たに相続人となる「数次相続」が発生していました。その結果、最終的な相続人の数は、被相続人のお子さん、その配偶者、お孫さんなどを含め、合計8名にまで増えていました。
さらに、問題を複雑にしていたのは、以下の点です。
- 行方不明の相続人の存在:相続人の一人に外国籍の方がいらっしゃいましたが、現在どこにお住まいなのか、全く連絡が取れない状況でした。
- 遺産不動産の不法占有:唯一の遺産は地方にある不動産でしたが、その土地と建物を、全く関係のない第三者が無断で使用している「不法占有」の状態でした。
相続人が8名もいる上に、行方不明者と不法占有者まで存在する。まさに八方ふさがりの状況で、ご依頼者様は「もうこの不動産は諦めるしかないのではないか」と、長年悩み続けていらっしゃいました。
弁護士による解決への道のり
ご依頼を受け、当事務所の弁護士はまず、複雑な問題を一つひとつ整理し、解決に向けた戦略を立てました。
まず、相続人に外国籍の方が含まれていても、日本の法律に基づいて遺産分割を進めることが可能です。そして、遺産分割は原則として相続人全員の合意を要しますが、参加できない相続人がいる場合や合意が得られない場合には、不在者財産管理人の選任申立てや遺産分割調停・審判など家庭裁判所の手続きを利用して解決することが可能です。
この方針に基づき、以下の手順で解決へと進めていきました。

- 相続分譲渡による関係者の整理:
まず、8名の相続人全員に対し、弁護士から今回の事情を丁寧に説明し、今後の遺産分割手続への協力をお願いしました。
その中で、この相続問題にこれ以上関わりたくない、あるいは不動産を取得する意思はないという相続人の方々から、「相続分」を当方(ご依頼者様)に譲渡していただくことについて同意を得ました。これにより、手続きに関わる当事者を絞り込むことができ、意思決定をスムーズに進める環境を整えました。 - 不在者財産管理人の選任申立て:
次に行方不明の相続人については、家庭裁判所に対して「不在者財産管理人」の選任を申し立てました。
不在者財産管理人とは、行方不明者に代わってその方の財産を管理し、法的な手続きを行う代理人です。裁判所によって選任された不在者財産管理人が、行方不明の相続人に代わって遺産分割協議に参加することで、相続人全員の参加という要件を満たすことができます。 - 遺産分割調停の申立てと成立:
相続分の譲渡に同意されなかった相続人の方とは、家庭裁判所での「遺産分割調停」を通じて話し合いを行いました。
調停では、裁判所の調停委員が間に入ることで、感情的な対立を避け、冷静かつ公平な議論を進めることができます。最終的に、不動産の不法占有者問題をこちらで解決することを条件に、ご依頼者様が不動産全体を取得するという内容で調停が成立しました。 - 不法占有者との交渉と不動産の売却:
遺産分割が法的に確定した後、不動産を不法占有していた第三者との間で明け渡し交渉を行いました。そして無事に不動産の明け渡しを実現し、最終的にその不動産を売却することで、現金化することができました。
ご相談から数年にわたる手続きとなりましたが、長年の懸案であった相続問題を無事に解決し、ご依頼者様の肩の荷を降ろすことができました。
複雑な相続問題を解決する3つの法的アプローチ
上記の事例で用いたように、相続人が多数いる、行方不明者がいる、話し合いがまとまらないといった複雑な事案では、法的な手続きを戦略的に組み合わせることが解決の鍵となります。
ここでは、特に重要な3つのアプローチについて解説します。
① 相続関係から離脱する「相続分譲渡」
「相続分譲渡」とは、ご自身の法定相続分を他の相続人や第三者に譲り渡す手続きです。遺産分割協議がまとまる前であれば、いつでも行うことができます。
相続人が多数いる場合、「遺産には関心がない」「手続きに関わりたくない」と考える相続人がいることも少なくありません。そのような方に相続分を譲渡してもらうことで、遺産分割協議の当事者を減らし、話し合いをスムーズに進めることが可能になります。
事例のように、特定の相続人が遺産を取得したい場合に非常に有効な手段です。
相続分譲渡について、より詳しくは「【相続人多数】遺産分割が進まない問題を相続分譲渡で解決」のページもご参照ください。

② 行方不明の相続人がいる場合の「不在者財産管理人」
相続人の中に行方不明者がいる場合、その人を抜きにして遺産分割協議を進めることはできません。この問題を解決するのが「不在者財産管理人」制度です。
家庭裁判所に申し立てを行い、行方不明者(不在者)の財産を管理する人を選任してもらいます。選任された管理人は、不在者の代理人として遺産分割協議に参加します。もし遺産分割協議で不動産の売却など、不在者の財産を処分する必要がある場合は、別途家庭裁判所から「権限外行為許可」を得る必要があります。
この手続きは、民法第25条に定められています。
(不在者の財産の管理)
第二十五条 従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。
(出典:e-Gov法令検索 民法)
手続きには数ヶ月から1年程度の期間を要し、裁判所に予納金を納める必要があるなど、専門的な知識が不可欠です。詳しくは、「相続人に失踪者や行方が分からない者がいるときに遺産分割を行う方法」のページでも解説しています。
③ 話し合いがまとまらない時の最終手段「遺産分割調停」
相続人間で感情的な対立があったり、意見がまとまらなかったりして、当事者だけでの話し合い(遺産分割協議)が困難な場合には、「遺産分割調停」を家庭裁判所に申し立てる方法があります。
調停では、裁判官と民間の有識者から選ばれた調停委員が中立的な立場で間に入り、各相続人の主張を聞きながら、解決案を探っていきます。直接顔を合わせずに話し合いを進めることもできるため、冷静な議論がしやすくなるというメリットがあります。
調停で合意に至れば「調停調書」が作成され、これは確定判決と同じ効力を持ちます。
遺産分割協議や調停については、「遺産分割協議について」のページもご覧ください。
弁護士コメント:複雑な相続問題を防ぐために今できること
今回ご紹介した事例は、相続が長期間放置された結果、権利関係が極めて複雑になってしまった典型的なケースです。もし、被相続人が亡くなられた直後に遺産分割を行っていれば、ここまで大事にはならなかったかもしれません。
このように複雑な権利関係に発展するのを防ぐために最も重要なことは、相続を放置せず、できるだけ早い段階で遺産分割を行うことです。
そして、少しでも「自分たちだけでは難しいかもしれない」と感じたら、すぐに専門家である弁護士に相談することをお勧めします。
「相続人が多くて大変だ」「連絡先が分からない人がいる」といった初期段階でご相談いただければ、より少ない負担で、よりスムーズに解決できる可能性が高まります。
複雑な相続問題でお悩みの方は、一人で抱え込まず、まずは当事務所の初回無料相談をご利用ください。当事務所は相続問題の解決に注力しており、事案に応じた法的選択肢を丁寧にご提案します。
どうぞお気軽に相続問題に関するお問い合わせはこちらからご連絡ください。

