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相続人が多数、中には行方不明者も…遺産分割を諦めていませんか?
「父が亡くなってから、もう何年も経ってしまった」
「相続人が多すぎて、誰が誰だか分からない。話し合いなんてとてもできそうにない」
「相続人の中に、どこに住んでいるか分からない人がいて、手続きが完全に止まってしまった」
相続が発生したものの、このように複雑な事情を抱え、遺産分割協議を始めることすらできずに途方に暮れていらっしゃる方は少なくありません。時間が経てば経つほど、相続関係はさらに複雑化し(数次相続)、問題は雪だるま式に大きくなっていきます。不動産が塩漬け状態になったり、他の相続人との関係が悪化したりと、精神的なご負担も生じるところです。
しかし、どれほど問題が複雑であったとしても解決の道筋は存在します。
この記事では、当事務所が実際に取り扱った「相続人が多数おり、中には行方不明者も含まれる」という極めて困難な事案を例に、どのように問題を解決していったのか、その具体的な道のりをご紹介します。
この記事をお読みいただくことで、ご自身の状況と重ね合わせながら、複雑な相続問題を解決するための具体的な法的アプローチと、そこから得られる希望を感じていただけることと思います。

【解決事例】相続人8名(行方不明者含む)・不動産の不法占有問題を解決
ここでは、当事務所で実際に取り扱ったご相談内容を、一部内容を変更・抽象化した上でご紹介します。
ご相談の概要:数次相続や代襲相続により相続人が8人に
ご依頼者は、約15年前に亡くなられたお父様(被相続人)の相続手続について、ご相談に来られました。
長年、遺産分割が行われないまま放置されていたため、その間に相続人であったご兄弟の一部も亡くなられ、そのお子さんやお連れ合いが新たに相続人となる「数次相続」が発生していました。その結果、最終的な相続人の数は、被相続人のお子さん、その配偶者、お孫さんなどを含め、合計8名にまで増えていました。
さらに、問題を複雑にしていたのは、以下の点です。
- 行方不明の相続人の存在:相続人の一人に外国籍の方がいらっしゃいましたが、現在どこにお住まいなのか、全く連絡が取れない状況でした。
- 遺産不動産の不法占有:唯一の遺産は地方にある不動産でしたが、その土地と建物を、全く関係のない第三者が無断で使用している「不法占有」の状態でした。
相続人が8名もいる上に、行方不明者と不法占有者まで存在する。まさに八方ふさがりの状況で、ご依頼者様は「もうこの不動産は諦めるしかないのではないか」と、長年悩み続けていらっしゃいました。
弁護士による解決への道のり
ご依頼を受け、当事務所の弁護士はまず、複雑な問題を一つひとつ整理し、解決に向けた戦略を立てました。
まず、相続人に外国籍の方が含まれていても、日本の法律に基づいて遺産分割を進めることが可能です。そして、遺産分割は原則として相続人全員の合意を要しますが、参加できない相続人がいる場合や合意が得られない場合には、不在者財産管理人の選任申立てや遺産分割調停・審判など家庭裁判所の手続きを利用して解決することが可能です。
この方針に基づき、以下の手順で解決へと進めていきました。

- 相続分譲渡による関係者の整理:
まず、8名の相続人全員に対し、弁護士から今回の事情を丁寧に説明し、今後の遺産分割手続への協力をお願いしました。
その中で、この相続問題にこれ以上関わりたくない、あるいは不動産を取得する意思はないという相続人の方々から、「相続分」を当方(ご依頼者様)に譲渡していただくことについて同意を得ました。これにより、手続きに関わる当事者を絞り込むことができ、意思決定をスムーズに進める環境を整えました。 - 不在者財産管理人の選任申立て:
次に行方不明の相続人については、家庭裁判所に対して「不在者財産管理人」の選任を申し立てました。
不在者財産管理人とは、行方不明者に代わってその方の財産を管理し、法的な手続きを行う代理人です。裁判所によって選任された不在者財産管理人が、行方不明の相続人に代わって遺産分割協議に参加することで、相続人全員の参加という要件を満たすことができます。 - 遺産分割調停の申立てと成立:
相続分の譲渡に同意されなかった相続人の方とは、家庭裁判所での「遺産分割調停」を通じて話し合いを行いました。
調停では、裁判所の調停委員が間に入ることで、感情的な対立を避け、冷静かつ公平な議論を進めることができます。最終的に、不動産の不法占有者問題をこちらで解決することを条件に、ご依頼者様が不動産全体を取得するという内容で調停が成立しました。 - 不法占有者との交渉と不動産の売却:
遺産分割が法的に確定した後、不動産を不法占有していた第三者との間で明け渡し交渉を行いました。そして無事に不動産の明け渡しを実現し、最終的にその不動産を売却することで、現金化することができました。
ご相談から数年にわたる手続きとなりましたが、長年の懸案であった相続問題を無事に解決し、ご依頼者様の肩の荷を降ろすことができました。
複雑な相続問題を解決する3つの法的アプローチ
上記の事例で用いたように、相続人が多数いる、行方不明者がいる、話し合いがまとまらないといった複雑な事案では、法的な手続きを戦略的に組み合わせることが解決の鍵となります。
ここでは、特に重要な3つのアプローチについて解説します。
① 相続関係から離脱する「相続分譲渡」
「相続分譲渡」とは、ご自身の法定相続分を他の相続人や第三者に譲り渡す手続きです。遺産分割協議がまとまる前であれば、いつでも行うことができます。
相続人が多数いる場合、「遺産には関心がない」「手続きに関わりたくない」と考える相続人がいることも少なくありません。そのような方に相続分を譲渡してもらうことで、遺産分割協議の当事者を減らし、話し合いをスムーズに進めることが可能になります。
事例のように、特定の相続人が遺産を取得したい場合に非常に有効な手段です。
相続分譲渡について、より詳しくは「【相続人多数】遺産分割が進まない問題を相続分譲渡で解決」のページもご参照ください。

