【弁護士の解決事例】相続した借地権付建物の売却と使途不明金(孫への贈与)

はじめに:相続問題が複雑化し、お悩みではありませんか?

 「親が遺した実家を相続したけれど、土地は地主から借りている『借地権付建物』だった」「兄弟で遺産を分けようとしたら、亡くなった親の預金から多額の出金が見つかり、あなたが使い込んだのではないかと疑われてしまった」

 このような事例に直面した場合、問題をどのように解決すればよいか分からず、途方に暮れてしまうかもしれません。
 このような場合は、地主との交渉や他の相続人との話し合いを経なければならないため、精神的にも非常に大きなご負担になりえます。

 この記事では、実際に当事務所が解決に導いた「借地権付建物の売却」と「使途不明金の問題」が同時に発生した困難な相続事例をもとに、具体的な解決までの道のりを解説します。
 この記事が、上記のようなお悩みを抱えた方にとって、解決の役に立てれば幸いです。

相続問題の対象となっている借地権付きの古い建物。

【解決事例】借地権売却と使途不明金問題を同時に解決したケース

※本件事例は、事案を一部変更して掲載しています。

ご相談の背景

 ご依頼者様(妹)は、お母様が亡くなられたことによる相続手続を進めていました。相続人はご依頼者様と兄の2人です。お母様の遺産は、ご自身が住んでいた借地権付建物と預貯金のみでした。

 遺産分割協議を進める中で、お兄様から「母の預金口座から、使途が分からない多額の出金があるが使ったのではないか?」と追及を受けました。
 ご依頼者様は、お母様の意思で行われた贈与等について説明したものの、お兄様は納得せず、話し合いは完全に平行線となってしまいました。

 さらに、ご兄妹ともに実家(借地権付建物)に住む予定はなく、売却して現金で分けたいと考えていましたが、地主との関係もどう進めればよいか分からず、ご依頼者様は当事務所にご相談に来られました。

弁護士の介入と解決への道のり

 ご依頼を受け、2つの大きな問題の整理から着手しました。

1. 使途不明金問題への反論(孫への贈与の特別受益該当性の否定)

 お兄様が指摘した出金の一部は、お母様が生前、ご依頼者様のお子様(お母様から見てお孫様)に贈与したものでした。
 弊所の弁護士は、相手方に対し、次のような東京高裁平成21年4月28日決定(家月62巻9号75頁)の趣旨を踏まえ、本件出金は特別受益に当たらない旨を主張しました。
 すなわち、同決定は次の通り判示しています。

「特別受益として持戻しの対象となるのは,共同相続人に対する贈与のみであるから,その親族に対して贈与があったことにより共同相続人が間接的に利益を得たとしても,これは特別受益には該当しないものであり,これが実質的に共同相続人に対する贈与に当たると認められる場合にのみ,当該相続人に対する特別受益となるものというべき」

 同決定の趣旨によれば、相続人以外の親族に対する贈与によって相続人が間接的な利益を受けたとしても、それのみによって相続人に対する特別受益には該当しないということになります。上記裁判例を踏まえて相手方に反論を行いました。

 また、その他の出金についても、お母様ご自身が生活費として管理・使用していたことを丁寧に説明しました。
 その結果、お兄様もこの点については納得され、使途不明金に関する疑いは晴れました。

2. 借地権付建物の売却交渉

 次に、借地権付建物の売却手続きを進めました。幸いにも買主は見つかったのですが、地主が「借地権の譲渡(売却)は認めない」と、承諾を拒否したのです。

 そこで当職は、裁判所の手続きである「借地非訟」も視野に入れていることを伝え、地主側と粘り強く交渉を重ねました。
 この「借地非訟」という法的手続きが交渉の要素となり、最終的に地主から譲渡承諾を得ることに成功しました。
 無事に建物を売却し、売却代金を預貯金と合わせて、ご兄妹で公平に分割することができました。

 当初は感情的な対立と法律問題で膠着状態でしたが、弁護士が介入し、一つひとつ法的に問題を整理・交渉することで、ご依頼者様の笑顔を取り戻す形で円満な解決に至りました。

弁護士が解説する2つの大きな壁と乗り越え方

 先の事例は、相続で頻繁に起こりうる2つの典型的なトラブルが同時に発生したケースです。
 ここでは、それぞれの問題がなぜ起きるのか、そして法的にどう乗り越えればよいのかを専門家の視点から解説します。