代表弁護士の吉口 直希です。
東京都中野区の「吉口総合法律事務所」は、JR総武線「東中野」駅西口より徒歩30秒のアクセスしやすい法律事務所です。
相続・遺言、離婚・男女問題、借金問題、など、身の回りの法律問題全般に対応しております。地域に根ざしつつ、全国からのご相談も承っておりますので、遠方の方もお気軽にお問い合わせください。
弊所では、相続、離婚等の一部業務について30分無料面談相談を行っております。また、事前のご予約いただければ夜間のご相談にも対応可能です。お一人で悩まず、まずはあなたの状況をお聞かせください。
遺留分を最大限に!請求額を増やす4つの専門的テクニック
「もらえる遺留分が少ない…」と諦める前に知ってほしいこと
「遺言書を見たら、ほとんどの財産が他の兄弟に渡すことになっていた」「生前に多額の援助を受けていたはずなのに、それが考慮されていない」…。
ご自身の取得できる遺産が想定よりも著しく少ないと知ったとき、多くの方が強い不公平感や、故人に対する悲しい気持ちを抱かれることでしょう。法的に保障されているはずの「遺留分」を請求しようにも、提示された金額があまりに少なく、途方に暮れてしまうかもしれません。
しかし、ここで諦めてしまうと損をしてしまう可能性があります。遺留分の計算は非常に専門的であり、その基礎となる遺産の評価や範囲の捉え方一つで、請求できる金額は大きく変わる可能性があります。
不当に低く見積もられた遺留分は、いわば「本来あなたが受け取るべきだった、正当な金額」が十分に反映されていない状態かもしれません。
この記事では、そのような状況を打開し、ご自身の権利である遺留分を「適正な金額」で獲得するための、弁護士が実践する専門的な4つのテクニックを詳しく解説します。
もしあなたが「このままでは納得できない」と感じていらっしゃるなら、ぜひ最後までお読みください。きっと、次の一歩を踏み出すための具体的な道筋が見えてくるはずです。
遺留分の請求額を増やすための4つの専門的テクニック
遺留分の請求額を、法的に正当な範囲で最大限に引き上げるためには、主に4つの重要な視点があります。これらは、遺留分を請求する側だけでなく、請求された側が反論を検討する際にも必要となる知識です。
ご自身の状況に当てはまるものがないか、まずは以下のチェックリストで確認してみましょう。
- □ テクニック1:隠れた「特別受益」を見つけ出す
他の相続人が故人から受けた特別な生前贈与(住宅資金、事業資金など)はありませんか?これらを主張することで、遺留分計算の基礎となる財産総額を増やすことができます。 - □ テクニック2:不動産・株式の「評価額」を適正に見直す
遺産に不動産や非上場の株式は含まれていませんか?相手方が提示する評価額(例:固定資産税評価額、路線価または低く算定された査定額)が時価よりも低い場合、適正な時価で再評価することで請求額を増額できる可能性があります。 - □ テクニック3:被相続人の預貯金の「使い込み」を調査する
故人の預貯金口座から、生前に不自然な多額の出金はありませんか?特定の相続人による無断の引き出し(使い込み)が疑われる場合、その分を遺産に含めるよう主張できる可能性があります。 - □ テクニック4:過去の贈与財産の「評価時期」を見直す
過去に贈与された不動産などを相手方がすでに売却している場合、その売却額ではなく、「相続開始時」の評価額で計算し直すことで、請求額が増えるケースがあります。
これらのテクニックは、いずれも専門的な知識と調査を要するものです。以下で、それぞれの手法について具体的に解説していきます。

【テクニック1】隠れた「特別受益」を見つけ出し、遺産の総額を増やす
遺留分の増額を目指す上で、最も基本的かつ重要なアプローチが「特別受益」の主張です。
特別受益とは、特定の相続人が被相続人(亡くなった方)から生前に受けた、遺産の前渡しと評価できるような特別な利益のことを指します。
これをきちんと主張・立証することで、その贈与額を「みなし相続財産」として遺産の総額に加算させることができます。結果として、遺留分の計算の基礎となるパイそのものが大きくなり、あなたが請求できる金額も増えるのです。
2019年7月1日の民法改正により、原則として相続開始前10年以内の特別受益が遺留分算定の基礎財産に算入されることになりました。ただし、10年を超える贈与でも当事者間において遺留分権利者に損害を与えることを知っていた等の例外的事情が認められる場合は、算入され得ます。
特別受益に該当する贈与の具体例
どのような贈与が特別受益と認められやすいのでしょうか。ご自身のケースに当てはまるものがないか、以下の例を参考に記憶を整理してみてください。
- 生計の資本としての贈与
- 住宅購入資金、新築・増改築の資金援助
- 事業の開業資金、運転資金の援助
- 借金の肩代わり(返済資金の援助)
- 婚姻や養子縁組のための贈与
- 一般的な結納金や嫁入り道具の範囲を大きく超える持参金、支度金
- 結婚式の費用援助(社会通念上、親の扶養義務の範囲を超える部分)
- 高額な学費・留学費用
- 他の兄弟姉妹と比較して著しく高額な学費(例:私立大学医学部の学費など)
- 長期間にわたる海外留学の費用
- その他
- 特定の相続人だけに渡された高額な金銭
- 特定の相続人を受取人とする生命保険金(一概には言えませんが、取得した遺産額と比較して受領した保険金額が著しい大きい場合は特別受益に準じて扱われることがあります)
特別受益を証明するための証拠集めと主張方法
特別受益を主張するためには、残念ながら「あの時、援助してもらっていたはずだ」という記憶だけでは不十分です。
客観的な証拠によって、その事実を相手方や裁判所に示す必要があります。
以下のような資料が有効な証拠となり得ます。
- 銀行の取引履歴(振込明細):被相続人の口座から相手方の口座へ、まとまった金額が振り込まれた記録。
- 不動産の登記事項証明書(登記簿謄本):不動産の購入資金援助があった場合、購入時期や資金の流れを推認する材料になります。
- 被相続人の日記、手紙、メモ、メール:「〇〇に開業資金として××円を渡した」といった記載。
- 相手方自身の言動:過去に贈与の事実を認めるような発言をしていた場合、その録音や、他の親族による証言。
直接的な証拠が乏しい場合でも、諦める必要はありません。例えば、「相手方は当時、自身の収入だけでは購入できるはずのない高額な不動産を手に入れている」といった状況証拠を積み重ね、合理的な推認を促す主張を組み立てていくことも状況によっては可能です。
このような主張の構成には高度な専門知識が求められるため、弁護士にご相談いただくことをお勧めします。
【テクニック2】不動産・株式の「評価額」を適正に見直し、請求額を上げる
遺産の中に土地や建物などの不動産、あるいは非上場の会社の株式が含まれている場合、その「評価額」が遺留分の金額を左右する極めて重要な要素となります。
特に不動産が絡む相続では、共有持分をどう扱うかという問題も生じがちです。詳しくは「相続した遺産に土地や建物の共有持分が存した場合の注意点と分割方法」のページでも解説していますが、まずは個々の財産の評価額を適正に把握することが先決です。
なぜ「時価」での評価が重要なのか?
相続が発生すると、多くの場合、相続税の申告のために財産評価が行われます。不動産であれば「路線価」や「固定資産税評価額」が用いられるのが一般的です。
しかし、遺留分侵害額を計算する際の不動産評価は、これらの相続税評価額ではなく、相続開始時点での「時価(実際の取引価格)」を基準とするのが原則です。
そして多くの場合、時価は路線価や固定資産税評価額よりも高くなる傾向にあります。路線価や固定資産税評価額は時価より低くなることが多く、一般的には路線価が時価の目安として概ね8割、固定資産税評価額は地域等により変動しますがおおむね実勢の7割程度とされる例が多いです。ただし具体的な比率は地域・時期・資産ごとに差があるため、個別の査定で確認する必要があります。
相手方が相続税申告時の評価額を前提に遺留分を計算してきた場合、それを「時価」で評価し直すことで、遺産の総額が上がり、結果として請求できる遺留分も増額される可能性が高いのです。
また、相手方が不動産業者の査定書を証拠として提出して時価である旨主張してきた場合も、不当に評価額が低く抑えられている場合もあります。不動産の適切な評価額を踏まえているかも確認する必要があります。
これらは、請求する側にとって非常に大きなポイントです。