② 行方不明の相続人がいる場合の「不在者財産管理人」
相続人の中に行方不明者がいる場合、その人を抜きにして遺産分割協議を進めることはできません。この問題を解決するのが「不在者財産管理人」制度です。
家庭裁判所に申し立てを行い、行方不明者(不在者)の財産を管理する人を選任してもらいます。選任された管理人は、不在者の代理人として遺産分割協議に参加します。もし遺産分割協議で不動産の売却など、不在者の財産を処分する必要がある場合は、別途家庭裁判所から「権限外行為許可」を得る必要があります。
この手続きは、民法第25条に定められています。
(不在者の財産の管理)
第二十五条 従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。
(出典:e-Gov法令検索 民法)
手続きには数ヶ月から1年程度の期間を要し、裁判所に予納金を納める必要があるなど、専門的な知識が不可欠です。詳しくは、「相続人に失踪者や行方が分からない者がいるときに遺産分割を行う方法」のページでも解説しています。
③ 話し合いがまとまらない時の最終手段「遺産分割調停」
相続人間で感情的な対立があったり、意見がまとまらなかったりして、当事者だけでの話し合い(遺産分割協議)が困難な場合には、「遺産分割調停」を家庭裁判所に申し立てる方法があります。
調停では、裁判官と民間の有識者から選ばれた調停委員が中立的な立場で間に入り、各相続人の主張を聞きながら、解決案を探っていきます。直接顔を合わせずに話し合いを進めることもできるため、冷静な議論がしやすくなるというメリットがあります。
調停で合意に至れば「調停調書」が作成され、これは確定判決と同じ効力を持ちます。
遺産分割協議や調停については、「遺産分割協議について」のページもご覧ください。
弁護士コメント:複雑な相続問題を防ぐために今できること
今回ご紹介した事例は、相続が長期間放置された結果、権利関係が極めて複雑になってしまった典型的なケースです。もし、被相続人が亡くなられた直後に遺産分割を行っていれば、ここまで大事にはならなかったかもしれません。
このように複雑な権利関係に発展するのを防ぐために最も重要なことは、相続を放置せず、できるだけ早い段階で遺産分割を行うことです。
そして、少しでも「自分たちだけでは難しいかもしれない」と感じたら、すぐに専門家である弁護士に相談することをお勧めします。
「相続人が多くて大変だ」「連絡先が分からない人がいる」といった初期段階でご相談いただければ、より少ない負担で、よりスムーズに解決できる可能性が高まります。
複雑な相続問題でお悩みの方は、一人で抱え込まず、まずは当事務所の初回無料相談をご利用ください。当事務所は相続問題の解決に注力しており、事案に応じた法的選択肢を丁寧にご提案します。
どうぞお気軽に相続問題に関するお問い合わせはこちらからご連絡ください。

代表弁護士の吉口 直希です。
東京都中野区の「吉口総合法律事務所」は、JR総武線「東中野」駅西口より徒歩30秒のアクセスしやすい法律事務所です。
相続・遺言、離婚・男女問題、借金問題、など、身の回りの法律問題全般に対応しております。地域に根ざしつつ、全国からのご相談も承っておりますので、遠方の方もお気軽にお問い合わせください。
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