中野区で無料相談対応の吉口総合法律事務所では,建設会社の方から,
「工事の発注を受けたので工事を完了したが,建設工事代金の支払いがなされない。」
「元請会社から建物の建築を依頼されたため下請会社として工事を行ったところ,元請会社が破産をしてしまったがどうしたらよいか。」
「注文会社から内装工事を依頼され工事を進めたが,注文会社が倒産をしてしまったが建設工事代金を回収できるか。」
このようなご相談をいただくことがございます。
本ページでは,工事の注文を行った側を注文会社,建設会社側を請負人として,工事の注文会社から建設工事代金の未払がある場合や注文会社が破産をした場合にどのように債権回収を行えばよいかについて弁護士が解説を行います。
★ なお,債権回収に関連する情報は,下記ページもご参照ください。
目次
注文会社(元請会社)から依頼された工事が完了したが建設工事代金の支払がなされない場合
建設工事が完了したにもかかわらず注文会社から建設工事代金が支払わないことがありますが,注文会社(元請会社)から建設工事代金が支払われない理由は様々です。
例えば,注文会社(元請会社)から建設工事代金が支払われない理由としては以下のものがあげられます。
①注文会社に支払原資がない・資金繰りが苦しいので支払うことができない。
②仕事を完成させたが瑕疵(ダメ工事)がある。
③注文に応じて追加変更工事を行ったが,注文会社が理由をつけて建設工事代金を支払わない。
このような場合,上記注文会社の反論に応じてどのように建設工事代金を回収するかを決める必要があります。
注文会社に支払原資がない,注文会社の資金繰りが苦しい場合
注文会社に単に支払原資がない場合,基本的には,注文会社が建設工事代金の支払を拒める法律上の理由はないと言えるでしょう。
したがって,注文会社が建設工事代金の支払を拒絶した場合,内容証明郵便を発送して建設工事代金の支払を求めた上で,裁判手続を行うことも検討したほうが良いです。
【内容証明郵便発送による建設工事代金の請求】
内容証明郵便を送る場合,建設工事の内容,建設工事の支払金額や支払先の口座,及び,支払がなされない場合は法的措置をとること等を明記することを忘れないようにしましょう。
なお,内容証明郵便を送るにあたっては,会社名義で送る場合と弁護士名義で送る場合がありますが,弁護士名義で送ることにより,注文会社に対して本気度を伝えることができます。
【裁判手続による建設工事代金の請求】
仮に,内容証明郵便を発送してもなお建設工事代金の支払を拒絶する場合は裁判手続に進むことになります。
裁判手続を行うにあたっては,訴訟前に注文会社の財産処分を制限する仮差押という手続があります。
例えば,注文会社の預金や不動産の仮差押を行うことによって,裁判が行われている最中に注文会社が財産を処分し,隠してしまうという事態を防ぐことができます。
債権回収に当たっては,財産確保が重要ですので,可能であればこの仮差押を行った方が良いと思います。
なお,別のメリットとしては,仮差押をすることによって,相手方が任意の支払に応じることもあるという点があげられます。
そして,注文会社に対する内容証明郵便の発送や仮差押を行ったにもかかわらず,建設工事代金の支払を行わない場合は,訴訟提起を行うことになります。
訴訟提起後,判決が出てもなお相手方が建設工事代金の支払に応じない場合は,強制執行を行い建設工事代金の回収を行うことになります。
仕事に瑕疵(ダメ工事)がある,追加変更工事の報酬について争いがある場合
これらの場合は,注文会社の建設工事の瑕疵(ダメ工事)の主張や追加変更工事における報酬の合意に関する主張が法律上正当であるかを確認する必要があります。
仕事に瑕疵(ダメ工事)がある場合や,追加変更工事がなされた場合における報酬額については,法律上様々な論点がありますので,この場合における対応策については別記事において解説を行います。
ただ,これらの反論がなされた場合であっても,仕事が一応の工程を終了したのであれば報酬を請求することは原則として可能です。
したがって,注文会社に対して建設工事代金の支払請求を行う場合は,内容証明郵便の発送等,前述と同様の手続を進めていくことになります。
注文会社が破産をした場合
上記では,注文会社が建設工事代金を任意に支払わない場合のみを念頭において解説を行いましたが,注文会社が破産をした場合はどのような手続をとるべきなのでしょうか。
以下では,注文会社が破産をした場合において,
①どのような手続が進み,建設請負契約はどのようになるのか
②その場合において建設工事代金を回収するためにはどのような手段が存在するのか
について言及を行います。
1 注文会社(注文会社)が破産した場合はどのような手続となり,建設請負契約はどうなるか