不動産の時価を調べる具体的な方法
では、具体的にどうやって不動産の時価を調べればよいのでしょうか。いくつかの方法が考えられます。
- 不動産業者の査定を取得する
最も手軽な方法です。対象不動産の近隣にある複数の不動産業者に簡易査定を依頼します。無料で対応してくれることが多く、おおよその時価の相場観を掴むことができます。交渉の初期段階では、これらの査定書が有効な資料となります。 - 類似の取引事例を調べる
国土交通省が運営する「不動産情報ライブラリ」などを利用して、近隣の類似物件が実際にいくらで取引されたかを調べることができます。客観的なデータとして、交渉材料の一つになります。
どの方法を選択すべきかは、事案の複雑さや相手方との交渉状況によって異なります。まずは複数の不動産業者から査定を取り、相手方の提示額との乖離を確認することから始めるのが現実的でしょう。
【テクニック3】被相続人の預貯金の「使い込み」を調査し取り戻す
「生前、親の預金通帳は兄が管理していたが、亡くなった後に残高を見たらほとんど残っていなかった…」。このようなケースでは、他の相続人による預貯金の「使い込み(不当な引き出し)」が疑われます。
これは相続人間の感情的な対立を招きやすい非常にデリケートな問題ですが、もし使い込みが事実であれば、その金額は本来遺産に含まれるべきものであり、遺留分の算定基礎に加えるよう主張することができます。
預貯金の使い込みを疑うべきサインとは?
使い込みの可能性を検討すべき典型的な状況には、以下のようなものがあります。
- 被相続人が高齢で、判断能力が低下していた時期に、多額の出金が繰り返されている。
- 入院や施設への入所後など、被相続人自身がお金を使うはずのない時期に、頻繁な引き出しがある。
- 引き出された金額が、当時の医療費や介護費用、生活費として説明するには不自然に高額である。
- 特定の相続人が通帳やキャッシュカードを管理しており、他の相続人にその内容を開示しようとしない。
- 被相続人の死亡直前に、まとまった金額が引き出されている。
金融機関での取引履歴の取り寄せ方と分析のポイント
使い込みの疑いがある場合、まず行うべきは証拠の確保です。具体的には、被相続人名義の預貯金口座の取引履歴(入出金明細)を金融機関から取り寄せることから始めます。
相続人であれば、戸籍謄本(被相続人の死亡の事実と、自身が相続人であることを証明するもの)、身分証明書、実印、印鑑証明書などを持参すれば、金融機関の窓口で手続きができます。
取り寄せた取引履歴を分析する際は、以下の点に注目します。
- 出金の時期:被相続人の判断能力が低下したとされる時期以降の出金に絞って確認します。
- 出金の金額と頻度:生活費とは考えにくい高額な出金や、ATMの引き出し限度額での連続した出金がないかを確認します。
- 出金の方法:窓口での引き出しか、ATMでの引き出しか。窓口の場合、伝票の筆跡が誰のものかという点が問題になることがあります。
取引履歴の保存期間は金融機関や取引の種類によって異なります(短期のものから10年程度のものまである)。具体的な期間や取得可否は各金融機関により差があるため、早めに照会・手続きを行うことが重要です。
遺留分侵害額請求で損をしないための注意点と弁護士への相談
これまで解説してきたテクニックを駆使して適正な遺留分を請求する上で、絶対に忘れてはならない注意点があります。それは「時効」の存在です。
絶対に知っておくべき「1年」の時効
遺留分侵害額請求権は、①相続の開始及び遺留分を侵害する遺贈・贈与を「知ったとき」から1年で消滅時効にかかり、②相続開始から10年で除斥期間により行使できなくなります。
- 相続が開始したこと(被相続人が亡くなったこと)
- 自分の遺留分を侵害する贈与や遺贈があったこと
「知った時」がいつかという点は解釈が分かれることもありますが、例えば「遺言書の内容を知らされた時」などが典型例です。この1年という期間は非常に短く、財産調査や交渉をしている間にあっという間に過ぎてしまう可能性があります。
時効の完成を防ぐためには、まずは「配達証明付き内容証明郵便」を送付し、「私は遺留分侵害額を請求します」という意思表示を相手方に対して明確に行うことが極めて重要です。これにより、短期の時効の成立を防ぐことができます。
弁護士に依頼するメリットとタイミング
遺留分侵害額請求は、ご自身で行うことも不可能ではありません。しかし、ここまでお読みいただいたように、その請求額を適正なものにするためには、専門的な知識と多くの時間、そして労力が必要です。
弁護士にご依頼いただくことで、以下のようなメリットが得られます。

- 正確な財産調査:預貯金の取引履歴の取得や不動産の評価はもちろん、弁護士会照会といった専門的な手段を用いて、ご自身では調査が難しい財産についても明らかにできる場合があります。
- 法的に的確な遺留分額の計算:特別受益や寄与分、財産の評価など、複雑な要素をすべて考慮した上で、法的に正当な請求額を算出します。
- 相手方との冷静かつ有利な交渉:感情的な対立に陥りがちな親族間の交渉を、法律の専門家として冷静に進め、依頼者の代理人として有利な解決を目指します。
- 調停・訴訟への適切な対応:交渉で話がまとまらない場合、家庭裁判所での調停や訴訟手続きに移行しますが、その際もすべての手続きを代理し、依頼者の権利を守るために尽力します。
ご相談いただく最適なタイミングは、「遺言書の内容や遺産の分け方に少しでも疑問や不満を感じた時点」です。時効の問題もありますし、時間が経つほど証拠も集めにくくなります。早めにご相談いただくことで、より多くの選択肢の中から最善の解決策を見つけ出すことが可能になります。
もしお困りでしたら、当事務所の遺留分に関する初回無料相談はこちらをご利用ください。
まとめ|適正な遺留分を獲得するために、まずはご相談ください
遺留分は、法律で認められた相続人の正当な権利です。しかし、その権利を現実の「適正な金額」として手にするためには、受け身の姿勢では不十分な場合が少なくありません。
今回解説したように、
- 隠れた「特別受益」はないか
- 不動産や株式などの「財産評価」は適正か
- 預貯金の「使い込み」はなかったか
といった専門的な視点から遺産全体を見直し、積極的に主張していくことが、ご自身の権利を守る上で不可欠です。
これらの調査や交渉をご自身だけで行うことには、精神的にも時間的にも大きな負担が伴います。また、親族間の問題であるからこそ、感情的な対立が深まり、話し合いがこじれてしまうケースも多々あります。
吉口総合法律事務所では、ご相談者様のお話を丁寧に伺い、何が最も不安で、どのような解決を望んでいらっしゃるのかを深く理解することから始めます。そして、ご相談から事件の終了まで、一人の弁護士が一貫して担当し、あなたの伴走者として問題解決にあたります。
「相談してよかった」と思っていただけるよう、全力でサポートいたします。一人で悩まず、まずはその胸の内をお聞かせください。お問い合わせはこちらからお気軽にどうぞ。