複雑な相続問題における「地主の承諾拒否」と「使途不明金の疑い」という2つの壁と、それぞれの法的解決策を示した図解。

壁①:地主が「借地権付建物の売却」を承諾しない

 借地権は、あくまで「土地を借りる権利」です。
 そのため、その土地の上にある建物を第三者に売却(借地権の譲渡)する場合、原則として地主の承諾が必要となります。

 しかし、地主が「知らない人に土地を貸したくない」「これを機に土地を返してほしい」といった理由で承諾を拒否するケースは少なくありません。このような場合でも、諦める必要はありません。

 それが「借地非訟手続」です。これは、地主の承諾に代わる許可を裁判所に求める手続きです。裁判所が諸般の事情を考慮し、許可を与える判断をした場合、地主の承諾がなくても建物を売却できるようになります。

 今回の事例のように、実際に借地非訟を申し立てる前でも、弁護士が交渉方針の一つとして借地非訟手続の利用可能性を示しつつ協議することで、状況によっては地主側の理解が得られやすくなる場合があります(結果は個別事情によります)。
 地主との間で借地権付建物を売却する際の注意点は多岐にわたるため、専門家によるサポートが極めて重要です。

壁②:他の相続人から「使途不明金」を疑われる

 被相続人の生前に、その財産管理を特定の相続人が手伝っていた場合、他の相続人から「預金を使い込んだのではないか」と疑われるケースは後を絶ちません。

 特に、被相続人の判断能力が十分なうちに行われた「贈与」であっても、他の相続人がその事実を知らないと、トラブルに発展しがちです。
 今回の事例のように、相続人本人ではなく、その子供(被相続人から見て孫)への贈与が問題となることもあります。

 この点について、法律(民法第903条)は、相続人間の公平を図るため、特定の相続人が受けた「特別な利益(特別受益)」を遺産に持ち戻して計算する制度を定めていますが、前述の裁判例のとおり、あくまで特別受益は相続人に対する贈与であることが必要になります。

 つまり、「お孫さんへの学費の援助」は、直ちに「お母さん(相続人)への特別な利益」とは扱われない可能性が十分にあります。
 感情的な反論に対し、このような法的な根拠や判例を基に冷静に反論することが、問題解決の鍵となります。遺産預金の使い込みを疑われた際の反論には、専門的な知識が不可欠です。

複雑な相続問題を弁護士に相談するメリット

 今回の事例のように、不動産の問題と相続人間の感情的な対立が絡み合うケースでは、当事者同士での解決は極めて困難です。
 このような状況で弁護士にご相談いただくことには、大きなメリットがあります。当事務所では、遺産相続業務全般について、ご依頼者様のお力になれるよう尽力しております。

相談者の話を真摯に傾聴する吉口総合法律事務所の弁護士。

法的な根拠に基づき、有利な交渉を進められる

 地主との交渉や相続人間の話し合いは、感情論に陥りがちです。弁護士が代理人となることで、借地法や民法、そして関連する判例(裁判例)などの法的根拠に基づいて、冷静かつ論理的に交渉を進めることができます。
 相手方からしても、弁護士相手の交渉となった場合、合理的な反論を行う可能性が上がるため、結果として紛争の早期かつ公正な解決につながる可能性が高まります。

複数の問題を整理し、解決までの最適な道筋を立てられる

 借地権問題と遺産分割問題、どちらを先に解決すべきか、あるいは同時に進めるべきか。借地非訟や遺産分割調停といった複数の法的手続きを、どのタイミングで、どのように利用するのが最も効果的か。こうした複雑な戦略判断は、専門家でなければ難しいものです。
 弁護士は、問題となっている状況を整理し、ご依頼者様にとって最も負担が少なく、かつ最善の結果に至るためのロードマップを描くことができます。

精神的な負担を大幅に軽減できる

 地主や他の相続人と直接やり取りをすることは、想像以上に大きな精神的ストレスを伴います。
 弁護士が全ての窓口となり、交渉の矢面に立つことで、ご依頼者様は日々のストレスから解放され、仕事や家庭など、本来の生活に集中することができます。

まとめ:一人で抱え込まず、まずは専門家にご相談ください

 相続した建物に借地権の問題が絡んでいたり、他の相続人からあらぬ疑いをかけられていたり、複数の問題が重なると、解決への道筋は完全に見えなくなってしまいます。しかし、どのような複雑な問題にも、必ず解決の糸口はあります。

 大切なのは、一人で抱え込まず、早期に専門家へ相談することです。法律の専門家である弁護士に相談することで、問題点が整理され、具体的な解決策が見えてくるはずです。

 もし複雑な相続問題でお悩みでしたら、どうか一人で悩まず、相続に関するお悩みは【初回30分】無料相談をご利用ください。※30分超過後は、30分あたり5,500円(税込)の相談料がかかります。
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