まず,注文会社の破産手続が開始されることになると,破産管財人が選任されます。
破産管財人には,弁護士が選任され,この破産管財人は,破産した注文会社に代わって財産の管理・処分を行うことになります。
そして,破産手続が開始されたとしても,既に締結した請負契約自体は破産手続の結果当然に消滅するわけではなく,建設請負契約自体は残ることになります。
ただ,破産の結果建設工事代金を受け取れない可能性が存在するにもかかわらず,工事を続けなければいけないのは酷ですので,請負人側が建設請負契約を解除することが認められています。
また,破産法上,破産管財人も請負契約を解除することが可能となっています。
このように,建設請負契約自体は破産手続が開始された後であっても,契約自体は継続することになりますが,実務上は,請負契約を実現させることによるメリットが大きくないことから,請負契約が解除されることが多くなります。
請負契約が解除された場合は,今までに工事が完了した出来高部分を算定した上で,破産管財人との間で,既に注文会社が支払っている前払金と精算をすることになりますが,工事の出来高がどの程度であるかによってその後の対応は変わってきます。
【出来高が前払金よりも大きい場合】
前払金よりも完成部分の出来高が多い場合,つまり,注文会社から既に受領した代金よりも完成した工事の程度が進んでいる場合は,請負人は注文会社に対して工事代金の請求をすることが可能になります。
但し,当該報酬請求権は破産手続において請求できる権利に過ぎず,破産者の財産から弁済されるにすぎないので,回収の見込みは低いと言わざるを得ません。
したがって,回収の期待可能性は低いことを前提にした上で,回収をするためには,以下で記載の通り商事留置権を主張する等の措置を検討しなければいけません。
【出来高が前払金よりも小さい場合】
この場合は,完成した仕事の程度よりも前払金の方が大きい,つまり,注文会社から既に受領した代金よりも完成した工事の程度が進んでいない場合は,請負人は注文会社(破産管財人)に対し支払を行う必要がでてきます。
但し,これはあくまで出来高が前払金よりも小さいことが確定したことが前提になります。
そもそもの話として,建設工事の出来高の割合がどの程度であるかということが争点になりますので,破産管財人からの前払金返還請求に対しては,この点を十分に検討したうえで交渉をすることが必要になります。
2 請負人が投入した金銭・労働をできる限り回収するためにはどうしたらよいか
注文会社が破産をした場合,請負人側が報酬代金を回収することは難しい側面があることは否定できません。
そうだとしても,既に投入した金銭や労務をできる限り回収するためには,以下の方法が考えられます。
孫請業者が元請業者と直接契約を締結する方法
まず,請負人が孫請業者,注文会社が下請業者である場合に注文会社である下請業者が破産した場合,孫請業者である請負人は,元請業者と直接契約を締結することが考えられます。
というのも,元請業者としては,下請業者が破産をしてしまったことにより工事の完成がストップしてしまい,施主との関係で債務不履行が生じることから,工事を続行したいと考えることがあるからです。
但し,元請業者に対して契約を締結することを強制することはできないため,請負人としては,あくまで契約締結の交渉を行うというスタンスで進めることになります。
商事留置権を主張する方法
商事留置権とは,簡単に言えば,事業によって生じた債権を有する場合に代金の支払いがなされるまで債務者の所有物の引き渡しを拒める権利のことを言います。
例えば,自社の倉庫に取引先の商品が存在する場合において,取引先の代金不払いがある場合には,取引先からの商品の引渡請求が拒むことができます。
この商事留置権に基づき,建設工事代金の未払を理由に建設中の建物を留置し,注文会社に対し,間接的に代金の支払を求めていくことになります。
ただ,商事留置権が認められるための要件や効果については議論があるため,建設工事代金の未払の際に商事留置権が成立するかについては,難しい論点を検討しなければなりません。
そのため,商事留置権の主張を行う場合は,弁護士にご相談をされることをお勧めいたします。
終わりに
以上,注文会社・元請会社の建設工事代金未払・破産の場合に,建設工事代金を回収する方法について解説を行いました。
建設工事代金の回収をはじめとする債権回収においては,スピードと回収するための戦略が重要になってきます。
また,建設工事代金の回収については,請負契約に関する知識も当然必要になります。
東京中野区所在の吉口総合法律事務所では,建設工事代金の回収をはじめとする債権回収を重点分野としております。
建設工事代金の回収についてご不明点等ございましたら中野区で無料相談対応の吉口総合法律事務所までお気軽にご連絡ください。