代表弁護士の吉口 直希です。
東京都中野区の「吉口総合法律事務所」は、JR総武線「東中野」駅西口より徒歩30秒のアクセスしやすい法律事務所です。
相続・遺言、離婚・男女問題、借金問題、など、身の回りの法律問題全般に対応しております。地域に根ざしつつ、全国からのご相談も承っておりますので、遠方の方もお気軽にお問い合わせください。
弊所では、相続、離婚等の一部業務について30分無料面談相談を行っております。また、事前のご予約いただければ夜間のご相談にも対応可能です。お一人で悩まず、まずはあなたの状況をお聞かせください。
【解決事例】遺留分侵害額請求が長期化|請求された側から対応する方法
【解決事例】相手が動かない遺留分請求…こちらから訴訟を起こし長期紛争を解決
※以下の事例はご相談内容を元に当事者の属性等を修正したものになります。
遺留分侵害額請求を受けたものの、相手方からの連絡が途絶え、話が全く進まない――。このような状況は、請求された側にとって大きな精神的負担となります。「いつまでこの状態が続くのか」「このまま放置して大丈夫なのだろうか」という不安ばかりが募り、日常生活にも影響を及ぼしかねません。
当事務所では、まさにこのような膠着状態に陥ったご相談者様と共に、請求された側から主体的に訴訟を提起することで、長期化していた紛争を解決に導いた経験がございます。
本記事では、この事例をご紹介するとともに、遺留分請求を放置するリスクや、請求された側から取り得る対抗策について、弁護士が詳しく解説します。
ご相談の背景:遺留分請求はされたが、話が進まず時間だけが過ぎていく
ご相談者様(長女)は、お父様を亡くされ、相続を迎えました。お父様は生前、「全財産を長女に相続させる」という内容の遺言書を作成されていました。これに対し、他の妹4名から、内容証明郵便で遺留分侵害額請求が届きました。
ご相談者様としては、法律で定められた権利である以上、遺留分を支払う意思はありました。しかし、請求をしてきたご兄弟側から、具体的な遺留分額の提示や協議の申し入れが一切なく、時間だけが過ぎていきました。
遺産には複数の収益不動産や不動産管理会社の株式などが含まれており、財産評価も複雑です。関係者が多いことも相まってか、相手方もどう進めてよいか分からなくなっているのかもしれません。しかし、このままではいつまでも問題が解決せず、不動産の経営や今後の生活設計にも支障が出てしまいます。
このような膠着状態を打開したいとの思いで、当事務所にご相談に来られました。
解決への道筋:請求された側から「支払うべき金額」を確定させる訴訟を提起
通常、遺留分に関する訴訟は、請求する側が金銭の支払いを求めて提起するものです。しかし、本件のように請求する側が動かず紛争が長期化している場合には、請求された側から「支払うべき債務の不存在」あるいは「存在するとしても、その金額は〇〇円に限られる」ことを確認する訴訟(債務不存在確認訴訟など)を提起することが可能です。
当事務所では、ご相談者様が主体的に紛争を解決したいという強いご意向を踏まえ、この方法を選択しました。ご相談者様を原告として訴訟を提起し、こちらが相当と考える遺留分額を算定して裁判所に主張しました。これにより、相手方(被告)は裁判の場で具体的な反論をせざるを得なくなり、紛争の解決に向けて手続を進めることができました。
裁判では、やはり収益不動産や非上場である資産管理会社の株式、会社への役員貸付金などの評価額が主な争点となりました。また、法的な論点とは別に、算出された遺留分額をどのように支払うか(支払原資)も重要な課題でした。
最終的に、専門的な知見に基づき当方の主張を展開した結果、相手方の当初の請求見込み額を大幅に減額した内容で、裁判上の和解を成立させることができました。
また、遺留分の支払原資についても、不動産を原資とした資金調達が可能になり、これにより、長期間にわたる紛争に終止符を打ち、ご相談者様は安堵の表情を取り戻されました。
弁護士コメント:放置は危険!主体的な解決が重要です
遺留分を請求された側から、支払うべき金額を確定させるための法的手続きがあることは、あまり知られていません。今回の事例のように、この手続きを知らないために、ただ相手の出方を待つしかなく、貴重な時間が失われてしまうケースは少なくありません。
相手からの連絡が途絶えた場合、「このまま時効になるのでは?」と期待される方もいらっしゃるかもしれません。しかし、一度でも遺留分侵害額請求の意思表示(内容証明郵便など)がなされている場合、そこから5年間は金銭債権として時効にかかりません。つまり、5年が経過するまでの間は、いつ訴訟を起こされてもおかしくない不安定な状態が続くのです。
紛争を根本的に解決するためには、受け身の姿勢ではなく、今回の事例のように自ら訴訟を提起することも含め、主体的に解決を図ることが極めて重要です。
遺留分請求を放置するとどうなる?消滅時効の仕組みとリスク
「相手が請求してきたのに、その後何も言ってこない」という状況で、放置し続けることには大きなリスクが伴います。その理由を理解するために、遺留分の消滅時効の仕組みを知っておくことが重要です。
注意!遺留分の時効は「2段階」で進行する
遺留分侵害額請求権の時効は、実は2段階の構造になっています。
- 意思表示までの時効(1年または10年)
遺留分権利者が、相続の開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年間、請求の意思表示をしないと時効によって権利が消滅します。また、これらの事実を知らなかったとしても、相続開始の時から10年が経過したときも同様です。(民法1048条) - 金銭債権の時効(5年)
上記の期間内に遺留分侵害額請求の意思表示(通常は内容証明郵便などで行われます)がなされると、遺留分は具体的な「金銭支払請求権」に変わります。この金銭債権は、一般的な債権と同様に、権利を行使できることを知った時から5年間行使しないと時効によって消滅します。(民法166条1項1号)
「請求後に放置」された場合の危険性
ご相談者のケースも含め、すでに相手方から内容証明郵便などで請求を受けている場合は、上記の「1年の時効」はクリアされており、相手方は遺産を取得した相続人に対して「5年間」有効な金銭債権を持っている状態だということです。
この状態で放置し続けると、以下のようなリスクが考えられます。
- 突然の訴訟提起:相手方の都合の良いタイミングで、ある日突然、裁判所から訴状が届く可能性があります。
- 遅延損害金の発生:具体的な請求額を伴って遺留分侵害額請求の意思表示が到達した場合、到達した日の翌日から、支払いが完了する日まで、法定利率(現在は年3%)による遅延損害金が発生し続けます。放置期間が長引くほど、支払うべき金額は膨らんでいきます。
- 精神的負担の継続:いつ請求が再開されるか分からないという不安定な状態が続き、精神的な平穏が害されます。
このように、「請求後の放置」は決して得策ではありません。むしろ、時間が経つほどご自身の立場が不利になる可能性もあります。
請求された側からの反論!遺留分額の主な争点とは
相手方から請求された金額を、そのまま受け入れる必要はありません。特に遺産の評価額については、大きな争点となることが多く、請求された側から適正な評価額を主張することで、支払額を減額できる可能性があります。
遺留分侵害額請求をされた側の反論については、遺留分侵害額請求をされた場合どのように対応をすればよいかのページでも解説している通り、複数の反論があり得ます。

争点①:不動産の評価額はいつの時点で、どう決めるか
遺産に不動産が含まれる場合、遺産全体の評価額に対する割合が大きいことから、その評価額が遺留分の算定額に最も大きな影響を与えることが多いです。不動産の評価には、以下の点を理解しておくことが重要です。
- 評価の基準時:遺留分を算定する際の不動産の評価は、「相続開始時(被相続人が亡くなった時点)」の価額が基準となります。
- 評価の方法:不動産の評価額には、固定資産税評価額、路線価、公示価格など様々な指標がありますが、遺留分の算定においては、これらはあくまで参考に過ぎません。原則として、「実勢価格(時価)」、つまり実際に市場で売買されるであろう客観的な価額で評価されます。
多くの場合、請求する側は自分たちに有利な高い評価額を主張してきます。しかし、請求された側としては、不動産業者による査定や不動産鑑定士などの専門家に依頼して客観的な鑑定評価を取得し、適正な時価を主張することが重要です。どの評価方法を用いるかで、遺留分額は数百万円、数千万円単位で変わることも珍しくありません。
争点②:非上場株式の評価額はどう算定するか
冒頭の事例にもあったように、被相続人が同族会社を経営していた場合など、遺産に非上場株式が含まれることがあります。非上場株式は、上場株式のように客観的な市場価格がないため、その評価は非常に複雑で専門的です。
会社の純資産、収益性、配当実績、類似業種の他社の株価などを総合的に考慮して評価額を算定しますが、どの評価方法を重視するかによって、株価は大きく変動します。そのため、相手方が提示してきた評価額の根拠を精査し、必要であれば公認会計士や税理士といった専門家と連携して、こちらからも適切な評価額を算定・主張していくことが不可欠です。安易に相手の主張を鵜呑みにする必要はありません。
その他に確認すべきポイント(特別受益など)
財産評価以外にも、遺留分額を減額できる可能性のある要素として「特別受益」があります。
特別受益とは、遺留分を請求してきた相続人が、被相続人から生前に受けた特別な利益(贈与)のことです。例えば、以下のようなものが該当する可能性があります。
- マイホーム購入資金の援助
- 事業の開業資金の援助
- 多額の金銭の贈与
もし、請求者側にこのような特別受益があれば、それは遺産の前渡しとみなされ、遺留分額から控除できる可能性があります。過去の経緯を丁寧に振り返り、反論の材料がないか検討することが重要です。

