相続人に失踪者や行方が分からない者がいるときに遺産分割を行う方法

 被相続人の相続発生後に相続人間で遺産分割を行う必要があります。

 その際に,何らかの理由で相続人の連絡先がわからず連絡が取れないということも珍しくありません。

 それでは,相続人に失踪者や行方が分からない者がいるときにどのように遺産分割を行えばよいでしょうか。

 本コラムでは,相続人に失踪者や行方が分からない者がいるときに遺産分割を行う方法について解説を行っていきます。

失踪者や行方が分からない者を外して遺産分割はできない

 前提として,相続人の中で失踪者や行方が分からない者がいる場合,当該相続人を外して遺産分割を進めることはできないでしょうか。

 その答えとしては,残念ながら,そのようなことはできないということになります。

 遺産分割は相続人全員でこれを行う必要があるからです。

 遺産分割を行うにあたって,相続人が一人でも足りていない場合は,遺産分割は成立していないことになってしまいます。

 したがって,相続人の中に失踪者や行方が分からない者がいた場合は,当該相続人を探した上で,相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。

失踪者や行方が分からない相続人を辿っていける場合 

 それでは,どのようにして相続人全員で遺産分割を行えばよいでしょうか。

 まず,失踪者や行方が分からない相続人を辿ることになります。

 この相続人をたどる方法ですが,失踪者や行方が分からない相続人の住民票や戸籍の附票を取得して住所地を探すことになります。

 住民票や戸籍の附票は一定の親族であったり,利害関係を有する場合は取得が可能です。

 遠方の自治体であっても,郵送による取り寄せが可能なので(但し,手数料は現金等ではなく,定額小為替で支払うことになります。),直接訪問をする必要もありません。

 したがって,まずは住民票や戸籍の附票を取得すると良いでしょう。

 もっとも,住民票や戸籍の附票の読み方がわかりづらく当該相続人の住所等を辿るのが難しい場合があります。

 そのような場合は,役所の担当者に読み方等を確認するか,弁護士等の専門家に個別の案件依頼を通じて,これらの資料を取得してもらうのが良いでしょう。

 最終的に住民票等により,失踪者や行方が分からない相続人現在の住所が確認できた場合は,当該相続人に対して手紙を送る等して連絡を試みると良いでしょう。

 なお,そこに住んでいる可能性が高いが,当該相続人が連絡を拒絶している場合,このままでは遺産分割協議ができません。

 そのような場合は,遺産分割調停等の申立てを検討する必要がありますが,その前に弁護士から書面を送ることにより連絡が可能となることもあります。

 したがって,このような場合はお気軽に弁護士にご相談ください。

失踪者や行方が分からない相続人を辿っていける場合 

 前述のとおり住民票や戸籍の附票を取得して,失踪者や行方が分からない相続人住所が判明したが,その住所地には別の人物が居住しているような場合,または住民票上の現住所がわからない場合があります。

 このような場合は,失踪者や行方が分からない相続人がどれくらいの期間行方不明になっているかによって,次のとおり対応が変わってきます。

失踪者や行方が分からない相続人が生死不明から相当程度経過している場合 

 生死不明から相続程度経過している場合は,家庭裁判所に対し失踪宣告の申立てを行うことを検討します。

 具体的には,通常は生死が7年間明らかにならない場合は,失踪宣告の要件を充たすことになります。

 失踪宣告がなされた場合は,失踪者や行方が分からない相続人は法律上死亡したとみなされることになります。

 当該相続人が死亡したとみなされることにより,当該相続人の相続人が相続人の地位を取得することになります。

 それによって,当該相続人以外の相続人のみで遺産分割が可能になります。

失踪者や行方が分からない相続人が生死不明から相当程度経過していない場合 

 生死不明から相続程度経過していない場合は,家庭裁判所に対し失踪宣告の申立てを行うことができません。

 この場合は,家庭裁判所に対し不在者財産管理人の選任申立てと呼ばれる手続を申し立てることを検討します。

 不在者財産管理人とは,簡単に言えば,行方不明者の財産を暫定的に管理する立場の者をいいます。

 この不在者財産管理人が選任されることにより,不在者財産管理人が失踪者や行方が分からない相続人の代わりに遺産分割を行うことになります。 

不在者財産管理人が選任された場合の遺産分割の注意点 

 仮に不在者財産管理人が選任されたとしても,それで容易に遺産分割ができるというわけではありません。

 というのも,不在者財産管理人は,あくまで保存行為と呼ばれる不在者の財産の維持に必要な行為しかできません。

 そして,遺産分割は,上記保存行為にはあたらないため,不在者財産管理人は原則として遺産分割をなしえないことになります。

 もっとも,不在者財産管理人は家庭裁判所の許可を得れば遺産分割協議も可能となります。

 その場合であっても,裁判所から許可を得るためには,遺産分割を行う必要性や相当性という要件を充たす必要があることになります。

 不在者財産管理人が選任された場合において,他の相続人はこれらの制約があることを踏まえて遺産分割協議を進めていかなければならないことになります。

終わりに

 以上,相続人に失踪者や行方が分からない者がいるときに遺産分割を行う方法について解説を行いました。

 相続人に失踪者や行方が分からない者がいるときであっても遺産分割協議をあきらめる必要はありません。

 もっとも,その場合の手続は通常とは異なるため,そのことを十分に理解する必要があります。

 特に,不在者財産管理人が選任された場合における遺産分割については前述のとおり注意が必要です。

 東京都中野区所在の吉口総合法律事務所では, 相続人に失踪者や行方が分からない者がいるときの遺産分割をはじめとする相続問題を得意分野としています。

 相続問題にお困りの方は吉口総合法律事務所までお気軽にお問い合わせください。

 

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