長期化する遺留分トラブルは弁護士にご相談ください
遺留分侵害額請求をされたものの、相手が動いてくれずにお困りの方へ。これまで解説してきたように、この問題を放置し続けることには多くのリスクが伴います。不動産や非上場株式の評価、特別受益の主張など、遺留分を巡る争いは法的に極めて専門的であり、ご自身だけで対応するには限界があります。
相手の動きが止まっている今こそ、こちらから主体的に動き、問題を解決に導く必要がございます。当事務所では、ご相談者様のお話を丁寧に伺い、膠着した状況を打開するための最善の策をご提案いたします。
当事務所は相続・不動産分野に注力しており、財産評価が絡む事案にも対応しています。ご相談から事件終了まで、一人の弁護士が一貫して担当し、進捗を丁寧にご報告することで、ご依頼者様の不安を少しでも和らげられるよう努めています。
「このままでは埒が明かない」「専門家の意見を聞きたい」とお考えでしたら、ぜひ一度、当事務所の初回無料相談をご利用ください。あなたが一歩前に進むためのお手伝いをさせていただきます。お気軽にお問い合わせください。

代表弁護士の吉口 直希です。
東京都中野区の「吉口総合法律事務所」は、JR総武線「東中野」駅西口より徒歩30秒のアクセスしやすい法律事務所です。
相続・遺言、離婚・男女問題、借金問題、など、身の回りの法律問題全般に対応しております。地域に根ざしつつ、全国からのご相談も承っておりますので、遠方の方もお気軽にお問い合わせください。
弊所では、相続、離婚等の一部業務について30分無料面談相談を行っております。また、事前のご予約いただければ夜間のご相談にも対応可能です。お一人で悩まず、まずはあなたの状況をお聞かせください。
遺産分割協議前の遺産の処分・代償金の未払い
遺産分割協議前の処分や代償金の未払いに対する解決方法
「相続手続きに必要な書類だと言われて実印を渡したら、いつの間にか父の預貯金が全額引き出されていた」
「遺産分割協議で家を私がもらう代わりに、弟に代償金を支払うと約束したのに、一向に振り込まれない」
このような場合において、どのような手続を利用して権利を実現すればよいでしょうか。
相続に関する問題であるため、家庭裁判所を利用して遺産分割を行えば良いと考えがちですが、地方裁判所による民事訴訟による解決が望ましいケースもあります。
この記事では、相続にまつわる金銭トラブル、特に「遺産分割協議前の遺産の処分」と「遺産分割協議後の代償金未払い」という2つのケースに焦点を当て、なぜ家庭裁判所での話し合い(調停)ではなく、民事訴訟が有効な解決策となり得るのかを、当事務所が実際に解決した事例を交えながら、解説していきます。

【解決事例】遺産分割前の遺産の処分を民事訴訟で解決したケース
ここでは、当事務所が担当したご相談事例の概要をご紹介します。
ご自身の状況と重ね合わせながら、民事訴訟がどのように進み、どのような結果をもたらすのか、具体的なイメージを掴んでみてください。
※これは当事務所が実際に取り扱った事例を匿名化したものであり、同様の結果を保証するものではありません。
問題となった事例の概略は次のようなものでした。
項目 内容 相続関係 被相続人(父)の相続人は子二人の姉弟であり、弟がご相談者 経緯
・姉から遺産分割に必要であるからと言われ、遺産である父名義の預貯金の解約書類に印を押すよう求められ、解約金は姉の口座に入金された。
・その後、姉からは連絡が途絶えたため、解約金を回収するために弁護士のもとを訪問した。
・弁護士から姉宛に連絡書面を発送するも、姉からは何らの回答がなされなかった。
問題の所在 姉に対してどのような権利に基づきどのような裁判手続を経ればよいか。 弁護士がとった解決策 姉を被告として、預貯金の解約金の半額を請求する民事訴訟を提起。 弁護士が訴訟を提起したところ、相手方(お姉様)の弁護士は、「この問題は家庭裁判所の遺産分割で解決すべきだ」と主張しました。
しかし、遺産分割の対象となる遺産は、遺産分割時において現存する遺産でなければなりません。
(出典:京都家庭裁判所 遺産分割手続案内 「3 遺産の存在とその内容」)
したがって、すでに相手方によって預貯金が全額解約されている以上、もはや「遺産」そのものは存在せず、弟が持つ権利は姉に対する金銭債権に変わっていると考えられます。
この戦略が功を奏し、最終的には裁判所からの和解勧告を経て、ご依頼者の請求の大半が認められる形で解決に至りました。
この事例は、相続トラブルであっても、その性質によっては遺産分割調停よりも民事訴訟の方がより直接的かつ迅速な解決に繋がる可能性があることを示しています。
なぜ遺産分割調停ではなく「民事訴訟」が有効なのか?
「相続の争いは、まず家庭裁判所で話し合う(遺産分割調停)のが普通じゃないの?」
多くの方がそう思われるかもしれません。しかし、今回取り上げている「遺産分割前の遺産の処分」や「代償金未払」といった金銭トラブルは、通常の遺産分割とは少し性質が異なります。ここでは、なぜ民事訴訟が有効な手段となるのか、2つのケースに分けて詳しく見ていきましょう。
ケース1:遺産分割協議「前」の遺産の処分
遺産分割の話し合いが始まる前に、特定の相続人が被相続人(亡くなった方)の預貯金などを解約し、自分のものにしてしまうケースです。
前述の通り、遺産分割調停は、あくまで「残っている遺産を、誰が、どのように分けるか」を話し合う手続きです。そのため、すでになくなってしまったお金を取り返す場としては、必ずしも最適とは言えません。
遺産分割調停の場において、相手方が遺産を解約した旨の事実を主張することは可能ですが、相手方が自ら解約をした事実を認めない場合には、証拠によって処分者の認定が必要となり、結局は別途訴訟を起こさなければならないことも少なくありません。
一方で、地方裁判所(または簡易裁判所)に起こす民事訴訟は、「処分された遺産の多く取得している部分を他方の相続人に返還すべきか」を直接的に請求する手続きです。
目的が明確であるため、相手方が争う姿勢を見せても、証拠に基づいて裁判所が判断を下してくれます。迅速かつ根本的な解決を目指すのであれば、民事訴訟が非常に有効な手段となるのです。
ケース2:遺産分割協議「後」の代償金未払い
今回ご紹介した事例とは異なりますが、遺産分割協議が無事にまとまり、「誰がどの財産を取得し、その代わりに誰にいくら支払う」といった内容を記した遺産分割協議書も作成した、それにもかかわらず、約束された代償金が支払われない、というケースです。
この状況は、もはや相続の問題というよりも、遺産分割協議書という「合意」が守られていない「債務不履行」の問題と捉えるべきです。
遺産分割調停は、遺産分割が未了の場合にこれを行います。一方で代償金の未払いは遺産分割成立後の問題です。このような場合は、遺産分割協議書を証拠として、地方裁判所に「契約通りにお金を支払いなさい」と求める民事訴訟(代償金請求訴訟)を起こすのが、最も直接的で正当な手続きです。
裁判所の管轄はどこ?家庭裁判所と地方裁判所の違い
ここで、少し複雑に感じるかもしれない「裁判所の管轄」(どの裁判所にどのような裁判を申し立てるか)について整理しておきましょう。日本の裁判所にはいくつかの種類があり、それぞれ役割が異なります。
| 裁判所 | 主な役割 | 今回のケースでの関連手続き |
|---|---|---|
| 家庭裁判所 | 家庭内の紛争(離婚、親子関係など)や相続に関する手続き(遺言の検認、遺産分割など)を扱う。 | 遺産分割調停・審判 |
| 地方裁判所 | 個人間・企業間の金銭トラブルなど、一般的な民事事件を扱う。証拠に基づき、法的な権利関係を確定させる。 | 代償金等の金銭請求訴訟 |
簡単に言えば、「遺産の分け方」で揉めている場合は家庭裁判所、「特定の金銭の支払い」を求める場合は地方裁判所が管轄となります。
今回のような「遺産分割協議前の遺産の処分」や「代償金未払」は、まさしく「特定の金銭の支払い」を求めるケースですので、地方裁判所で民事訴訟を起こすのが適切なのです。
民事訴訟で権利を取り戻すための3つのステップ

では、実際に民事訴訟を通じてご自身の権利を取り戻すためには、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。ここでは、そのプロセスを3つのステップに分けてご説明します。法的な手続きに不安を感じるかもしれませんが、一つひとつ着実に進めていくことが解決への道を開きます。
ステップ1:証拠を集める
民事訴訟において、最も重要と言っても過言ではないのが「証拠」です。裁判所は、当事者の言い分だけでなく、客観的な証拠に基づいて事実を認定し、判断を下します。どのような証拠が必要になるかは、ケースによって異なります。
- 遺産の処分の場合:
- 被相続人の預金口座の取引履歴や解約書類の写し(金融機関で取得できます)
- 相手方が解約や払い戻しを行ったことを裏付ける資料
- 代償金未払いの場合:
- 遺産分割協議書
何が有効な証拠となり得るのか、どのように集めればよいのか、判断に迷うことも多いでしょう。この段階から弁護士にご相談いただくことで、的確なアドバイスを受け、有利な証拠を効率的に収集することが可能になります。
ステップ2:相手方に対して請求を行う
いきなり訴訟を起こすのではなく、その前段階として書面を送り考えを確認することが有効な場合があります。
既に連絡を行ったにもかかわらず連絡を無視されている場合は、弁護士名義で書面を送付することで、相手方に対して法的対応の準備があることを明確に伝え、交渉による解決につながる場合があります。
なお、相手方が無視をすることが確実であれば、ステップ3に直ちに移行することもあります。
ステップ3:訴訟を提起する

連絡書面を送っても相手が支払いに応じない場合、いよいよ最終手段である訴訟提起へと進みます。
訴訟を提起するには、「訴状」という書面を作成し、必要な証拠と共に管轄の裁判所(地方裁判所または簡易裁判所)に提出する必要があります。訴状には、請求の趣旨(何を求めるか)や請求の原因(なぜそれを求めるか)などを法的に整理して記載しなければならず、専門的な知識が不可欠です。
訴訟が始まると、通常は1ヶ月に1回程度のペースで「口頭弁論期日」が開かれ、お互いの主張や証拠を出し合います。最終的には、裁判所が「判決」という形で法的な判断を下すか、あるいは裁判の途中で「和解」によって解決することもあります。
この一連の手続きは非常に複雑で、一般の方がご自身だけで進めるのは負担が生じます。あなたの正当な権利を確実に実現するためにも、訴訟手続きは弁護士に任せることを強くお勧めします。
一人で悩まず、まずは弁護士にご相談ください

遺産分割前の財産処分や代償金の未払いといった問題は、単なる金銭トラブルにとどまらず、ご家族間の信頼関係を根底から揺るがす、非常につらく、大変な問題です。
しかし、私たち吉口総合法律事務所は、このような困難な状況に置かれた方々の権利を取り戻すお手伝いをしたいと願っています。
どの証拠を集めるべきか、どのような主張をすれば裁判所に認めてもらえるのか、そして、相手方とどのように交渉を進めていくべきか。私たちは、これまでの豊富な経験と専門知識を駆使し、あなたにとって最善の解決策を導き出します。
東京都中野区所在の吉口総合法律事務所では相続に関する30分無料相談を実施しております。
遺産分割前の遺産の処分や代償金の未払でお悩みの方はお気軽にご相談ください。

代表弁護士の吉口 直希です。
東京都中野区の「吉口総合法律事務所」は、JR総武線「東中野」駅西口より徒歩30秒のアクセスしやすい法律事務所です。
相続・遺言、離婚・男女問題、借金問題、など、身の回りの法律問題全般に対応しております。地域に根ざしつつ、全国からのご相談も承っておりますので、遠方の方もお気軽にお問い合わせください。
弊所では、相続、離婚等の一部業務について30分無料面談相談を行っております。また、事前のご予約いただければ夜間のご相談にも対応可能です。お一人で悩まず、まずはあなたの状況をお聞かせください。
相手方相続人による遺留分侵害額請求の消滅時効の反論を排斥させた事例
遺言書の作成増加に伴い、遺留分侵害額請求のご相談が増加しています。
特に、「請求が遅れたため、消滅時効が成立している」と相手方から主張され、ご不安になるケースは少なくありません。
遺留分侵害額請求の消滅時効は、相続開始及び遺留分侵害を知った時から1年という短期間です。この短い時効を主張された場合、どのように対応すべきでしょうか。
本コラムでは、遺言書が届いたにもかかわらず「知らなかった」という具体的な事情をもって相手方の時効の主張を排斥した解決事例を、弁護士が詳しく解説します。
※ 本コラムの事案は、特定の状況を分かりやすく説明するため、事実にデフォルメを施しています。個別の事案により結論は異なりますので、具体的なご相談は弁護士までお願いいたします。
● 関連する内部リンク(当事務所のウェブサイトより)
- 遺留分侵害額請求全般について詳しく知りたい方はこちら:遺留分侵害額請求とは?弁護士に依頼するメリット
-
遺留分侵害額請求に対する反論について詳しく知りたい方はこちら:遺留分侵害額請求をされた際の有効な反論と対策
事例の概要と問題の所在
問題となった事例の概略は次のようなものでした。
| 項目 | 内容 |
| 相続関係 | 被相続人(父)の相続人は子二人の姉妹 |
| 遺言の内容 | 「全財産を姉に取得させる」という内容の遺言書を作成 |
| 経緯 |
・遺言書では遺言執行者が指定されており、遺言執行者が妹の自宅に遺言書と財産目録を郵送した。 ・その後、妹が遺留分侵害額請求の内容証明郵便を姉に発送(妹が父の死亡を知ったのが父の死亡から約2年後であったため、死亡を知ってから直ちに発送。) |
| 問題の所在 | 相手方(姉)が、遺留分侵害額請求の消滅時効(1年)が成立しているとして支払いを拒否 |
遺留分侵害額請求の根拠となる民法第1048条は以下の通り、請求期間を厳しく定めています。
民法第1048条(遺留分侵害額請求権の期間の制限)
(遺留分侵害額請求権の期間の制限)
第百四十八条 遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。
(出典:e-Gov法令検索 民法)
本件の最大の争点は、遺留分権利者である依頼者様が、「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時」がいつか、という点でした。
相手方の主張
相手方である姉は、この条文と遺言執行者から妹の自宅に遺言書の写しが郵送されている事実を根拠に、以下の主張を展開しました。
-
時効期間の徒過:請求が死亡から2年後であり、遺言書送付から1年を経過しているため、消滅時効は成立している。
-
了知の可能性:遺言書が自宅に郵送された時点で、依頼者は遺言の内容(遺留分侵害の事実)を「了知する可能性」があった。民法第1048条の「知った時」は、現実的な認識は不要で、了知可能性があれば足りる。
解決のための手段
当事務所は、相手方の消滅時効の主張を排斥するため、依頼者である妹様が、遺言書が送付されたときに遺言書の内容を「知った」わけではないという具体的事情を主張・立証する戦略をとりました。
1. 弁護士による具体的な反論
民法1048条の「知った時」は、単に書類が届いたという形式的な事実ではなく、遺留分権利者本人が現実的・具体的に事実を認識した時点でなければならないと主張しました。
そして、本件では具体的に事実を認識したどころか、一般的抽象的にも事実を認識していないと反論しました。
2. 証拠の収集・提出
反論を裏付けるため、以下の客観的な証拠を収集し、裁判所に提出しました。
-
施設の入所記録:遺言執行者からの遺言書送付当時、依頼者様が自宅におらず、継続的に施設に入所していた事実を立証。
-
面会状況の記録:ご家族が、依頼者の体調不良や面会制限を考慮し、父の死亡の事実や遺言書が送付された事実を依頼者様に伝えていなかった事実を立証。
3. 裁判所の判断と結果
これらの立証活動の結果、裁判所は、依頼者様が「相続の開始と遺留分侵害の事実を現実的・具体的に認識したとは認められない」と判断し、相手方の消滅時効の主張を排斥しました。また、相手方の抽象的な「了知する可能性があれば足りる」という主張も退けられました。
最終的に、依頼者様の遺留分侵害額請求が認められ、無事に金銭を取得することができました。
遺留分トラブルや消滅時効の紛争を未然に防ぐためには
本件の紛争は、遺言書が特定の相続人に全てを相続させる内容であったことと、遺留分侵害額請求の時効期間の短さから生じました。
-
遺言作成時の遺留分への配慮:遺言書を作成する立場である場合には、遺言書を作成する際に遺留分を侵害しない内容とするなど、紛争予防の措置を講じることが重要です。
-
相続発生後の迅速な行動:相続が発生した場合、遺言の有無や内容を確認したら、時効期間のカウントダウンが始まります。権利を失わないよう、速やかに弁護士に相談し、請求の意思決定と準備を迅速に行うことが不可欠です。
-
家族間の重要な情報共有:ご本人への配慮から情報の伝達を控えるケースもありますが、法的な権利に関わる重要な情報(死亡、遺言書など)については、体調を考慮しつつも、情報を伝える時期や方法を専門家と相談することが重要です。
弁護士からのコメント
遺留分侵害額請求における消滅時効は、依頼者様の権利が消滅するか否かの死活問題となるため、裁判でも徹底的に争われる論点です。
本事例が示す通り、単に書類が届いたという形式的な事実だけでは時効は完成しません。
一方で通常は、遺言書等の遺留分を侵害していることを裏付ける書類が届いたのであればその時点で相続の開始と遺言により遺留分が侵害されていることを知ったのではないかと考えられてしまうこともあります。したがって、遺留分を請求する側でもそうではないことを具体的に主張・立証する必要があります。
依頼者様ご本人の「知ることができなかった」という具体的な事情と客観的な証拠を積み重ねることによって、ようやく時効の主張を排斥することが可能となります。
「遺言書の存在を知るのが遅れた」「もう時効かもしれない」と不安を感じている方も、諦める前に一度、相続に強い弁護士にご相談ください。個別の事情を法的 に検討し、権利実現に向けて迅速に対応いたします。
東京都中野区所在の吉口総合法律事務所では、遺留分侵害額請求を行う側・請求された側のいずれの立場のご相談も承っております。遺留分トラブルや消滅時効の主張でお困りの方は、東京都中野区を拠点とする弊所までお気軽にご相談ください。

代表弁護士の吉口 直希です。
東京都中野区の「吉口総合法律事務所」は、JR総武線「東中野」駅西口より徒歩30秒のアクセスしやすい法律事務所です。
相続・遺言、離婚・男女問題、借金問題、など、身の回りの法律問題全般に対応しております。地域に根ざしつつ、全国からのご相談も承っておりますので、遠方の方もお気軽にお問い合わせください。
弊所では、相続、離婚等の一部業務について30分無料面談相談を行っております。また、事前のご予約いただければ夜間のご相談にも対応可能です。お一人で悩まず、まずはあなたの状況をお聞かせください。
【お知らせ】2025年夏季休業のお知らせ
弊所は、2025年8月12日(火)から8月15日(金)までの期間を夏季休業とさせていただきます。
何卒ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

代表弁護士の吉口 直希です。
東京都中野区の「吉口総合法律事務所」は、JR総武線「東中野」駅西口より徒歩30秒のアクセスしやすい法律事務所です。
相続・遺言、離婚・男女問題、借金問題、など、身の回りの法律問題全般に対応しております。地域に根ざしつつ、全国からのご相談も承っておりますので、遠方の方もお気軽にお問い合わせください。
弊所では、相続、離婚等の一部業務について30分無料面談相談を行っております。また、事前のご予約いただければ夜間のご相談にも対応可能です。お一人で悩まず、まずはあなたの状況をお聞かせください。
アスベストが原因で家族が亡くなった場合にどうしたらよいか
アスベスト(石綿)は、その危険性を理由として現在使用等が禁止されていますが、過去には工業上の利用価値があることを理由にアスベストが多数利用されていました。
工事現場等においてアスベストが利用されたことにより、アスベストに曝露してしまい、現在中皮腫や肺癌等の健康被害が生じてしまっている方やご家族がアスベストを原因とする病気により亡くなってしまったという方もいらっしゃいます。
それでは、ご自身や家族にこのようなアスベストを理由とする健康被害が生じてしまった場合には、どのように対応すべきでしょうか。
本コラムでは、主として、アスベストが原因で家族が亡くなってしまったご遺族の方のケースを中心として、アスベストが原因で家族が亡くなった場合にどのように対応をしていけばよいかについて解説を行います。
▼ アスベスト被害にあった際に弁護士を依頼するメリットについて解説したコラムはこちらをご参照ください。
アスベスト被害による労災保険金・建設アスベスト給付金を受け取れる
過去に仕事を行った際にアスベストを扱い、それによって肺がんや中皮腫等の病気になった場合は、労災保険による保険金が受領できる可能性があります。
労災保険とは、事業者が法人・個人事業主であるかにかかわらず必ず加入しなければならない保険であるため、労働者である以上は労災保険の適用があります(会社側が労災保険の手続をしていなかったとしても、労災保険の申請は可能です。)。
また、労災保険による保険金にとどまらず、アスベストに起因した肺がんや中皮腫等の病気にかかった場合、建設アスベスト給付金制度に基づきアスベスト給付金を受領できる可能性があります。
これらの制度は、どちらか一つではなく、併せて給付を受けることが出来るため、両方の制度について各申請先に申請することをお勧めいたします。
アスベストに起因する疾病を理由とする労災保険給付
それでは、アスベストを理由とする労災が認められ保険給付が受けられる場合、どのような保険給付が受けられるのでしょうか。
労災保険によって受領できる保険金の例としては、①療養費②休業補償③遺族補償④葬祭料等があげられます。
まず、①療養費とは、労働災害に起因する治療費を受領できる保険給付をいい、②休業補償とは、療養のために労働できない場合に所定の賃金相当分を受領できる保険給付をいいます。
また、③遺族補償とは、働いている人が亡くなった時にその遺族が年金等を受領できる保険給付をいい、④葬祭料とは、働いている人が亡くなった時に葬儀等を行った者が葬祭料として費用を受領できる保険給付を言います。
これらの各種労災保険給付もいずれか一つではなく併せて受領することができるため、それぞれについて請求書や必要書類を提出して行うことになります。
建設アスベスト給付金制度による給付金
前述のとおり、アスベストによる健康被害にあった場合、労災保険とは別に建設アスベスト給付金を受領することも可能です。
建設アスベスト給付金として受領できる金額は、症状によって異なりますが、例えば建設現場で働いていた方がアスベストを理由とする中皮腫や肺がん等により亡くなった場合には、1300万円の給付を受領することが出来ます。
もっとも、上記給付金は、病気の内容によっては従事していた期間や喫煙の習慣の有無によって減額されることもあるため、その点について留意しておく必要があります。
アスベストに起因する労災やアスベスト給付金はどのような場合に認められるか
アスベストを理由とする労災はどのような場合に認定されるか
労災保険金を受領するためには、「業務上疾病にかかった」といえることが必要になります。
そして、アスベストの場合は、実際に罹った病気の内容によって労災が認められる具体的な要件が変わってきます。
例えば、中皮腫の場合は、①胸部エックス線写真で第1型以上の石綿肺所見があること②石綿ばく露作業従事期間が1年以上③最初のばく露作業を開始した時から10年未満で発症したものでないことという要件を充たせば、労災が認定されることになります。
また、肺がんの場合は、A,石綿肺の所見があることやB、広範囲の胸膜プラークがあり石綿ばく露作業従事期間が1年以上等の要件のいずれかを充たせば労災の認定要件を充たすことになります。
これらの要件を充たしていることを資料を添付する等して立証していく必要があります。
建設アスベスト給付金はどのような場合に支給されるか
「建設」アスベスト給付金という名称のとおり、①「日本国内において行われた石綿にさらされる建設業務」のうち、A.石綿の吹付けの作業に関する業務またはB.屋内作業場で行われた作業に関する業務に従事していたことが必要になります。
そして、②当該業務に従事していたことにより石綿(アスベスト)関連疾病にかかったという要件を充足することも必要になります。
「②当該業務に従事していていたことにより石綿(アスベスト)関連疾病にかかったこと」という要件については、支給要領では次のように記載されています。
すなわち、例えば中皮腫であれば、①胸部エックス線写真で第1型以上の石綿肺所見があること②石綿ばく露作業従事期間が1年以上③最初のばく露作業を開始した時から10年未満で発症したものでないこと等が要件となっています。
当該要件は前述の労災における要件と要件がほぼ同一であるため、事前に労災の認定を受けることが出来れば、建設アスベスト給付金の要件も充足しやすくなります。
アスベストによる労災保険金や建設アスベスト給付金を申請するためにはどうしたらよいか
それでは、実際に労災の保険金や建設アスベスト給付金を受領するためにはどのような手続を経ればよいでしょうか。
アスベストに起因する疾病を理由とする労災保険給付
アスベストを理由とする労災申請の場合は、最終ばく露事業場を管轄する労働基準監督署に労災保険の申請書を提出することになります。
労災保険の申請書は、厚生労働省のダウンロードページがあるため、そちらでダウンロードを行い、必要事項を記入することになります。
労災保険の申請書面を作成するにあたっては、前述のとおり労災が認定されるための労災認定基準があるため、アスベストに関連する業務に起因して病気にかかってしまったことを主張すると共に、証拠によって立証を行うことが重要になります。
建設アスベスト給付金制度による給付金
建設アスベスト給付金制度による給付金を受領するためには、厚生労働省宛に給付金の申請書を提出することになります。
労災の申請と同様に、申請書は、厚生労働省のダウンロードページがあるため、こちらもダウンロードを行った上で必要な情報を記載することになります。
建設アスベスト給付金制度の場合は、労災の認定の有無によって書式や手続が変わってくるため、労災の認定の有無に応じて書類を準備することに注意が必要になります。
労災の認定を受けている場合は、提出すべき必要書類が大幅に減りますので、建設アスベスト給付金制度を利用する前に労災認定を得ることがお勧めです。
終わりに
以上、アスベストが原因で家族が亡くなった場合にどうしたらよいかについて解説を行いました。
労災というのは頻繁に発生する者ではなく日常使う制度ではなく不慣れであることが通常であるため、ご自身で手続を進めた場合には、必要書類やその後の手続等に苦戦することもあり得ると思います。
東京都中野区所在の吉口総合法律事務所では、弊所関与のもとアスベストを理由とする労災の認定を受けた実績がございます。
アスベストを理由とする労災または建設アスベスト問題にお困りの方は吉口総合法律事務所までお気軽にお問い合わせください。

代表弁護士の吉口 直希です。
東京都中野区の「吉口総合法律事務所」は、JR総武線「東中野」駅西口より徒歩30秒のアクセスしやすい法律事務所です。
相続・遺言、離婚・男女問題、借金問題、など、身の回りの法律問題全般に対応しております。地域に根ざしつつ、全国からのご相談も承っておりますので、遠方の方もお気軽にお問い合わせください。
弊所では、相続、離婚等の一部業務について30分無料面談相談を行っております。また、事前のご予約いただければ夜間のご相談にも対応可能です。お一人で悩まず、まずはあなたの状況をお聞かせください。
【お知らせ】年末年始の営業について
弊所では、2024年12月27日(金)から2025年1月5日(日)までの期間を年末年始休業とさせていただきます。
何卒ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

代表弁護士の吉口 直希です。
東京都中野区の「吉口総合法律事務所」は、JR総武線「東中野」駅西口より徒歩30秒のアクセスしやすい法律事務所です。
相続・遺言、離婚・男女問題、借金問題、など、身の回りの法律問題全般に対応しております。地域に根ざしつつ、全国からのご相談も承っておりますので、遠方の方もお気軽にお問い合わせください。
弊所では、相続、離婚等の一部業務について30分無料面談相談を行っております。また、事前のご予約いただければ夜間のご相談にも対応可能です。お一人で悩まず、まずはあなたの状況をお聞かせください。
【お知らせ】北区立赤羽文化センターで相続に関する区民講座を行いました
弊所の吉口弁護士が北区立赤羽文化センターの区民講座として、「相談事案から学ぶ!後悔しないための相続対策」と題する相続セミナーを行いました。
区民講座は8月31日(土)午前10時30分から正午までの間に行われましたが、区民講座において、区民の皆様から相続に関する多数のご質問をいただきました。
東京都中野区の吉口総合法律事務所では、今後も皆様のお役に立つよう情報発信を続けていきたいと考えております。
相続等の法律問題でお困りの方は弊所までお気軽にお問い合わせください。

代表弁護士の吉口 直希です。
東京都中野区の「吉口総合法律事務所」は、JR総武線「東中野」駅西口より徒歩30秒のアクセスしやすい法律事務所です。
相続・遺言、離婚・男女問題、借金問題、など、身の回りの法律問題全般に対応しております。地域に根ざしつつ、全国からのご相談も承っておりますので、遠方の方もお気軽にお問い合わせください。
弊所では、相続、離婚等の一部業務について30分無料面談相談を行っております。また、事前のご予約いただければ夜間のご相談にも対応可能です。お一人で悩まず、まずはあなたの状況をお聞かせください。
【お知らせ】2024年夏季休業のお知らせ
弊所では、2024年8月13日(火)から8月16日(金)までの期間を夏季休業とさせていただきます。
何卒ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

代表弁護士の吉口 直希です。
東京都中野区の「吉口総合法律事務所」は、JR総武線「東中野」駅西口より徒歩30秒のアクセスしやすい法律事務所です。
相続・遺言、離婚・男女問題、借金問題、など、身の回りの法律問題全般に対応しております。地域に根ざしつつ、全国からのご相談も承っておりますので、遠方の方もお気軽にお問い合わせください。
弊所では、相続、離婚等の一部業務について30分無料面談相談を行っております。また、事前のご予約いただければ夜間のご相談にも対応可能です。お一人で悩まず、まずはあなたの状況をお聞かせください。
